阪田 法政大学を選んだのはオープンキャンパスの研究室見学がきっかけです。うどんこ病の病原菌を観察させてもらい、植物も人と同じように病気に罹るという事実を改めて認識しました。同時に植物の病理に興味を持ち、植物医科学専修のある生命科学部応用植物科学科に進みました。
秋山 私は生命機能学科で、学部では阪田さんの1年先輩ですね。生命機能学科は2年次の秋学期から研究室に入れる珍しい学科で、私は1年次の頃から気に入った研究室をよく訪問していました。それが今も所属する再構成細胞学研究室です。世界でもあまり類のない、かなりユニークな研究をしていて、続けていくうちに学部だけでは物足りなくなり、修士課程に進みました。
阪田 私は当初、学部で終えるつもりでしたが、卒業生の話を聞く機会を通して、研究職は修士以上が望ましいという現実を恥ずかしながら初めて知りました。その頃はもう実験や研究の楽しさにどっぷり浸かっていましたし、ぜひとも師事したい先生も見つけていたので、やはり研究者として就職したいなと。好きなことを仕事にするために大学院進学を決意しました。
理工学研究科 生命機能学専攻 修士課程 在学中 阪田さわ子さん(写真左)
理工学研究科 生命機能学専攻 博士後期課程 在学中 秋山浩一朗さん(写真右)
秋山 研究室では人工の膜小胞であるリポソームと、微生物のクラミドモナスを組み合わせたマイクロメートルサイズのロボット開発に取り組んでいます。細胞サイズのロボット開発では、タンパク質やDNAなどの分子を使うことが多いのですが、微生物を使うのは珍しいと思います。うちの研究室はリポソームが専門で、隣の研究室がクラミドモナス。たまたま先輩が思いついて微生物を入れてみたところ、結構派手に動いてしまったという経緯です。ほかの研究室の学生・院生とも仲がよく、突拍子もないアイデアでも皆で面白がって実験してみるといった、自由闊達な空気が魅力ですね。
阪田 私の研究室ではファイトプラズマという細菌を研究しています。この細菌は植物の遺伝子に働きかけて病気を起こすもので、例えば私が研究するアジサイが罹患すると、花の部分が色や質感まで葉っぱに変わったりするんです。ファイトプラズマは培養が困難で研究が難しいのですが、アジサイに何らかの症状を引き起こす分泌物の特定やその機能解析など、先行研究を引き継いで自分なりの成果を上げることができました。学会発表も行いましたので、この基礎研究が応用研究につながれば嬉しいですね。修士課程では新しくアジサイに特化した研究テーマを見つけようと模索中です。
秋山 私はリポゾームごと運動する現象について、国立大学の物理系チームとの共同研究を行い、移動原理の解明や移動制御の実現を目指しています。この研究がマイクロメートルサイズのロボットの遊泳設計や自然界における微生物の遊泳戦略の理解、それ以外の思いもよらないところに使えないかと考えるとワクワクします。博士後期課程でも引き続き研究を深め、行けるところまで行きたいなと思っています。
阪田 修士課程修了後は公的機関をはじめ、民間なら種苗メーカーなどの企業で研究職に従事したいと考えています。病理研究はもちろん、病気に強い品種の開発においても学部と院で培った知識が生かせそうです。また、就職後に社会人学生として博士号を取得したいと思っています。
秋山 私は研究の面白さに魅了されてここまで突き進んできたので、将来の進路はまだ定かではありませんが、研究者か教育者を視野に入れています。特に教育者は、私ならではのアプローチができそうです。私が大学院に進んだのは研究を深めたいという思いのほか、生来、直観的なタイプということもあり、情報を整理する力や実験を計画する力など、「科学者としての基礎体力」があまりにも足りないと痛感したからでした。修士課程で磨いたロジカルに研究を進める物の考え方を、実践的な研究で得た知見とともに子どもたちに教えたい。加えて法政では、一般の人に研究を伝えるためのメディア出演や有識者への講演依頼など、さまざまな経験をさせていただきました。そうした「実践知」を生かし、次代の科学者の育成に少しでも貢献できれば嬉しいです。
内部進学・外部進学ともGPAが評価されることもあるので、普段から真面目に勉強しておくに越したことはありません。しかし進学を目的とするあまり、勉強が苦行になっては本末転倒です。楽しい」「この研究を突き詰めたい」といった、自身の内側にある思いを大事にしてほしいです。ぜひ自分が納得いく動機を見つけてください。(秋山)
私は推薦入試だったので口述試験のみでしたが、一般入試の学部生は試験に向けて、改めて学部の学びを勉強します。復習によって知識が補強されるので、修士のスタートラインに立った時、一般入試で合格された方のほうが地力が高いと感じました。口述試験では自分の研究がどのように社会の役に立つか、考えておくことをお勧めします。(阪田)
(初出:『大学院入学案内2026』)
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