2018年度

1月

2018年度

1月31日(木)

キャンパス再構築特設部会に出席。
その後、2018年度卒業生のためのメッセージDVDを撮影した。例年、HP上で公開するのである。
さらにその後、学部長会議。そのあとで拡大キャンパス再構築特設部会を開催。

1月30日(水)

常務理事会を開催した。

朝日新聞の大佛次郎賞贈呈式がおこなわれた。スピーチのために出席。今年の受賞者は角幡唯介(かくはた・ゆうすけ)氏の『極夜行』(文芸春秋)であった。私は「まるで『オデュセイア』のような作品」と、語り始めた。決して太陽の昇らない季節の極寒の北極圏を、一頭の犬と約80日間移動し、帰還した記録である。人間界から隔絶された凍りつく暗闇の地上を這う日々は残酷ともいえるほど過酷で圧巻だ。この作品には対になった象徴が組み合わさっている。光と闇、生と死、そして人間が日常を送っている高度なシステム世界と、それを捨てた生き物としての人間の世界だ。極めて計画的にそのシステムから心身を脱出させようと企図された旅だが、それでも思わぬことが次々と起こり、はらはらする。

角幡さんは朝日新聞の記者だったが、辞職してチベットのツアンポー峡谷に挑んだ。その記録である『空白の五マイル』で2010年の開高健ノンフィクション賞を受賞している。私はその時も審査員だった。その後、数々の賞を受賞した。角幡さんとはその後、朝日新聞の書評委員会でもご一緒したが、私が総長になったことで書評委員を辞退し、それきりお目にかかる機会はなかった。この日の贈呈式も、グリーンランドに出ていてお留守。『極夜行』の冒頭に登場する奥様に賞をお渡しした。

大佛次郎賞には「論壇賞」もある。この日、会場でおめにかかった今年の受賞者、小松理虔(りけん)さんは法政大学の卒業生だった。福島の復興を題材にした『新復興論』が賞の対象となった。このところ、卒業生の受賞者と偶然おめにかかることが増えている。(写真:小松理虔さんとご家族)

授賞式のあと、パーティを中座して、日本学術会議の山極壽一会長(京都大学総長)、渡辺美代子副会長等と、3月のシンポジウムの打ち合わせを兼ねて食事。山極さんとおめにかかると、京都と江戸という切り口で、文楽から着物まで日本文化の話が尽きない。言わずと知れた、霊長類学者でゴリラの専門家なのだが、話題とネットワークがとにかく広い。

1月29日(火)

研究所長会議、研究所総合本部会議を開催した。

1月28日(月)

HOSEIミュージアム開設準備委員会を開催した。終了後、虎ノ門ヒルズで行われた、東京2020開会式・閉会式のプレゼンに列席。

1月27日(日)

剣道部100周年祝賀会にかけつけた。法政大学は剣道部も強い。たいへんな盛況だった。剣道を以前から稽古したいと思いながら時間がとれず、木刀と竹刀をいただいたきりになっている。改めて稽古したい、と思った。

例年の、校友会「オール法政新年を祝う会」が開催された。今年は、詳細が決まってきたHOSEIミュージアムについて皆さんに報告し、募金活動をしている旨を伝えた。すでに次々と寄付をお寄せいただいている。これからも増えていって欲しい。コア・スペースに展示できるものの質も、デジタル化を進めて世界発信でする量とスピードも、皆さんのご寄付にかかっている。

1月26日(土)

公認会計士合格祝賀会が開催された。毎年、非常に大きな激励会である。健全な経済社会を営む上で、なくてはならない職業である。AIの進展でなくなるとうわさされるが、AIを導入するとしても、不正の判断は人間がおこなうしかない。やはり大事な仕事だ。社会の変化のなかで、学び続け、良い仕事をしていって欲しい。

1月23日(水)

常務理事会を開催した。

その後「後援会クラブ」による寄付金の贈呈があった。在学生の保護者の組織である「後援会」が活発で、学生たちが卒業した後も残って活動して下さる保護者の方々がおられ、その方々が「後援会クラブ」を結成している。しかも定期的に大学に寄付をしてくださる。たいへんありがたい。

