2013年度

いま、起きていること

2013年10月21日

2013年度

“継続性”この言葉をテーマに私は昨年の石巻 FS のレポートで述べさせてもらった。 あれから 1 年、被災地の子供に夢を、被災地の子供達に夢をいう名目で世の中はオリンピック開催で沸いている。この世の中で今どれほどの人達が震災のことを覚えているだろうか。多くの人達は既に過去の物として扱い忘れつつあるだろう。これは私たち大学生にも十分当てはまる事である。この FS の応募者も昨年の約半数になり、“今更被災地にいって何かすることあるの”と言う友人も居た。この出来事は被災地と東京のギャップを痛感した出来事であった。そこで自分自身が“北上町”に再び行かせて頂いて、昨年との比較や自分自身が感じた事を述べたい。
5 日間を通して私が感じたのは、1 年前とは全く状況が異なっているという事だ。これは高台移転やがれき撤去といった目に見える部分だけではなく、住民の方の想いも刻一刻と変わっていた。「(自立再建に向けて)わくわくしている。」これは PARCIC さんが農業支援を行っているにっこり農園で栽培・販売を行っている住民の方から飛び出した言葉であった。私は驚きを隠せなかった。なぜなら、昨年この方にお話しを伺った際に「目の前の事をこなすだけで精一杯」とおっしゃっていた事を鮮明に覚えていたからである。しかし、その裏ではこのようにポジティブに考えてやっていかなくては前に進むことができないという苦悩や仮設住宅に居住することの我慢の限界も秘められているに違いない。心情の変化は子供達にも表れている。プレパークという子供達に遊び場を提供するという活動を行うボランティアに参加させて頂いた際、小学一年生の子供が「今は借りているお家 (白浜復興住宅だと思われる)に住んでるけど、早く新しいお家ができるといいな。そうじゃないと仮設に戻ることになっちゃうんだ。」と言っていた。私にとってこの言葉は衝撃的であった。震災当時 3 歳だった彼が起きた事実を受けとめ自分の家の事まで考えているのだ。私が小学 1 年生では考えられないことである。それは勿論、東日本大震災という極めて大きな出来事を経験したからであろう。子供達も友人や親族を亡くしながらも前を向いて少しづつではあるが進んでいるのだ。
しかし、全員が前を向いて進みだしたとは言えず、震災当時から立ち止まっている方も居る。野菜販売をしていた際、ある老婦人が「この花お供えしようかしら」と呟いていた。この地で多くの方が亡くなり、心に傷を負った方が多くおられることは紛れもない事実なのだ。PARCIC で活動されている西村さんも「家から出て買いに来れる人は問題ない。家から出てこない人をいかに外出させられるかが問題だ。」とおっしゃっていた。私たちが接した方たちは対外的な方であり、未だにまだ心に傷を負ったかたもおられる。一方で、傷を負いながらも復興に向けてスタートを切った人々も新たな悩みが起きている。漁業支援で伺った鵜の助さんでは震災から二年経ち今まで免除されていた健康保険やその他の税金が再び震災前の状態に戻り、家計が厳しいとおしゃっていた。このような事態は復興を急ぐ市民にとって足かせになってしまう。このような事が起きないように行政しても柔軟な対応をとっていく必要があると感じた。
では私たちは何ができるのだろうか。前述した西村さんがおっしゃるには被災した住民は私たちが来ることによって被災者の皆さんは“まだ私たちは忘れられてない”と感じるそうだ。行くという行為だけでもいいのではないだろうか。また、具体的な支援として考えると昨年の FS と比較して今年はより地域社会、日々の生活に馴染んだ支援に変わったと感じた。北上町には、漁業、農業と言った多種多様な生業が存在している。その復活しつつある生業を生かすも殺すも私たち消費者なのである。その場所に行きお金を使うことによってその地域の支援となるのだ。しかし、支援をするにしても私たちと被災者をつなぐ NPO の方々が必要不可欠だと痛感した。今回の FS も PARCIC さんが居なければ実現は不可能であっただろう。前述した西村さんも「受け入れることに利益はない。でも将来の人材育成の為だと思って受け入れている」とおっしゃっていた。行きたくても受け皿がないという現実は非常にもどかしい限りである。
私自身、昨年は目の前に広がっている場所で起きたものがあまりに衝撃的であった為受け入れることで精一杯であった。しかし、今回はその事実を整理し客観的に物事を見る事ができたので自分自身にとってより有益なものとなったと感じる。今これを読まれた皆さんも是非一度被災地に伺って欲しい。また一度行った人も同じ場所にもう一度行くことに意味があると今回の FS を経て感じた。 “百聞は一見にしかず”の言葉の通り一歩外に踏み出してみてはいかがだろうか。

  • プレパークにて

  • にっこり農園