学校法人法政大学における教育研究活動の基盤となる自律的かつ持続的な運営を図るための基本方針 (内部統制システム整備の方針・理事会運営の方針)

理事会運営の方針

学校法人法政大学における教育研究活動の基盤となる自律的かつ持続的な運営を図るための基本方針 (内部統制システム整備の方針・理事会運営の方針)

Ⅰ 【総 則】

1 本法人におけるガバナンスに関する基本となる考え方

現在の社会は、国際紛争、経済やビジネス、個人のキャリアに至るまで複雑さを増し、将来の予測が困難な状況であり、これまでスタンダードだと思われてきたことも崩れていっている状況である。また、少子高齢化は深刻な問題であり、世界や日本、大学、本学、そして個人にどう影響を及ぼしていくかすべてを見通すことは難しい。つまり「VUCA」(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)の時代である。

法政大学は、融合性の高い法人と教学との関係、そして民主的な合意形成の手続を重んじることを特色としてきた在り方のもと、本法人のあるべき姿を踏まえ、絶えざる変化と流動化の時代にあっても、原点と方向性を見失わず、すべての構成員とともに、社会からの信頼を得て、寄附行為第3条に掲げる目的(法政大学の目的)を実現し、法政大学の教育研究を持続的に発展させるため、運営における的確性、公平性、透明性及び迅速性を確保することをガバナンスに関する基本的な考え方とする。

Ⅱ 【理事会・理事の役割】

1 理事会の構成

理事会は、理事会全体として、教育、研究、社会貢献、グローバル化、ダイバーシティ推進、学生支援、中等教育、法務・リスク管理、人事労務、財務、財産管理等の識見及び遂行能力を有し、これらに関する戦略や方針を策定できる構成とすることに努めなければならない。

2 理事の選任

「総長候補者選挙規則」及び「理事選出規則」に基づいて選出された候補者について、本法人の理事選任機関である理事選任委員会が、あらかじめ評議員会の意見を聴いたうえで選任する。

3 代表業務執行理事・業務執行理事の役割

(1)代表業務執行理事は、この法人を代表し、理事会の定めるところにより、総長を補佐してこの法人の業務を掌理する。
(2)業務執行理事は、理事会の定めるところにより、総長を補佐してこの法人の業務を掌理する。
(3)業務執行理事は、理事会が決定した経営方針、計画、戦略等の方策に基づき、業務執行に係る計画を立案し、適切に分掌する業務を執行する。
(4)業務執行理事は、理事会が決定した経営方針、計画、戦略等の方策を所属員に伝達し、組織としてその実現が図れる体制を整備する。

4 非業務執行理事の役割

(1)非業務執行理事(総長、代表業務執行理事、業務執行理事及び本法人の教職員である理事を除く理事)は、理事会の意思決定に関与するとともに、理事会が方針等を策定するにあたっては、各人の経歴や知見に基づき助言又は支援を行う。
(2)非業務執行理事は、総長、代表業務執行理事及び業務執行理事の業務執行の適切性について監督する。

5 関連当事者間の取引

理事の競業、本法人と理事間の取引については、法令、寄附行為及び寄附行為施行細則において手続きを定め、理事会において適切に管理を行う。

6 総長及び理事の率先垂範

(1)総長及び理事は、法令、寄附行為、本法人の諸規程の遵守をはじめ高い道徳観と倫理観に基づき行動する。
(2)総長及び理事は、情報の管理、機密の保持を徹底する。
(3)総長及び理事は、人格や価値観を尊重し、良好なコミュニケーションを図り、相互理解と協力に努める。
(4)総長及び理事は、率先垂範して、「経営倫理綱領」、「ダイバーシティ宣言」や「ハラスメント防止・対策に関するガイドライン」を含む本法人が定める規則や方針等に則り、構成員の鑑として行動する。
(5)本法人のレピュテーションが毀損する、社会へ影響を及ぼす事態が発生した場合は、総長及び理事自らが原因究明と再発防止策の構築、説明責任を果たす。

