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本研究所設立の目的は、ニュースバリューの文化的生産と民主的な対話に関する包括的な研究の、人的・知的交流のハブとして機能することにある。
研究者と実践者、それぞれの専門知と経験知を尊重する。研究の狙いは、より民主的で多様性に富む社会的な対話をより可能にすることにある。そのため、マス・コミュニケーションの先端で試みられている様々なアクターたちの表現活動に関する複眼的な調査・観察と支援を横軸に、日本のニュースバリューをめぐる学史の再構築と新たな加筆を縦軸に、国内外の研究材料の共有や発信に努める。
現在、多様性・平等性・包摂性(以下、DEIと略す)に関して、国内外問わず各方面で実態調査がさまざまに行われ、DEIの社会的実装の試みやネットワーク化が見られる。例えば、環境・健康・人権・先端技術など、さまざまなテーマで世界80か国をつなぐ調査報道ネットワークの基盤づくりに取り組んでいるピューリツアーセンターは、ジャーナリズム活動における多様性について、「能力、年齢、市民権、犯罪歴や服役歴、学歴、民族性、性別、地理的位置、言語、国籍、政治的信条、宗教、人種、性的指向、社会経済的地位、退役軍人としての地位」などを含む「多様なアイデンティティ、経験、そして世界における生き方を認めること」と定義づけ、市民参加型のジャーナリズムの手法を構築しつつある(https://pulitzercenter.org)。
一方、日本の報道業界は、利用者離れや広告費の他メディアへの流出による経営基盤の縮小傾向が続いている。これらの変化が、ニュースの生産過程や人びとにどのような影響をもたらしているのかを明かにする検証研究は、手薄な現状にある。本研究所では、社会で共有される「ニュースの多様性」をひとつのキーワードとして、さまざまな関係者との対話や調査による実態把握、現状に対する学際的な視野からの解析、国内外で先行する調査・研究の収集と比較検討、の3方向から、日本におけるより多様な社会的対話の実現と、表現の自由・言論の自由の拡大、人びとの判断材料の公平で幅広い共有の方途を探る。
具体的には、主に以下の3つのアプローチを並走させながら定例研究会を設計する。
①様々な包摂の表現形態を試みるアクターたちへの聞き取り調査による実態把握と支援
②ニュースバリューにおける排除のメカニズムに関する調査や学際研究の知見からの観察と分析
③ジャーナリズム学史の再構築(主に日本における理論・歴史・法制度・調査など系譜の整理と伝承)
以上、本研究所の研究活動では、「歴史の最初の一行を記録する」専門職が、何を、なぜ記録するのか、誰のためか、そのためにはどうすればいいのか、といった根源的な問いについて、既存の知見や言葉に囚われることなく、柔軟に学際的な知見の交流によって熟議を試みる。結果として、情報技術の大きな変革期において、昏迷を深める日本の報道そのものを「ジャーナリズムする」ためのアプローチや「よりよき記者や編集者を育てる」ための教育プログラムの、新たな開拓に通じるものと予見される。
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