2023年度

法政大学の学生文化とクラブ活動の原点-2つのスクラップブックから-

2023年度

音楽部の演奏会、書道会の展覧会、英語会の英語劇、スキー部の大会プログラム、校内雄弁大会……。これらは、1933年に法政大学法文学部法律学科を卒業した学生が在学中に集めたビラの数々です。

それらをまとめたスクラップブック(❶)のページをめくると、まず目に飛び込んでくるのは1930年秋の六大学野球リーグ入場券です(❷)。この秋、法政大学野球部が初めて優勝。初披露された校歌は、当時の学生たちが主体となって作り上げ、今も歌い継がれています。六大学野球は国民的な人気を誇り、森永製菓からは各校の名前を入れた「カレッヂチョコレート(❸)」が発売され、そのラベル裏面には校歌が印刷されていました。

❶法文学部の学生が残した スクラップブック

❶法文学部の学生が残した スクラップブック

別のページからは新聞学会主催「ジャズ、漫談、映画の会」をはじめ、各団体が活動資金を集めるために催しを開いていたことが分かります。1929年に城戸幡太郎教授を中心に結成された児童研究所は、「藤原義江独唱会」を開催。「児童問題に関する理論と実践の統一」を旗印として活動する研究所の方針に賛同した、人気のテノール歌手が参加しました。

また、この頃の学生文化で忘れてはならないのが、航空研究会所属の学生と教官がローマへ飛び立った訪欧飛行(1931年)です。こちらのスクラップブックは、航空研究会庶務の学生が残した3カ月の記録。表紙に描かれた搭乗機「青年日本号」は、石川島飛行機製作の複葉プロペラ機で、主翼には「J‐BEPB」という登録記号があります。よく見ると、機体や大学名が現在のスクールカラーで彩られています(❹)。

当初1カ月でローマに到着する計画でしたが、エンジン事故や不時着などトラブルの連続。そのたびに現地から電報が届きました。航空研究会の
初代会長である内田百閒教授からは「gambare gambare(ガンバレ、ガンバレ)」と激励の言葉を贈っています(❺)。

1930年代初頭における学生と教員が一体となった活気や、今日の学生文化とクラブ活動の原点をスクラップブックから見出すことができるでしょう。
*スクラップブックはデジタルアーカイブで閲覧できます。

  • ❷1930年秋の六大学野球リーグ入場券

  • ❸森永製菓のカレッヂチョコレート

  • ❹「訪欧飛行記録」スクラップブック

  • ❺現地へ送られた激励の電報

<リニューアル展示>
HOSEIミュージアム 2023年度春学期企画展示

都市と大学 ー法政大学から東京を視るー
2023年5月12日(金)~8月25日(金)
HOSEIミュージアム・コア(市ケ谷キャンパス 九段北校舎1階)

制作協力:法政大学 HOSEIミュージアム事務室

(初出:広報誌『HOSEI』2023年6・7月号)