Ⅲ 【理事会の運営】

1 理事会の議論の原則

(1)理事会は、理事、監事及び出席する関係者、構成員の人格や価値観を尊重したうえで、理事会の議論が自由闊達で建設的に行われるよう会議を運営する。
(2)理事会の意思決定に至る過程において、各理事及び各監事の意見表明の機会を確保するように努める。
(3)議長である総長が、理事会の議論の原則を各回で確認する。この原則に反しないよう出席者は努めなければならない。

2 理事会の取組課題の設定と進捗状況の振り返り

(1)理事会は、①発足時に任期4年間を通した理事会としての取組課題とその中での初年度の取組課題を設定し、②毎年度末にその進捗状況等の振り返りと次年度の取組課題を設定する。
(2)取組課題については、年間の協議スケジュールを策定し、計画的に議論を進める。
(3)課題に関連する教職員とのコミュニケーション(定期または随時)の機会を設け、議論のベースとなる情報を整理する。
(4)取組課題により、専門家の意見を聴く勉強会、理事以外の役職員・専門家を入れた委員会で議論を進める。

3 理事会の運営方法

(1)理事会での議案説明は補足説明中心(又は説明省略)とし、議論中心の運営とする。
(2)非業務執行理事及び監事に対し、原則としてあらかじめ定める日までに所定の方法で理事会資料を提供し、協議に必要な情報が十分に共有されたうえで、理事会としての意思決定が行われる体制を整備する。
(3)非業務執行理事に対し、業務執行理事会での議論や議題の背景にある事業環境等、議案への理解を深めることを目的とした事前説明を行うなど、理事会での協議に向けて十分な情報を提供する。
(4)理事会の協議において、「討議・意見交換事項」を設け、理事会における年間の取り組み課題等の議論テーマ、そのほかの経営課題について、意見交換や討議する時間を1時間程度確保するように努める。
(5)各部局の資料に加え、データ(比較資料、本法人の立ち位置含む)、認証評価の内外部評価等を踏まえて議論する仕組み(データへのアクセス方法を含む)を整備する。また、必要に応じて理事会が直接アンケートなどを実施する。
(6)各種会議体(学部長会議、学校長会議、部長会議等)での議論について適宜共有する。

4 理事会直轄委員会での議論の尊重

(1)理事会は、理事会直轄委員会の存在意義を十分に理解し積極的に活用する。
(2)理事会直轄委員会の助言や勧告等は理事会に報告される。理事会はその助言や勧告等を尊重して、理事会として意思決定を行う。

5 理事会の実効性評価

(1)理事会の実効性を高めることを目的に、毎年度、実効性評価を実施する。
(2)理事会直轄委員会であるガバナンス委員会において、実効性評価の分析を行い、その内容とともに改善課題を理事会に勧告する。
(3)理事会は、ガバナンス委員会からの勧告を踏まえ、継続的な改善に努め、さらなる実効性向上に取り組む。

6 事務局機能の強化

理事会の取組課題の検討、業務執行の監督、議論のベースとなるデータや資料の提供など、理事会機能の実質化を支える事務局機能を強化する(総務部総務課の強化、理事会事務局職員の育成、他部局との役割分担を図る)。

Ⅳ 【理事会が自律的かつ持続的に監督機能を発揮する仕組み】

1 理事及び監事に対する研修の実施

(1)理事会は、理事及び監事が就任する際に、理事及び監事に求められる役割と責務を理解するとともに、教育機関としての公共性や本法人の自律的かつ持続的な運営に重要な役割を果たすことを踏まえ、関係法令、制度、組織(教育組織を含む)、財務、内部統制システム、本法人の経営課題全般に関する「就任前研修」を実施する。
(2)理事会は、コンプライアンス、本法人の経営課題等に関する定期的な研修や勉強会を実施する。
(3)理事会は、リスク管理の観点から、メディアトレーニング(危機管理広報研修)を定期的に実施する。

2 市ヶ谷校地以外の校地での理事会の開催

理事会は、原則として年1回以上、多摩校地、小金井校地、三鷹校地、川崎校地、鶴見校地のいずれかで理事会を開催し、理事会の他に各校地の見学又は意見交換等を行い、理事会の協議の充実を図る。

