法政大学大学院理工学研究科に在学中の大学院生が、在嶋 満(ありしま・みつる)というペンネームで、講談社が主催する公募新人賞「メフィスト賞」を2025年12月に受賞し、作家デビューすることが決まりました。
在嶋さんは現在、本学大学院に在籍しながら、小説の執筆活動に取り組んできました。今回受賞した作品は、2026年に刊行予定のデビュー作『GEKIRIN』(応募時タイトル)です。メフィスト賞は、これまでに数多くの作家を世に送り出してきた文学賞として知られており、森博嗣さん、乾くるみさん、辻村深月さんら、多くの作家を輩出してきました。
在嶋さんのコメントは以下のとおりです。
作家になる夢はもちろん抱いていましたが、こんなにも早く機会をいただけるとは思っていませんでした。大変嬉しく、間違いなく幸せなことですが、未熟なままデビューしてしまうのではないかという不安も混ざった、なかなか言葉にできない気持ちです。
大学院(特にゼミ)では、人に物事を説明する機会が多くあります。英語論文の要約であったり、自身の研究内容を発表したりする場面です。専門的で難しい内容を、どうすれば聞き手に理解してもらえるのか。自分の中できちんとかみ砕いて、筋道だった分かりやすい言葉に組み立て直す。それは小説を書く時も常に求められる作業です。登場人物の複雑な心理や人間関係、作中で起こる難解な事件をどのような順序で、どのような言葉で読者に理解してもらうか。大学院での学びと創作活動の大きな共通項がここにあると思います。
また、私は農業上の微小害虫に関連する研究をしているのですが、「顕微鏡を覗いているからこそ書ける文章」が確実にあると感じています。これは単に細部を詳しく描写する、という意味だけではなく、頭の中のイメージと実物とのズレに気づく力、という意味です。たとえば、小高い山を思い浮かべたときに、「こんもりとした山」と書くよりも、山はよく見ると一本一本の木が集まって面をつくり、それが粒子のように山肌を覆っているわけですから、「ざらざらとうねる山」と書いたほうが、より正確でリアリティのある表現になり得ます。作品にこうした表現を取り入れるかどうかは別として、観察眼は研究活動を通じて培われた部分が大きいと思っています。
「作家であり続ける」それが最大であり最低限の目標です。デビューくらいで満足するな、と常に自分に言い聞かせています。毎日書き、自分の力を疑い、慢心せず歩んでいきたいです。
不安定な世の中だからこそ、読んでいて胸が躍る、ページをめくる手が止まらなくなるような作品を届けたいと思います。
本学大学院に在学しながら創作活動に取り組んできた在嶋さんが、今回、文学賞を受賞しました。今後の活動にも注目が集まります。