2013年度

生きる意欲

2013年10月21日

2013年度

今回、私たちは NPO 法人パルシックの石巻北上事務所がある民家で寝食をお世話になりました。農業支援をするパルシックの西村さんを通じて、農園運営に参加する住民の方にお話を伺うことが出来ました。その農園はにっこり団地農園といい、震災後「にっこりサンパーク仮設住宅団地」に住まわれている方々とパルシックが協力して運営している農園です。その方のお話の中でとても印象に残っている言葉があります。
一つは、「パルシックの西村さんに生きる意欲をもらった。」という言葉です。震災が起こり、全てが津波に流されてたくさんの人が亡くなり、命が助かった人たちは親族や友人、知り合いを失くし、住むところ食べるもの着るものを失くしました。なんとかみんなで食べていかなくてはと、残っていたものを出し合って食べたり、みんなで掛け布団一枚に足を入れて暖まったりしていたそうです。おにぎり一個がみんなに渡るようになったのも一週間くらい経ってからで、服もなくお風呂は一ヶ月くらい入れなかったそうです。そんな避難所の生活が続き、その後非常に多くのものを失くした状況で、西村さんから畑を一緒にやらないかと声をかけられ、働く意欲、生きる意欲をもらったといいます。私はその言葉で、生きる意欲を失うその状況をひしひしと感じるとともに、働くことや自分が誰かと一緒に何かをすることが生きる意欲として、それだけの力を持つのだということに気付かされました。さらに、震災を通じてその方が感じたことは、「そんなにモノっていらないな。」ということだそうです。私は最低限生きるのに必要なもの、人の“生きる”を構成するものは、着るもの・食べるもの・住むところと“生きる意欲”だと思いました。生きる意欲は、働くことなど、他の人とつながり人と何かを一緒にしていくことではないかと考えました。今回の場合、それをつくるきっかけとなったのが被災地の外から来た人だったというのも非常に印象的でした。ボランティアなど、そのコミュニティの外から来る人の活動における一つ大きな意味であると感じました。
また、もう一つお話の中で印象に残ったのは、「今回たくさんの支援をもらって、こんなに支援を受けていいのかと思うこともあった。正直それまでそういったことに関心がなかったが、今度は他のところで何かあったら支援していきたいし、孫たちにもそれを伝えたい。」ということでした。ボランティアや支援はその場で与え合うというだけでなく、その後も与え合う関係、助け合う 関係を築くことが出来るのだということを被災地の方の言葉で実感し、考えることができました。
被災地・震災を学ぶことは、支援やボランティアに関することだけではなく、新しいものをつくったり元あったものを見直したりするきっかけであり、人の営みの縮図がそこにある、私たちの日常の延長であると感じました。

  • 野菜の収穫

  • にっこり団地農園で採れる野菜