OB・OG紹介

座談会

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手間をかけて自分で考える楽しさ

菅野莉央さん(2016年3月卒)

幼い頃より俳優として活躍しながら学業に励んできた菅野莉央さん。2016年3月、法政大学人間環境学部を卒業しました。4月からはいよいよ俳優の仕事に専念します。

そんな菅野さんと小島聡学部長、そして菅野さん所属ゼミの長谷川直哉教授が、学業と仕事をいかに両立してきたのか、また学部での学びや「気づき」など、これまでの歩みと今後の抱負について話し合いました。

(2016年3月30日)

(小島)菅野さんはこの3月24日、人間環境学部を卒業されたわけですが、俳優の仕事はいつから始められましたか。

(菅野)2歳からです。初めは母が「雑誌に載ったら記念になるかな」と考えたくらいの軽い気持ちで、長くやるとは思っていませんでした。小学生の時、撮影現場に行くと周りの大人のスタッフが一緒に遊んでくれて、とにかく現場が楽しくて、続けたいなと漠然と思っていました。一番の転機は小学校の6年です。中学を受験したタイミングで児童劇団から今の「アミューズ」という大人の方の事務所に移籍しようと自分で決めて、面接を受けて移籍しました。

学業と仕事の両立

(小島)多くの大学や学部がある中で、法政大学人間環境学部を選んだ理由は何でしょう。

(菅野)オープンキャンパスでしょうか。いろいろな大学に行きましたが、学生の雰囲気を見て、居心地がよさそうでした。それとフィールドスタディ。単位にもなるし自分では普段行けないところに行ける。それにも魅かれました。また仕事柄、この分野の専門を身につけたいというのがまだ決まっていなくて、最初の1年生のときに幅広く学べる、いろいろな領域があって、それをやってから決められるという点が大きかったと思います。立地条件もあります。仕事と両立したかったので、4年間都内のところがいいと思いました。

(長谷川)入る前、法政大学はどんなイメージでしたか。

(菅野)高校生の時に初めて来たときには、とにかく明るくて、フレンドリーな学生が多いと思いました。オープンキャンパスの学生さんが楽しそうだったのが印象的で、やらされている感じがなかった。それに、いろんな人がいる、いろんな雰囲気の人が混ざっている感じで「いやすい」と思って。

(小島)大学に通いながら俳優の仕事、両立は大変でしたか。

(菅野)そうですね。でも、先生方が協力的な方が多くて、授業の時も、やはり抜けてしまう分がありましたが、レジュメも後で下さったり、友人も同じ授業に出ている子だとメモ見せてくれたり、周りの方がすごくよくしてくれました。

(長谷川)菅野さんの場合、ただ単位をとるだけでなくて、成績もよかったですね。どういうタイミングで勉強していたか、聞かせてください。

(菅野)移動のときなどでしょうか。テスト前とかはとくにそうでした。テストの日はあけてもらっていたけれど、やはり前日まで仕事があるときもあるので、そういうときは休憩のときに。

(長谷川)そういう意味では時間の使い方がうまかったということですね。

(菅野)それと、中学からの両立の癖というか、中途半端におろそかに学業をやると、やはり仕事をしているからだろうといわれてしまうのも嫌でした。

人間環境学部での学び

(長谷川)人間環境学部の学びにはいろんな分野がありますが、多様な分野があることによって苦労したことはありますか。

(菅野)2年生の時にゼミに入って企業のことをやっていましたが、その一方で授業では「途上国経済論」など少し違うものをとっていました。その授業でも企業の活動が出てきたりして、結局全部つながっているところがあって、理解しやすかったと思います。こちらからみたらこうだけど、こちらからみたらこう、というのが両方あわさっている方が、理解が深まりますよね。いろいろな分野があったことが私には逆によかったんです。

1年目にいろんな授業を受けている中で、企業の授業を受けたときに、高校生までの自分は全く出てこなかった、こういうのがあるという発見があって魅かれ、ゼミに入りました。企業というとやはり経営学や経済学を勉強しないと、というのがありましたが、社会と企業という、そこのつながりがあるんだよっていう、「気づき」というか、発見が一番大きかったと思います。