3 重要な法令等の制定及び改正への対応

重要な法令等の制定・改正等については、理事会においてその内容を確認する。

4 非業務執行理事と監事のコミュニケーション

理事会における議論の活性化に必要な情報を得ること、また、相互の連携を深めることを目的として、非業務執行理事及び監事による情報交換の会議である「非業務執行理事・監事会議」を開催する。

5 将来の経営を担う後継者の育成の仕組み

総長や理事のブレーンとして中堅・若手の教員を配置し、特定課題の法人運営の一端を担えるような仕組みを設ける。

Ⅴ 【内部統制システムの整備】

1 内部統制システム整備の方針

(1)理事会は、「法政大学全体が効果的に運営される仕組み(フレームワーク)」であること、理事は、教職員が安心して教育研究に従事できる、安心して働くことができるフレームワークを整備する責任があること、教職員は、これらの考え方を理解し、フレームワークが有効に機能するよう努めることを内部統制システムに関する基本的な考え方に位置付け、役員及び構成員が、ともに信頼し合い、真に風通しの良い環境において、教育研究・社会貢献に関わる業務を行っていくことを主眼とし、その決議によって、内部統制システム整備の方針を決定する。
(2)理事会は、コンプライアンス・リスク管理委員会において、本法人の内部統制システムの運用状況とその有効性を検証し、その検証結果に基づいて、内部統制システム整備の方針等の見直しを継続的に行う。

2 内部統制システムの適切な運用

(1)総長は、本法人における内部統制システムを整備及び運用する責任者であり、構成員が主体となって組織目的の達成に向けた活動を継続的に発展し続けていく体制を整える責任を有する。
(2)代表業務執行理事及び業務執行理事は、総長を補佐し、所掌する各組織及び業務に関する内部統制システムを適切に運用するため、必要な指揮・命令、進捗確認、監督を行い、法令遵守対策を講じるとともに、それが有効に機能させる責任を有する。
(3)統括本部長、部長、次長、課長及び主任は、所掌する各組織及び業務において、内部統制システムを適切に運用する責任を有する。

Ⅵ 【監事の役割】

1 監事の役割

(1)監事は、独立した立場で、理事の職務の執行はじめ法令等に定められた事項を監査・調査を実施するとともに、その活動を通じて、適正なガバナンス体制が構築されていること、その実効性を監視することに努める。
(2)監事は、実効性のある監査が行われるよう、会計監査人及び監査室と連携することに留意する。

Ⅶ 【適切な情報開示と透明性の確保】

1 適切な情報開示と透明性の確保

「情報公開規程」に基づき、保有する情報(法人文書)を積極的に公開することによって、本法人の公共性や社会的責任を明確にするよう努める。

Ⅷ 【構成員・社会との関係】

1 構成員・社会との関係

(1)本法人のあるべき姿は、理事会と大学・付属校、役員と教職員が一体となって、教育研究環境を整備し、社会的な信頼を得て、質の高い教育、多様な学びの機会や支援を提供し、それを通じて成長を実感し、「実践知」を身につけたうえで、社会の様々な課題を解決していける人材を育てていくことにある。理事会は、適切かつ積極的な情報公表等の方法による社会からの理解を得るように、安心して教育研究に従事できる、安心して働くことができる環境により教職員等の構成員の目的実現のための活動を行えるように環境の整備に努める。
(2)「法政大学ダイバーシティ宣言」にあるとおり、社会とともにある大学は、創造的で革新的な次世代を社会に送り出す教育組織として、また、社会の様々な課題の解決に寄与する研究組織として、ダイバーシティを推進する役割を担っている。本法人は、人権の尊重、多様性の受容、機会の保障を基盤にして、さまざまな国籍と文化的背景を持つ学生、教職員を積極的に受け容れ、自由を生き抜く実践知を世界に拡げていくことができるよう、教育と研究を充実させていく。
(3)大学には学生・生徒、教員、職員、本法人の校地内で働く人々など、多様な人間関係が存在する。理事会は、「ハラスメント防止対策宣言」にあるとおり、これら多様な立場や考え方をもつ構成員が、個人として尊重され自律的に活動できること、考え方の違いを退けるのではなく互いの価値を認め合う場とするため、ハラスメントのないキャンパス(教育・研究、修学、就労)環境を実現する。