12月13日(土)に、2025年度(第9回)「自由を生き抜く実践知大賞」表彰式を市ケ谷キャンパス 富士見ゲート4階 G403教室にて開催しました。
詳細は、以下よりご覧ください。
Diana Khor総長より、受賞された実践事例への選定理由コメントと、ノミネートした実践事例にコメントが寄せられましたので、下記の通り紹介します。受賞した実践事例以外にも、「実践知」を生み出している素晴らしい事例が数多く存在しています。ぜひご覧ください。
◆掲載内容
実践主体/実践事例名称
Diana Khor総長からのコメント
「法務省によれば、刑務所と学校が受刑者を軸につながった全国初の画期的な試みだった」とのことで、この取り組みは非常に挑戦的であり、またとても難しい社会問題について、小学生・中学生・大学生が真剣に考え、社会を理解し、さらに偏見や価値観といった自分の深層に向き合い見つめ直す貴重な機会を与えるものだと深く感心しました。
プロジェクト全体は「自由を生き抜く実践知」を体現していると思います。あらゆる立場の人びとへの共感を通じて、真に自由な思考と行動を貫くことのできる自立した市民を育てることにつながる取り組みだと感じました。
将来、他の難しい問題にも対応できるようになる経験だと思いますので、まさに「世界のどこでも生き抜く力を備えた」人間へと成長していくのではないでしょうか。また、このような考え方や姿勢によって、より多くの人々にとってより生きやすい社会をつくることへの貢献も期待しています。
就職活動は多くの学生にとって避けがたいストレスフルな経験だと思いますが、「脱力就活」は就活生の負担を軽減し、より良い働き方やキャリア形成に寄与しているのではないかと感じます。早期離職は本人にとって大きな問題であるだけでなく、企業の人材育成や社会全体にも大きな影響を及ぼす課題です。
この取り組みは、これらの問題の解決に向けて、番組制作の全工程を学生が担い、学生の視点から就職活動をサポートするという点で非常に意義深いものです。就活生が充実した気持ちで、楽しく自分の将来を描けるようになることにつながっていると思います。
また、法政大学憲章に掲げられている「自由な学風」という精神を継承し、体現していると思います。関わる学生自身も楽しみながら活動している様子が伝わってきますが、その自由は自分自身のためだけでなく、同じ就活生という「仲間」のためにも発揮されており、結果として互いのより豊かな人生へとつながっている点も高く評価できます。
持続可能な社会を作るためには国際的に連携して取り組む必要がありますが、同時に、個人や組織のレベルでできるところから始めなければ、解決にはつながらないとも思います。この草ストローの企画は、まさにこのグローバルな問題の解決に向けて取り組んでいるものです。
それに加えて、ベトナムの障がい者の参与や高校と大学の連携によって、関わる生徒・学生にとって多様性・公平性・包摂性のある持続的な社会づくりの学び、実践、そして将来的な関わりへとつながっています。草ストローを作るという点自体も評価できますが、環境問題と他のグローバルイシューとの関係性、そして環境の観点から見た持続可能な社会だけではなく、より良い社会全体を作るための長期的な良い影響があるという点も評価したいと思います。
これまで周辺化されてきたマイノリティの学生のためのスペースをつくりつつ、アライも含まれることで、安全な場を提供し、大学全体の包摂的環境づくりにもつながっていると考えます。本学には多様な構成員がいることを認識し、あらゆる立場の人びとへの共感を促進することで、この多様性を認め合うことを実現し、まさに法政大学憲章に含まれている理念、そしてその理念を根幹とするダイバーシティ宣言を具体化する活動でもあります。また、法政らしさが表れている、学生が主体となる活動だと思います。学生の目線から教職員に課題や改善点を提示し、主体的に取り組んでくださっていることは、本学のDEI推進をより深く、そして広く進めることにつながっていると思います。
不登校というのは大きな社会問題だと捉えています。また、この問題は一時的・一個人の問題ではなく、その本人の人生はもちろん、家族をはじめ関わる多くの人々にも影響を及ぼすものであり、チームで対応しなければならない課題でもあります。
