研究データは、研究の過程あるいは研究の結果として収集・生成される情報です。
2014年(平成26年)8月26日文部科学大臣決定の「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」において、研究機関における一定期間の研究データの保存・開示が求められるようになり、文部科学省から審議依頼を受けた日本学術会議が2015年(平成27年)3月6日に回答した「科学研究における健全性の向上について」では、研究データの保管について「資料(実験ノートなどの文書、数値データ、画像等)は原則10年、試料(実験試料、標本)や装置など『もの』は原則5年」というガイドラインが示されました。法政大学ではこれを受け、2015年4月1日に「法政大学研究倫理規程」を制定し、研究者の責務として研究データの保管期間を規定しています。
さらに、2021年(令和3年)4月27日に内閣府・統合イノベーション戦略推進会議が発表した「公的資金による研究データの管理・利活用に関する基本的な考え方」では、「研究活動における自由と多様性を尊重しつつ、国際的な貢献と国益の双方を考慮に入れた、オープン・アンド・クローズ戦略に基づく研究データの管理・利活用を実行することが我が国として求められる。」とされ、研究データを単に保存するだけでなく、「管理・利活用」することが求められるようになりました。研究機関に対しては、研究データマネジメントに関するガバナンスのあり方について定めたデータポリシーの策定が求められ、研究者に対しては研究機関が定めたデータポリシーに則った研究データの管理が求められるようになりました。法政大学ではこれを受け、「法政大学 研究データ管理・公開ポリシー」を2025年4月1日に制定しました。
前述の「公的資金による研究データの管理・利活用に関する基本的な考え方」は、「研究データ」は研究開発の過程で生み出されるすべてのデータで電磁的な形態により管理可能なもの、としており、研究データのうち、管理・利活用の対象として研究者がその範囲を定めるものを「管理対象データ」と定義しています。さらに、公的資金による論文のエビデンスとしての研究データは原則公開とし、その他研究開発の成果としての研究データについても可能な範囲で公開することを求めています。
研究データの管理は、研究者の視点からは面倒に見えるかもしれませんが、研究者自身にとっても意義があるものです。
<自身の研究の公正性を証明できる>
研究データは自身の研究が正しく行われていることを証明するものです。研究データを適切に管理することは、研究の公正性を主張できるという意味で、自身の研究を守ることになります。
<自身の研究データを守ることができる>
論文発表の場においては、世界的な出版社が発行する学術雑誌による寡占が進展しつつありますが、このような企業が研究データをもビジネスの対象としようとする動きがみられます。研究データを自らの管理下に置き適切に公開することは、研究データを守り、ひいては研究活動を守ることにつながります。
<研究の効率化ができる>
適切に管理された研究データを研究者、研究室、研究プロジェクト間で共有することは研究の効率化につながります。
<自身の研究の価値を向上させることができる>
自身の研究データを公開し、活用の機会を提供することはその研究への注目度を高め、研究自体の価値を高めることになります。
(1) 研究データマネジメントプラン(DMP)の策定・提出
研究データマネジメントプラン(DMP)とは、研究過程において、どのような種類のデータを、誰がどのように取得し、どのデータを「管理対象データ」として、どのように管理・利活用するかなどについて整理した計画書です。
科学研究費助成事業においては2024年度より、全研究種目で交付申請時のDMPの作成が求められており、その他の公的研究資金においてもDMPの作成が求められるようになっています。
(2) 研究活動中の研究公正と研究データ管理
研究の公正性と透明性、それを踏まえた信頼性を確保するため、「法政大学研究倫理規程」「法政大学 研究データ管理・公開ポリシー」に則って公正な研究活動を行い、研究データを適切に管理・保存することが求められます。
本学では、研究データ管理基盤として国立情報学研究所の「GakuNin RDM」を、研究データの保存領域として全学ネットワークシステムの「Box」を利用いただくことができます。
(3) 論文の根拠データの公開
論文のエビデンスとしての研究データや、その他研究開発の成果としての研究データのうち、公開するものを選定します。公開する研究データにはメタデータを付与し、国立情報学研究所が整備する「研究データ基盤システム(NII Research Data Cloud)」から検索可能な状態で公開することが求められています。本学では、以上の要件を満たすため、「法政大学学術機関リポジトリ」にて研究データを公開することを原則としています。
法政大学は2025年4月に「法政大学 研究データ管理・公開ポリシー」を策定しました。より詳しく研究データ管理の方法についてまとめた「法政大学 研究データ・管理ポリシー解説」もご確認ください。
法政大学 研究データ管理・公開ポリシー(規定第1402号)