昨年の9月15日に亡くなった増田壽男前総長の「しのぶ会」を開催した。葬儀はお身内でなさったので、大学関係者にとってはこの日が葬儀にあたる。増田前総長に教わったという立教大学の郭洋春総長、増田前総長の出身校である慶応義塾大学の清家篤前塾長、明治大学の土屋恵一郎学長など、本学教職員だけでなく、多くのかたが総勢約300人も列席して下さった。皆さまに心から感謝したい。

1月22日(火)

日本私立大学連盟の常務理事会が開催された。
その後、恵比寿のスタジオで、『週刊ポスト』の「寿影」というコーナーのための撮影とインタビューがあった。

1月21日(月)

「HOSEI2030運営会議」を開催した。

1月18日(金)

学校長会議を開催した。
監事との意見交換会をおこなった。

白鴎大学・上岡條二理事長の招待で、山本厚太郎教授の退職食事会に出席。山本厚太郎氏は北山修氏から紹介された。その後、曾祖父、山本金次郎氏が蒸気機関の技術者として咸臨丸に乗っていてその日記がみつかったとのことで、翻刻を依頼された。それを本学史学科の長井純市教授につないだことがあった。キタヤマ・オサムは歌手で作詞家というもうひとつの自分をもっている。山本厚太郎教授も、山本コータローというシンガーソングライターだった。

1月17日(木)

文部科学省が、法科大学院関連の法律改正に関する説明に来室。
その後、日本学術会議において、外部評価委員会が開催された。座長として3年間、評価をとりまとめていくことになった。
大学に戻り学部長会議を開催した。

1月16日(水)

常務理事会、理事会、理事会懇談会をおこなった。
その後、法政大学能楽研究所主催の第四十回観世寿夫記念法政大学能楽賞、第二十八回催花賞の贈呈式があった。本学の能楽研究所は1952年に設立され、1979年に観世寿夫記念法政大学能楽賞、1988年に催花賞が設定された。

今年の能楽賞の受賞者は、観世寿夫ご本人から薫陶を受けた女性能楽師の鵜沢久(うざわ・ひさ)氏、森田流の笛方、杉市和(すぎ・いちかず)氏で、催花賞受賞者は京都・喜多流の継承に尽力なさった高林白牛口二(たかばやし・こうじ)氏である。東京大学名誉教授の上野千鶴子さんがおみえになった。ジェンダー問題の闘士で、かつ日本文化に造詣が深い。鵜沢さんと親交があり、お祝いにかけつけてくれたのだ。上野さん自身が謡をやっていらしたという。俳句では知られているが、謡の話は初耳。

1月15日(火)

日本滞在中の、本学卒業生でオーストラリア・マードック大学教授の森山武氏を国際日本学研究所公開研究会にお招きし、公開講演をおこなっていただいた。森山教授を引き合わせてくださり、講演に至るまでの調整をおこなったのは、小林ふみ子文学部教授である。

モリヤマ氏は近世史(江戸時代史)研究者であり、越後塩沢(現在の新潟県南魚沼市)の生活を描いた『北越雪譜』の刊行過程を研究し、 ”Crossing Boundaries in Tokugawa Society: Suzuki Bokushi, a Rural Elite Commoner“ (Brill's Japanese Studies Library) を出しておられる。この日の講演は「雪国を江戸で~都鄙合作としての『北越雪譜』」と題し、鈴木牧之が残した滝沢馬琴と山東京山の書簡から、越後塩沢で記録された情報がどのように江戸で『北越雪譜』という書籍になって刊行されたか、時系列に沿って詳細に講演して下さった。同じ研究を日本文学の側からおこない『山東京山年譜稿』を刊行されている慶応義塾大学の津田真弓教授も参加して下さった。ヨーゼフ・クライナー博士も来て下さった。

同じ時代を研究している本学の小林ふみ子教授、地理学と言う観点から近世を深めてくれている米家志乃布教授とともに、私も大いに楽しんだ。江戸文化は、多様なひとり一人の才能が組み合わされて醸成されるという私の「連」仕組み論は、1冊の本をめぐっても証明されていく。しかもこの日の講演では「都鄙(とひ)合作」という、江戸と地方が出会って作られた過程も明らかになった。

1月12日(土)

