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カーボンニュートラル社会の実現に向けて、生成された電気エネルギー安定供給と高効率な利用が強く求められている。電気エネルギーの安定供給を確保するためには、発電プラントの長期かつ安定的な運転が不可欠である。特に、原子力発電所における多様な配管には電磁非破壊検査技術が広範に適用されており、発電設備の長寿命化を実現するうえで不可欠な基盤技術となっている。一方、電気エネルギーの利用効率を最大化するためには、EV用モータなどの電気機器の高効率化が重要であり、その実現には、電気機器に実装される電磁材料の特性を高精度に評価する技術が不可欠である。
従来、電磁非破壊検査や電磁材料の特性評価には、励磁ヨークや励磁コイル、電源、PCなどから構成される大規模かつ高再現性を有するシステムが採用されてきた。これに対して、本研究所では、多様な磁気センサとプリント基板の連携によってコンパクトなシステム構成を実現し、さらにAIとの融合により、スマートかつ高速な磁気センシングシステムの構築を目指す。具体的には、以下の2年のシステム開発に取り組む。
1.スマート電磁非破壊検査システムの開発
漏れ磁束探傷や渦電流探傷試験などの電磁非破壊検査装置のスマート化を図る。本研究では、強磁性体配管などへの磁束印加機構、漏れ磁束を検出する磁気センサ部、および強磁性体内部のクラック情報を推定する機械学習モデルといった各プロセスを、ハードウェアとソフトウェアの両面から統合的に設計・実装し、スマートセンシングシステムとして構築する。さらに、漏れ磁束探傷および渦電流探傷試験において、有限要素法などの電磁界解析と非線形最適化手法を組み合わせた従来型の数値的探査法との比較評価を行うことで、本研究で提案する磁気センシングシステムの有効性を明らかにする。
2.強磁性体内部のスマート非破壊磁化分布推定システムの開発
永久磁石や電磁鋼板などの強磁性体は、EV用モータなどにおいて高出力を達成するための中核磁性材料である。特に、永久磁石内部の磁化分布は、同期モータの出力特性に直接的な影響を及ぼす重要な物理量である。産業界においては、着磁後の磁化分布評価には、フラックスメータを用いた表面磁束量測定や、磁石周囲の磁束密度から磁化強度を間接的に評価する手法が一般的である。これに対して、本研究所では、永久磁石周囲の磁束密度を入力とし、内部の磁化情報を三次元ベクトル分布として出力可能な機械学習モデルの構築に取り組むとともに、磁界計測から磁化分布の可視化までを一体的に実現するスマート磁化推定システムの開発を目指す。
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