法政大学(以下,「本学」という。)は,法政大学憲章に基づき,多様な視点と先見性をそなえた研究に取り組むとともに,社会や人のために真に自由な思考と行動を貫きとおす自立した市民を輩出することで地球社会の課題解決に貢献することを使命としている。これを実現するため本学は,研究活動によって得られた成果を蓄積し,社会への還元を進めるにあたり,研究データの管理,公開及び利活用について以下のとおり定める。
なお,本ポリシーは,本学における研究データの管理,公開及び利活用に関する方針を示すものであり,法令,契約及び本学が定める規程等の実施に制約を与えるものではない。
(研究データの定義)
1 本ポリシーが対象とする「研究データ」とは,本学における研究活動の過程若しくは結果として研究者によって収集又は生成された情報を指し,デジタルか否かを問わない。
(研究データの管理及び公開)
2 本学及び研究者は,法令,本学の規程(これに準ずるものを含む)の範囲内並びに他の者の権利及び法的利益を害さない範囲において,相互に協力して研究データを適切に管理及び公開する。
(研究者の責務)
3 研究者は,それぞれの研究分野の特質を踏まえ,前項に掲げる範囲内において研究データを適切に管理し,可能な限り公開することでその利活用を促進する。
(大学の責務)
4 本学は,研究データの管理,公開及び利活用促進を支援する環境の整備を推進する。
(その他)
5 社会や学術環境の変化に応じて,適宜本ポリシーの見直しを行うものとする。
以上
研究データを保存し、共同研究者間で共有するためのシステムです。研究プロジェクトごとに「データの保存場所」と「共有者」を設定することで、安全な環境で研究データのやり取りや保存をすることができます。
国立情報学研究所が整備する研究データ管理用のシステムです。本学の専任教員(および本学所属として研究代表者となっている方)はGakuNin RDM内に研究プロジェクトページを開設することができ、研究プロジェクトごとに共同研究者を設定できます。共同研究者は本学の専任教員以外でも設定可能です。
GakuNin RDMの利用方法は以下のマニュアルをご確認ください。
公的資金による研究の場合は、論文の根拠となる研究データを研究者が所属する研究機関の「機関リポジトリ」にて公開することが求められます。また、公開においては、「研究データ基盤システム(NII Research Data Cloud)」から検索可能な状態とするためにメタデータを付与することが原則とされています。
法政大学における機関リポジトリは、図書館が整備する「法政大学学術機関リポジトリ」であるため、本学における研究データ公開は「法政大学学術機関リポジトリ」の利用を原則とします。
論文の根拠となった研究データは、メタデータを付して「法政大学学術機関リポジトリ」に掲載することで公開することができます。
(1) 公開する研究データを選定する
研究データのうち、論文の根拠であり、かつ公開が可能なデータを選定します。
公開が求められている研究データの範囲については内閣府や関係府省が申し合わせる下記の指針等を参考にしてください。
また、「法政大学研究倫理規程」「法政大学 研究データの管理・公開ポリシー」「法政大学個人情報保護及び特定個人情報取扱規程」なども参照し、公開の適正性も考慮する必要があります。
(2)公開用フォルダに保存する
公開する研究データを、法政大学全学ネットワークシステムが提供する「Box」の「<研究データ>公開用」フォルダに保存します。研究活動中に他のストレージを利用していた場合も、公開するデータの保存については本学の「Box」の利用を原則とします。
◆Boxにデータを保存(アップロード)する方法
◆Boxに保存したデータの公開用URLを取得する方法
(3)公開する研究データのメタデータを作成する
メタデータとは、その研究データが何のためのどのような形式のデータなのか、研究データの属性、構造、意味、関係性などを説明するためのデータです。研究データを作成した研究者が定義(作成)する必要があります。
研究データ管理基盤GakuNin RDMにはメタデータ登録・作成機能があるので、GakuNin RDMで管理している研究データであれば、効率的にメタデータを登録・作成することができます。
また、図書館リポジトリ担当が提供するメタデータ入力フォーマットに入力して作成することもできます。
◆GakuNin RDMで研究データのメタデータを作成する方法
(4)リポジトリ担当に掲載を依頼する
公開する研究データの「メタデータ」と「Boxに保存した研究データのリンク(URL)」を図書館リポジトリ担当に提出します。図書館リポジトリ担当が「法政大学学術機関リポジトリ」への登録作業を完了すると研究データが公開されます。
※◎を@に代えて送信してください
1 研究データ管理について
研究開発センター kenkai◎hosei.ac.jp
2 Boxの利用方法について
法政大学全学ネットワークシステムユーザサポート net-uketsuke◎ml.hosei.ac.jp
3 法政大学学術機関リポジトリについて
法政大学図書館リポジトリ担当 hosei-ir◎ml.hosei.ac.jp