恒例の、本学学生の保護者の会である「後援会」が主催する、「オール法政賀詞交歓会」がおこなわれた。後援会の皆様、校友会の皆様はもちろんのこと、総長、常務理事、理事、学部長、付属学校長とその父兄の方々が一堂に会する一年に1回かぎりの会である。今年は箱根駅伝、サッカー、野球などの話題で盛り上がったが、法政大学は研究の面でも頭角をあらわし始めたことにも、もっと注目をすべきだ、という声が上がった。もっともである。研究や学業はすぐに数字には表れないので成果が見えにくいが、その進展にもぜひ注目してほしい。「日本経済新聞」(2018年6月4日掲載)によれば、法政大学教員の論文の生産性は国内の大学で6位であり、私立大学ではトップだ。また、『2019大学ランキング』(朝日新聞出版、2018年)によれば、学術賞・文化賞の受賞者数は国内の大学で9位であり、私立大学では3位である。日誌ではまだ書いていなかったかも知れないので、この機会に書いておく。

1月11日(金)

企業の取締役会に出席した。
2020年度版大学案内の写真撮影をおこなった。

体育会に所属する学生たちにとって大学スポーツとは何かを、折があるたびに考えさせられる。大学スポーツは「学ぶ」場のひとつである。学ぶとは、自分の心身、技能、学業、社会や大学や家族など周囲の状況、チームワークのありようなどを総合的に観察し、自分の役割を認識し、指導者と話し合い、自らを成長させていくことだ。貴重な経験である。大学スポーツの指導者は、所属するすべての学生たちにその機会を保障してほしい。

1月10日(木)

日本私立大学連盟・拡大政策部門会議で、「就職・採用活動のありかた」に関する連盟の考え方をまとめるための会議をおこなった。
大学に戻り、来年度の総長としてのスケジュールに関する会議を開催した。

1月9日(水)

常務理事会、常務理事会懇談会を開催した。

ある雑誌が、女子の大学生を貶める記事を書いた。本学は「ダイバーシティ宣言」を出している。放置してはおけない。編集部に抗議すると同時に、法政大学のホームページに「女性の名誉と尊厳を傷つける記事の週刊誌掲載に関して」というメッセージを出した。「2018年12月25日発行の週刊誌に、本学女子学生を含む女性の名誉と尊厳を貶める記事が掲載されました。その内容は、該当する大学学生の安全を著しく脅かすものでもあります。本学では、この記事について深く憂慮し、週刊誌編集部に、再発防止を求める厳重な申し入れをおこないました」という内容である。これからも大学は率先して学生の安全を守り、あらゆる人の権利と尊厳が尊重される社会を作って行かねばならない。

人を人として尊重するとは、その人の存在の全体を受け止め、耳を傾け、その考えを聞き、対話することである。女性だからという理由で、「女性」という要素にだけおとしめ、利用することがあってはならない。同じように、所属する組織や学校や国や民族といった、その人の要素でしかないものをあげつらって批判や評価することは、人として尊重していないことになる。人であれメディアであれ、人間を要素や所属で分類する行為は、思考の浅さを表していると考えてよい。どうか学生の皆さんは、そういう行為を見抜き、利用されないようにしてほしい。

1月8日(火)

日本私立大学連盟の理事会、新年会が開催された。その後、集英社と石牟礼道子論の語り下ろしの打ち合わせをおこなった。長い間依頼を受けていながら、なかなか書けない本を、語り下ろしでなんとか完成させようという企画である。集英社の担当編集者の伊藤さんも、今回の本のライターである宮内さんも、本学の卒業生だ。法政大学の校友3人制作の本ができるかも知れない。

1月6日(日)

1年近く出演できなかったTBS「サンデーモーニング」に出演する。新年の特別編成で、7時から3時間の番組だ。1989年からの平成を振り返る特集だった。日本がバブル崩壊から、拡大成長路線を方向転換できないまま、借金を増やしている状況を、わかりやすく編集できていた。アベノミクスと言われる政策が「見せかけの富」の継続を目標にしていることに、気づかねばならないだろう。今後も、科学技術の発展だけで真に豊かになるわけでもない。自分の立っているところを見定め、理想に向かって地道に歩んでいく実践知が必要であることを、改めて思う。