2014年度

ボランティアの形

2014年度

今回、私が石巻市北上町FSに参加したのは、「ボランティアの意義」を知りたかったからだ。私はこれまでボランティアをしたことが無かった。そればかりかボランティアに対してあまり良い印象を持っておらず、「外部の人間が被災地に行っても迷惑になるだけではないか」とも思っていた。近年増加しているボランティア団体や大学のサークルに、ちょっとした不満さえ抱いていたのかもしれない。そんな折にこの北上町FSの存在を知り、まずは実際にやってみようと思い、参加した。私にとってこのFSは、今までの間違った考えを変えるきっかけとなった。
現地に着いてまず衝撃を受けたのは、思っていた以上に復興が進んでいないことであった。海沿いの町だったところには家が一軒も建っておらず、伸び放題の草むらが広がるだけであり、3年前にそこへ津波が直撃したことを生々しく物語っていた。グラウンドには仮設団地が隙間なく何棟も並び、町内にはコンビニもスーパーもない。あの震災がまだ過去ではないことを知った。しかしながらそれ以上に驚いたのは、団地に住む人々がみな明るく、率先して私たちと関わろうとしていることだった。初めて会ったばかりの私たちを歓迎し、輪にいれてくれた。きっとこの人々の温かさは震災前からなのだろう。逆に元気をもらってしまった。ボランティアに来たつもりがもてなされてばかりで、自分が来たのはやはり迷惑だったのではないだろうかと落ち着かなかった。
そんな思いを抱えつつ活動をしていたところ、同じ仮設の施設で寝泊まりを共にしていたボランティア団体の方々に話を聞く機会があった。彼らは月に一度、この北上町に訪れボランティアをしているそうだ。震災直後からすでに活動を始めていたそうだ。継続して行うボランティアがいかに大切かを知った。それなら私たちなど今更必要ないのではないかとますます自信を無くしたが、それは違うと教えてくれた。「被災地の人々は変化を求めているんだ。それは家が建つことだったり、新しい人が来ることだったりする。だから、外部の人が被災地に行くだけでもボランティアなんじゃないのかな。」震災から3年が経過した今、被災地で求められているのは肉体的な労働ではなく、精神的な助けだそうだ。例え継続的なボランティアでなくとも、私たちが現地に行き、多くの人々と出会い話すことで、一時でも人々の心を軽くすることが出来たなら、それもボランティアかもしれない。「被災地に新しい風をもたらす」こと。それは外部にいる私たちにしか出来ないことなのである。
現地に行って多くの人と触れ合えば、ニュースや新聞では報じられていない小さな、しかし見落とされてはいけない現状を知ることが出来る。復興に対する不満や願い、避難生活の過酷さ、そしてその土地の人々の温かさ。それらを少しでも多く持ち帰り、少しでも多くの人に分かってもらう。それが一個人である私に出来ることである。一見、非力で役に立たないことに思えるかもしれない。しかしソーシャルネットワークが発達した現代で、それを何十人、何百人がやれば、あっという間にその情報は世界中に広がるだろう。「被災地では何が必要なのか」が地域ごとに細かく分かれば、ボランティアもずっとやりやすくなるだろう。被災地に対して意識を向ける人も増えるはずだ。
決して難しいことでは無い。時々気にかけてほしい。被災地は今どうなっているのか、自分には何が出来るのか。