市ヶ谷リベラルアーツセンター(Ichigaya Liberal Arts Center)は、市ヶ谷キャンパスにおける共通教養科目を運営する教学組織です。市ヶ谷キャンパスを拠点とする6つの学部(法・文・経営・人間環境・国際文化・キャリアデザイン学部)が共同で運営しています。学内では頭文字をとって「ILAC(アイラック)」と呼ばれており、ILACの主催する科目は「市ヶ谷基礎科目」ないし「ILAC科目」と呼ばれています。ILAC科目の主な履修者は前述の6学部に所属する学生ですが、それ以外の学部の学生も履修できる公開科目等も提供しています。
市ヶ谷リベラルアーツセンターという名称に含まれる「リベラルアーツ」は実はとても多義的な概念です。日本語でも、「一般教養」「教養諸学」など様々な訳語があります。それでは、私たちが“市ヶ谷リベラルアーツセンター”の名称に込める「リベラルアーツ」とは、どのようなものでしょうか。
その本質的な要素は、専門的知識の基盤となると同時に、専門を深める過程でその歴史的・社会的・倫理的意義にまで視野を広げること。そしてその視野に立った実践において、主体的にかかわる課題に応じて既存の分野、枠、境界線の“あいだ”へと身を投じ、新しい結合を試みること。言い換えれば、自由の新地平を切り拓いていく力にあります。これらを要素とする教養が、法政大学憲章に掲げられた「自由を生き抜く実践知」の核心部分のひとつをなしていると考えます。
ILAC科目は現在、約2500の授業から編成されています。ILAC科目の編成方針を示しているのはカリキュラム・ポリシーです。ILAC科目のカリキュラム・ポリシーは上段で説明したリベラルアーツの目的を、「幅広く深い教養および総合的な判断力を培い、豊かな人間性を涵養すること」と端的に表しています。この方針のもと、ILAC科目は人文科学、社会科学、自然科学、情報学、外国語、保健体育などの多様な分野を0~5群に分類し、100番台(基盤科目)・200番台(リベラルアーツ科目)・300番台(総合科目、教養ゼミ)という体系で、1年次から4年次にわたって学修できる構造となっています。
私には自身の経験から、これらの授業で、新しい知的世界に心躍らせる1年生、現在的関心のもとに学問的情熱を傾けられるテーマを絞り込もうと貪欲に学ぶ2・3年生、そして、卒業後をも見据えて専門課程で培った知識・見識を別の分野と照らし合わせてその守備範囲を確かめつつさらに広げようとする4年生たちの姿が目に浮んできます。私たち市ヶ谷リベラルアーツセンターは、先に述べた「自由を生き抜く実践知」に連なる教養の教育理念のもと、こうした学生一人ひとりの経験・意欲・志向に応えることのできる授業、学びの場を常に創出し続けていくことを目指しています。
ILAC科目はその多様性ゆえに、ときに選択に迷うことがあるかもしれません。しかし、自身の熟慮に基づく選択を信じて、学士課程における専門科目とならぶ学修の柱として、ILAC科目を大いに活用してください。
2025年4月1日
法政大学 市ヶ谷リベラルアーツセンター長
山本 卓