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2025年9月卒業・学位記交付式 総長告辞

  • 2025年09月13日
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皆さん、ご卒業おめでとうございます。

「卒業」という言葉は、日本文化の中で非常に一般的に使われています。私も、ファッション雑誌における「卒業」という言葉の使われ方についての論文を読んだことがあります。そこでは、あまり成熟していないスタイルからより成熟したスタイルへと変わることを「卒業」と表現していました。アイドルはグループを離れてソロ活動へ移行する際も「卒業」と呼ばれます。卒業は「次に進むこと」ですが、それは単なる一つの場所や段階から別の場所や段階への移行だけではありません。成長し、もっと学び、自分をさらに広げていくために、その必要性を感じて前に進むことです。皆さんにとって、今日はまさにその日です。

今一度、在学中に皆さんが一生懸命読み込んだ資料や、多くのプレゼンテーション、書き綴った無数の論文、講義を聴き、議論し、親しい仲間や様々な立場の人々と討論した時間、そして研究に励み、その結果を解釈しようとした日々を思い出してください。そして当然のことながら、その成果として得られた幅広く深い知識も。

特に修士号や博士号取得者の皆さんにとっては、その学びは次のステップと直接つながっています。マーケティングやファイナンス、ブランディング、起業に関わる学びを、実際のビジネスの場で活かす方もいれば、社会学の研究を深めて修士・博士研究に結びつける方もいます。社会言語学を学び、商社で働く方はどうでしょうか?また、国際関係や環境学の背景を持ち、航空会社のスタッフになる方は?あるいは、文学専攻からシステムエンジニアとしてスタートする方は?

心配無用です。私たちは、皆さんを特定の職業に就かせるために教育しているわけではありませんし、職業訓練を主目的としているわけでもありません。ここは大学です。実のところ、私自身、大学から大学院まで社会学を10年以上学び続けてきましたが、最初は法政大学で英語のライティングを教える仕事に就きました。

皆さんが受けた教育や研究は、単に知識だけにとどまりません。たくさんの資料を読み、研究し、論文を書いた経験はもちろん、それを超えて、多様なキャリアを追求し、自分の道を切り拓くためのスキルや志向性も育成しています。たとえば、文化的な感性、意思決定力、課題解決力、コミュニケーション能力やチームワークなどです。これらのスキルは、多くの組織が求めるものです。皆さんは、授業や研究だけでなく、クラブ活動、仲間や教授との交流、学外研修、あるいは日本国外での経験などを通じて、こうした力を身につけてきました。

最後に、一つだけ伝えたいことがあります。この先、皆さんがどんな仕事に就こうとも、どんな選択をしようとも、責任を持ってやり通してください。

私にとって、英語を教えるという仕事は、競争の激しい環境の中で社会学を10年以上学んだ後に目指していたことではありませんでした。しかし、一番はじめに取り組んだことは、給与をいただく前でしたが、まず英語のアカデミックライティングの本を買うことでした。そして、しっかり準備を整えて授業に臨むことでした。全力を尽してライティングを教え、今となっては本当に良かったと思っています。その結果、学生たちは留学したり、グローバルなキャリアを築いたり、自分の子どもたちに広い世界の視野を伝えたりしています。皆さんがこれから行うことは、決して無駄になりません。たとえすぐに結果として現れなくとも、他の人に良い影響を与える可能性が十分にあります。

また、皆さんが受けた教育は、単に知識やスキルだけでなく、「社会的責任感」の育成も含まれます。社会的責任感を持つとは、自分が社会の一員であることを理解し、共感を持ち、自分の社会的な環境の条件に「部分的に責任がある」と気づくことです(Hironimus-Wendt & Wallace, 2009, p.78)。簡単に言えば、ただ文句を言うだけでなく、何か行動を起こしてください。そして、自分だけでなく他の人の生活もより良くするようなことを行いましょう。この姿勢こそが、私たちの憲章を支える法政の精神の根底にあるものです。

これから皆さんが世界に出ていくにあたり、多くの課題が待ち受けていることを心に留めておいてください。グローバルなつながりの拡大と多様性の増加にも関わらず、偏見や閉鎖的な態度が増しているという明らかな証拠もあります。しかし、私は、過去数年間に皆さんが学び、経験してきたことは、皆さんがこれらの課題に立ち向かうだけでなく、時代の変化に柔軟に対応し、より良い世界に向かって「自由を生き抜く実践知」の核となる価値観を体現し、法政大学の卒業生として私たちの誇りとなる存在になることにつながると確信しています。

皆さんの中には、英語学位プログラムや学部を卒業する学生もいらっしゃいますので、今申し上げたことのコアな部分を英語で直接伝えたいと思います。

Congratulations on your graduation.

In Japan, “graduation” often symbolizes moving from one stage to another, but it is more than just a transition—it represents growth, learning, and extending oneself. Today signifies that moment for all of you.

Reflect on the extensive reading, research, presentations, and discussions you have undertaken, which have broadened and deepened your knowledge. For some of you, however, your fields of study may not be directly related to the first job you take. That was actually the case for me. After spending a decade studying Sociology, the first position I held was teaching English writing at this university.

But let me assure you, there is nothing to worry about. We do not train you for a specific job; this is a university, not a vocational school. Through your classroom studies, interactions with professors and peers, and the myriad activities you engaged in, you have developed important skills—such as cultural awareness, decision-making, problem-solving, and teamwork. These skills matter greatly and are valued in any profession.

I would like you to keep one thing in mind: do your work responsibly, whether it is your dream job or just a stepping stone. I gave my best when I taught English writing, and as a result, I helped students realize their dreams and expand their opportunities in life.

Nothing you do is wasted, and your efforts impact others, even if the effects are not immediately visible.

Indeed, your education is not only about knowledge or lifelong skills. It is also about developing social responsibility—the recognition of yourself as part of society, empathizing with others, and taking action to improve conditions not only for yourself but also for others. This embodies the Hosei spirit, which underpins our Charter.

The world you step into today presents many challenges—rising intolerance and inward attitudes, even amid globalization and increase in diversity. But I believe everything you have learned and experienced has prepared you to meet these challenges. I firmly believe that as Hosei alumni, you can exemplify our core value of “practical wisdom”—responding flexibly to change and making the world a better place for all.

Once again, congratulations. Know that I will be cheering you on even after you leave the university. At the same time, do not forget about us; you will forever be a valued member of the Hosei community.

改めまして、ご卒業おめでとうございます。皆さまの新たな人生のステージを、心より応援いたします。私たちのことをどうか忘れないでください。皆さんは、これからも変わらず法政コミュニティの大切な一員です。