キャリアセンター利用案内

キャリアセンター長からのメッセージ

キャリアセンター利用案内

キャリアセンター長 梅崎 修

 法政大学にキャリアセンターが設立されて、2024年度で20年目になります。


 かつて就職部と呼ばれていた組織も、キャリアという新しい考え方が導入されることによって生まれ変わりました。就職部からキャリアセンターへの変貌は、法政大学だけに限定されたことではなく、全国の多くの大学において生まれた変化です。
 就職活動という一時点の選択から生涯キャリアという「連続する選択」に対して、私事として主体的にキャリアを選ぶことへのサポートがキャリアセンターには求められるようになったのです。
 かつての大学生たちは「大学は就活の支援だけをしてくれればよい」と思っていたし、大学・就職部も、その名称の通り、就職活動だけを支援していました。
 要するに、大学から企業への移行(トランジション)さえサポートしてくれれば、就職後は、企業が従業員のキャリアを適切にマネジメントしてくれるという安心感があったのでしょう。もちろん、就職活動に競争はありましたが、キャリアのゴールは明らかで多くの学生が大企業を目指せばよいと思っていました。しかし、この20年間の主要産業の変動を振り返れば、それは本当のゴールでもなかったし、安心でもなかったのです。


 そもそも、キャリアの充実感は一人ひとりの手作りなのです。それら一人ひとりのキャリアを、本当に自分で選べているか、という「自律感覚」が、時代とともにより問われるようになったのです。会社という他人に任せれば、定年まで大丈夫というような安心重視の「他律」は、たしかに楽かもしれませんが、自ら選んでいるという充実感は得られないのです。
 では、自分が自分のキャリアの主人公となるという「主体的キャリアデザイン」という目標であるとしても、その目標のためにキャリア教育・支援はいかにあるべきなのでしょうか。
 キャリアデザインの研究や実践の世界では、この教育と支援のあり方を探り続ける20年であったと言えます。
 なぜ、キャリア教育・支援は難しいのか、なぜ、我々は試行錯誤を続けてきたのでしょうか。


 まず、教育や支援の現場では、「教える-教わる」という関係が生まれやすい。答えを教えてもらうという考え方は、他律感覚であって、我々の自律感覚を失わせるのです。一方、外野からやや不安を煽るような調子で「自分で選ぶべきだ」と繰り返すだけでは、キャリアへの意欲が生まれないのです。
 私は、学生たちに「自律感覚」を説明する時に、子供の頃に初めて自転車に乗れた時のような感覚だ、と説明しています。
 倒れることだけ怖がっていると、ハンドルを力み過ぎて、手前だけを見て視野も狭くなります。自転車に乗れるようになった時は、ハンドルを軽く握り、目線は先に広がり、視野も広がります。それだからこそ、柔軟なハンドリングができるようになるのです。キャリア選択もまた、力まず柔軟に、未来へと広がる視野が必要です。
 怖がっている子どもをさらに怖がらせることは最悪です。もちろん、親が子供のハンドルを代りに握ってあげることもできません。これは、キャリアデザインにも当てはまる事実なのです。
 だからこそ、失敗への不安を過度に煽らないように見守り、同時に挑戦を促す、というようなキャリア教育・支援が必要なのです。

 法政大学のキャリアセンターの社会的使命は、全国に先駆けて学生と教職員が一緒になってキャリア教育・支援を作っていくことです。これまで我々は、その実績を積み上げてきました。しかし、まだ道半ばです。これからも新しいキャリア教育・支援は開発されなければなりません。
 みなさん、法政大学で一緒に未来のキャリア教育・支援を作っていきましょう。

梅崎 修