東日本大震災と人間環境学部

2014年度

東日本大震災と人間環境学部

とにかく考えてみよう

教職員と学生の共同企画である人間環境学特別セミナー「とにかく考えてみよう」は、ドキュメンタリー映画を見て、ともに議論する催しです。これまで『ミツバチの羽音と地球の回転』、『内部被ばくを生き抜く』(ともに鎌仲ひとみ監督)、『100,000年後の安全』、『Nuclear Nation』『第4の革命』といった作品を上映したほか、監督や関係者を招いてパネルディスカッションを開催しました。

 2014年度の活動を以下に掲載いたします。

第9回「とにかく考えてみよう」(ドキュメンタリー映画を見て、震災後の日本社会を考える)

第9回目となるトニカンは2014年6月28日に実施しました。今回は、『ヴィック・ムニーズ――ごみアートの奇跡』(ルーシー・ウォーカー監督、2011年イギリス/ブラジル)をとりあげました。現代美術の著名なアーティストであるヴィック・ムニーズが、故郷ブラジルのゴミ処理場で働く人々とともに、彼らのポートレートをゴミで製作する過程を描いた映画です。

「ヴィック・ムニーズ――ごみアートの奇跡」の1コマ

芸術は人を変えると言われます。芸術作品は、その強烈なアピール力で接する人に働きかけ、その意識を変容させることができますが、それは必ずしも作品の鑑賞だけではなく、作品の創造の過程にコミットすることでも可能であり、それは時にはこの映画に描かれたように個人の生き方を変えてしまうほどの力を持ちます。しかも、ここではゴミという一度は不要とされた物体を素材として作品創造に用いることでそうした変容が実現するというところがユニークでした。

ゴミ処理場で働く人々とともに、彼らのポートレートをゴミで製作する過程を描いた映画です。

上映終了後、芸術と社会の関係について議論しました。本学部の板橋美也専任講師がイギリスではじまった芸術家による社会改良運動について解説したあと、モダンアートが現代日本の社会にいかに関わろうとしているか、リレーショナル・アートの現状について、アートナビゲーターの東孝彦氏からお話しをいただきました。

アートナビゲーターの東孝彦氏

多くの学生が熱心に視聴及び質疑を行いました。

第10回「とにかく考えてみよう」

トニカンは東日本大震災をきっかけにはじまりましたが、意外にも震災そのものをテーマにした作品はこれまで取り上げていませんでした。第10回となる今回は、『ガレキとラジオ2014』(塚原一成/梅村太郎監督、2014年)を上映しました(2014年12月6日)。 東日本大震災で津波による大きな被害を受けた宮城県南三陸町で1年間限定で活動した地域FMラジオ局を舞台に、ラジオ局に関わった人々と地域の方々の交流を描いています。
この映画は2012年から公開されましたが、その後演出について「やらせ疑惑」が浮上し、一時は上映が中止されたという曰く付きの作品です。今回は再構成された改訂版を用いて上映をおこないました。
ドキュメンタリー映画であっても、ある程度の制作者の意図的な演出が可能であり作為が入り込む余地があることは、第8回で扱った『イエローケーキ』でも指摘されていたことですが、この映画において評価されるのは、むしろ被災地の人々が震災直後からの1年間をいかに過ごしたかが丁寧に描き込まれていることであり、その人々の姿にどこまで共感し、われわれの側のアクションにつなげていけるかが問われているように感じました。

宮城県石巻市北上町への支援活動

法政大学人間環境学部では、NPO法人PARCICと提携して宮城県石巻市における震災ボランティア活動を続けています。 2014年度は、昨年度に引き続き、同じ石巻市の北上町において「生業支援・学習支援から復興を考える」というフィールドスタディを実施しました。 

8月6日~10日、8月18日~22日の2回にわたり、計8名の学生が現地入りし、地元の方の野菜作りや漁業を支援する一方で、仮設団地に暮らす子どもたちの学習を手伝ったり一緒に野山で遊ぶといった活動を行いました。ボランティアは初めてという学生もいます。そんな学生たちがこの活動を通じて感じ、考えたことをレポートにまとめました。下のリンクから読むことができます。

参加学生による活動報告書

人間環境学部では、宮城県石巻市において、NPO法人PARCICと提携し、特別フィールドスタディとして震災ボランティア活動を実施しました。今回は参加した学生による報告書を紹介いたします。

シンポジウム「生業と地域社会の復興を考える-宮城県石巻市北上町の事例から-」

2014年11月29日に、法政大学市ヶ谷キャンパスで行われた、第28回ニッセイ財団シンポジウム「生業と地域社会の復興を考える-宮城県石巻市北上町の事例から-」には、約70名の参加者がありました。

報告内容と報告者は以下の通りでした。

「石巻市上北町とのかかわりと実践的調査研究の概要」(西城戸誠・法政大学)
「高台移転をめぐる制度と住民の時間」(平川全機・北海道大学)
「震災後の地域農業の展開にみる生業復興の構造」(宮内泰介・北海道大学)
「漁業復興における協業化の意義と役割」(髙﨑優子・北海道大学)
「子育て環境の復興・再生における女性の活動」(庄司知恵子・岩手県立大学)
「被災地における地域サポート人材の役割と課題」(図司直也・法政大学)

その後、環境社会学会会長・鬼頭秀一氏と、立教大学社会学部教授・関礼子氏から、シンポジウムの内容に関するコメントがあり、質疑応答がありました。なお、当日の内容については、法政大学人間環境学部・サステイナビリティ・ブックレット1・「生業と地域社会の復興を考える」 に収録されています。是非、ご覧ください。

人間環境学部FSRフォーラム

FSRとは、CSR(企業の社会的責任)という考え方をふまえ、人間環境学部が学部のポリシーとして果たすべき社会的責任を表明するための造語です。