(小島)長谷川先生にとって菅野さんはどんな学生さんでしたか。

(長谷川)ゼミにいても特別扱いすることもなく、タイトなスケジュールの中できちんと活動していたと思います。飄々としていて一切顔に出さない。でもたぶん相当頑張っているのだろうと思っていました。それと、自分が学びたいことをきちんと教えてくれる人を見つけ出して、ポジティブにアプローチして、きちんと吸収できる。そういうアクティビティが非常にすぐれていると思います。印象に残っているのは、目の力っていうのかな。目の光がしっかりしていて、こうして面と向かいあうでしょ。

(菅野)もう見られないじゃないですか(笑)

(長谷川)なんとなくね、こう、しっかり自分が納得するまで話を聞きたいという目力があって、こちらもきちんと対応しないと、という意識を持っていました。それに、いろんなことから自分の学びたいことを吸収しようという意識が強いと思います。それがだんだん、人との出会いとか友達との出会いに通じていって、結果的にやはりどんどん知識を身につけることを自然とできる。無理してやっているのではなく、自然体としてやれるってところがすごいと思います。好奇心が旺盛だと思います。

韓国への留学

(小島)韓国に1年行かれていました。そこで何か学んだことってどんなことでしょう。

(菅野)いろんな国の学生を見ていて思ったのは、やはり幅広い視野をもって、それこそ多角的にというか、見る力がこれからもっともっと必要になるということです。今でも相当必要だとは思います。文化や人と人の面で、むしろそこでよくしていけるのではないかと思いました。

実は、2年生の夏休みに、韓国のスタッフの方とお仕事する機会がたまたまあって興味をもちました。それまで外国の方とお仕事する機会はなかったので、いったいどうなるかと思いましたが、目的が一緒だと、言葉には壁はありますが、むしろさらにいいものができるというところがあって、自分もそういう場にもっと参加できるようにしたいと思って、韓国に行って勉強したり、韓国語も勉強したり、英語ももっと使えるようにしたいっていうモチベーションで行きました。1年もう終わって帰ってきてしまいましたが、継続して語学もやりたいですし、機会があれば韓国だけではなくて、アジアの方とお仕事する場に行きたいという目標はあります。

将来について

(長谷川)大学を出て、今の仕事を続けていきますが、それと同時に、学びというのは途切れるわけではないですよね。自分なりに、どういうことを継続して、こういう分野のことを学んでいきたいというのはありますか。

(菅野)留学もあって、人間環境で実質2年半くらいしか勉強してないので、もう少し深めてから卒業したかったというのはあります。

(小島)これまで学んだこと、あるいはこれからも上乗せしながら、社会の中で貢献したいという気持ちはありますか。

(菅野)はい、いまの段階では、社会に貢献というところまでは考えられてないですが、でも、せっかく、この人間環境学部で、興味のある分野もできました。国際協力にも興味がありますし、企業の社会貢献活動の内容にも興味があります。環境問題自体に対しても、意識を身につけ見聞きをしたりして、さまざまな問題を伝えるお仕事をすることで、人間環境学部で学んできたことを社会貢献に活かすことができればいいなと思います。

学生・受験生へのメッセージ

(長谷川)後輩に向けてメッセージをお願いします。

(菅野)高校生の時点で、4年間自分が何を専門にしたいかって、やっぱり確固たるもののある学生って少ないと思うんですよ。1年目は狭めすぎずに幅広く見てみて、自分が意外とこんなのに興味あるかもっていう気づきを1年目にできたら、そのあとは、ゼミとか、専門性をいくらでも究められる場はあると思います。

それから、人間環境学部が、先生と生徒の距離が近い学部だと思いますし、本当にどの先生も聞けば親身になって教えてくれます。その機会をもっと有効活用して、先生ともっと近づいた方が、より自分の成長につながると思います。ぼーっとしているとすぐ終わるよ、と(笑)。4年間、あっという間に終わります。

(小島)本学部への受験生にもメッセージをお願いします。

(菅野)大きく言えば、法政大学人間環境学部は、どんな社会をこれから私たちの世代がつくっていきたいかというのを考える学部だと思います。環境のことばっかりをやるんじゃないかというイメージではなく、どちらかというと社会を考えるものだと思うので、あまり堅苦しく考えず、どんな社会がいいのか、自分で考えてほしいと思います。あと、高校までは、正解があってそれを覚える、答えを探す、みたいな作業が多いと思うんですけど、いきなりそこが大学になると答えがないものを考える作業に変わります。いまスマホとかをつかって探すと、すぐに答えがわかることも多いですが、いったん手間をかけて自分で考えるっていう楽しさみたいなものを、大学の中で見つけてほしいなと思います。

 

(小島)今日は本当にありがとうございました。