大学院特定課題研究所一覧

アーバンエアモビリティ研究所

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2023年4月5日更新

研究代表者 理工学部教授 御法川 学
主たる研究分野 次世代の都市航空交通技術に関する調査・研究・開発
研究概要  21世紀の世界人口の爆発的な増加は,世界規模で都市化を加速し,自動車に代表されるパーソナルモビリティは電動化,IT化という革新とともにその普及は留まるところがない.しかしながら,大都市での平面的な道路インフラは限界に達し,都市の交通渋滞は深刻でこれによるエネルギー損失,時間価値の損失は膨大になっている.いっぽう,大都市では超々高層ビルの建設により,人々は数百メートルに及ぶ立体的な移動を余儀なく求められ,エレベータによる地表面からのアクセスは災害時も含めて極めて非効率なものとなっている.このような近未来都市の姿として,パーソナルエアモビリティ(立体的に空間を自由に行き来する乗り物)があるが,技術的な課題が多くなかなか実現に至っていない.空間移動する乗り物としては飛行機やヘリコプターがあるが,これらは障害物のない管制された上空を高速度で移動するように設計されており,そもそも前述のパーソナルな都市航空交通手段の要求にマッチしているとは言い難い.
 さて近年,空撮や物資輸送等において社会実装が進んでいる無人飛行体(UAV)は,人家のない見通し距離での運用から,市街地上空での無視界飛行(レベル4飛行)が解禁となり,そして機体のさらなる大型化による物資または旅客の輸送を目指すところに来ている.これらはアーバンエアモビリティ(都市航空交通:UAM)と呼ばれ,エアタクシーなど次世代のパーソナルな移動手段として大きく注目されており,研究開発が加速し,この5年で一気に実用化の兆しが見えてきた.UAMで使用される機体は電動垂直離着陸機:eVTOLと呼ばれ,低騒音,ゼロエミッション,滑走路不要,操縦技術不要,交通インフラのないpoint to pointの高効率移動手段として,自動車,鉄道,船舶,航空機の次に現れた新しい乗り物のカテゴリーとして,交通,物流のパラダイムを刷新する可能性を秘めており,また経済的効果も計り知れないものがあるが,UAMが飛行する空間は,専らビルの谷間や家々の上空で従来の飛行機を対象とした航空法では対応できない乗り物であることから,機体の安全性などの関連の法規制が急速に策定されている状況に至っている.我が国においても,「空の移動革命に向けた官民協議会」が2018年度より組織され,海外の状況のキャッチアップとともに,2025年の大阪万博をマイルストーンとした議論が盛んになっている.
 こうしたアーバンエアモビリティを核とした次世代航空輸送の調査,研究,開発を目的として,本研究所を設立する.すなわち,従来航空機を含めた都市空間を飛行する乗り物における衝突回避を含めた高効率な運航システム,気象条件への対応,事故発生時の乗員ならびに地上への安全性,経済性を確保する機体諸元,モーターやバッテリー性能などについて,関連分野の研究者や関係省庁,および受益者である自治体や製造者との情報交換,知識共有の場とすることを目指す.また,アーバンエアモビリティのキーテクノロジーの1つである電動推進ユニットについては,新しい小型航空機カテゴリーであるLSA(Light Sport Aircraft)の電動化ならびに本邦へのカテゴリー導入を通じて,関係省庁や研究者と実践的に調査研究を進める.さらには,アーバンエアモビリティを活用した新たな交通,物流システムに関して,マーケティング分野からの実践的可能性を評価する.
 本研究所による取り組みは,アーバンエアモビリティの実現可能性を評価展望するにとどまらず,昨今の航空機設計開発技術者不足,パイロット不足に対応する若手育成に大きく資するものであり,理工学部およびデザイン工学部の教育研究への貢献は大きい.また,本研究所で得られた知見や成果が次世代航空の法整備や環境醸成を導くこととなり,その社会的意義は大である.
研究員 田中 豊 デザイン工学部 教授

大学院
特任研究員

白井 一弘 (株)フジビジネスジェット​​
水野 操 mfabrica​​​​​​合同会社
井上 保雄 株式会社アイ・エヌ・シー・エンジニアリング
中山 俊明 (一社)スモールファン研究会
髙橋 玄行 (株)菊池製作所
山鹿 光記

HP

設置期間 2023年4月1日~2028年3月31日
設置場所 法政大学理工学部機械工学科 航空・機械音響研究室内