「登校・学習支援室」の開設は、「学校に行きづらい・休みがち・不登校の子どもたち」に精神的なサポートを提供するだけでなく、保護者への支援、そして学習面・生活面で生徒たちが直面する困難を解決するための支援を行う取り組みです。さらに、専門家をめざす大学生や大学院生に実習の場を提供することで、支援者の育成にも寄与しています。これら二つの側面が相互に補い合うことで、不登校という難しい社会問題に対し、より根本的な解決をめざす取り組みへと深化していくと感じます。
トレーナーというのは、もちろん高度な専門性を要する職業であり、サポート役とはいえアスリートのパフォーマンスに大きな影響を与える存在です。そして、この専門性をどのように活かすかは、まさに各トレーナー自身に委ねられています。
AT-Room を拠点として、授業やゼミで学んだ知識や技術を実際の現場で応用できる環境が整っているだけでなく、コンディショニングやリコンディショニングの支援に取り組む過程で、学生同士、そしてアスリートとの相互作用から自然に育まれる「ピアサポート」も大きな特徴となっています。
こうした環境のなかで、トレーナー一人ひとりが身につけたスキルを自ら考えて多様な形で活かすことで、多くの人々がその働きから恩恵を受けることになります。
このように、定められた適用範囲にとらわれず、自らの判断で可能性を広げていく姿勢こそ、まさに「進取の気象」の精神を体現するものです。卒業後のさらなる活躍も大いに期待しています。
アメリカにいた時、国主導の School Breakfast Program (SBP) という取り組みがあり、その後にはクリントン元大統領が学校給食全体の栄養改善に力を入れていたことを思い出しました。根本的なことですが、お腹が空いていると勉強に集中できず、情報の吸収も難しくなります。そのため、経済状況によって十分な朝食を取れない子どもたちは不利な状況に置かれ、社会的な格差の再生産や拡大につながる可能性があります。今回の「100円モーニング」という企画は、当時知っていたこうした取り組みを思い起こさせるものでした。さらに、この企画には地域や卒業生との連携に加え、在学生同士の交流や良い生活習慣の形成につながる側面もあり、多面的な意義を持つものだと感じます。
日頃の生活にあるちょっとした優しさや、都会のなかで知らない同士が交わすささやかなコミュニケーションには、触れた人たちの日常をより楽しく、そしてほっとするものに変える力があると思います。つながりというのは、都会の匿名的で人間味のない環境では、なおさら重要なものだと感じます。
また、ボランティア活動そのものが、自分から社会に何かを届けようとする姿勢であり、法政らしく、つながりを通じてより温かく暮らしやすい社会を形づくろうとする実践だと思います。この点について、自由を生き抜く実践知を体現しているのではないかと思います。
多くの高大連携の活動はイベント形式が中心ですが、高校生が研究室の一員として学ぶ探究講座は、教育的意義が大きいだけでなく、それを超えて研究者としての学びを体験できる貴重な企画です。このような取り組みは、理工系人材不足という現状の改善に寄与するだけでなく、中高一貫した学びの連続性をつくる点でも重要だと考えます。
何より、「よき師よき友」に恵まれた環境の中で、高校生が積極的に学び、より豊富で深い知識を身につける機会となっています。こうした経験は、自由な思考や主体的な行動にもつながり、将来の進路形成に大きな影響を与えるものだと思います。
何年か前の国際会議では、プリント資料は要望がある場合にのみ配布され、給水用ボトルも配布されました。一度そのような体験をすると、ペットボトルに戻ることにとても違和感を覚えます。この企画は、まさに環境問題に取り組む組織としてやるべきことではないかと思います。精密かつ慎重に進められたという印象も受け、その成果が現れていると感じます。
このような取り組みは、単に一つの環境問題の解決に貢献するだけでなく、マイボトルで給水するという経験を通じて、利用者にプラスチック問題だけでなく、多くの環境問題や社会問題に気づくきっかけを作ってくれたのではないかと思います。