1.人事行政EBPM研究所の目的
人事行政EBPM研究所(以下、本研究所)は、エビデンスに基づく人事行政の推進を目的に設置された。従来の人事業務は、しばしば属人的な担当者の経験や現場の暗黙知に依存してきた。こうした経験や暗黙知の言語化を図りつつ、エビデンスに基づいた人事行政を促進するための調査研究および実践活動を推し進める。これらの調査研究および実践活動を通じて、職員と職務とのマッチング、スキルギャップの可視化と系統的な人材開発の構築を実現し、組織パフォーマンスの最適化を目指す。
2.主たる調査研究
上記の目的を達成するため、相互に関連する以下の調査研究を推進する。
① 職務特性のマッピング
国や地方自治体には、様々な行政分野の多様な職務が存在する。行政組織内の様々な職務の特性を計測、可視化することで、組織全体の職務の包括的な理解が促進され、行政分野横断的な職務の相互比較が可能となる。
② 職員と職務のマッチング
明らかにされた職務特性を踏まえ、どのような特徴を持つ職員が職務満足度、ワーク・エンゲージメント、パフォーマンスを向上させているのか、を経験的に評価する。職務内容と従業員のスキルや選好等のマッチングを評価することで、最適な職務配置や系統的な人材開発に関する洞察を得る。
③ 人事施策の効果検証
人事行政に関わる施策の評価は、残念なことに日本において殆ど行われてこなかった。アンケート調査を通じて定量的に施策の効果を検証しようとする場合においても、想起バイアス、サンプリング・バイアス等の種々のバイアスを受けやすい設計上の課題や、交絡変数の影響等の除去が不十分な分析上の問題点をそうした調査は抱えてきた。またインタビュー調査を行う場合でも、定性的研究手法の原則に必ずしも依拠せずにデータが収集され、インタビュー内容からの命題の導出過程も不明瞭になりがちであった。本研究所は、EBPMで一般的に採用されている定量手法を活用し、マネジメント研究における標準的な定性分析手法を組み込みながら、人事施策の効果検証を行い、エビデンスに基づく人事行政の推進を目指す。
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