2025年度

鮮やかに描かれた琉球の植物 沖縄文化研究所所蔵『中山花木図』

2025年度

 沖縄文化研究所が所蔵している絵巻物に『中山花木図ちゅうざんかぼくず』があります(「中山」とは、琉球王国のことを指します)。横山しげるが収集し、1970年代、沖縄文化研究所に収蔵された琉球関係史料コレクションの一つです。薩摩の絵師である木村探元たんげん(1679 -1767)が琉球の植物12点の絵を描き、琉球の程順則ていじゅんそく(1663 -1735)がそれぞれの植物図に画賛(絵にちなんだ漢詩)を付けたものです。

 木村探元は、1679年に薩摩で生まれ、江戸狩野派に入門の後、薩摩藩の御用絵師として、数々の優れた作品を残しました。その他、探元は絵画だけでなく、茶道・歌道にも通じた教養人でもありました。

 程順則は、1663年に琉球で生まれ、近世琉球を代表する政治家・外交官・教育者・文学者として知られる人物です。生涯で5度にわたり清国に留学をしており、1708年に清より持ち帰った『六諭衍義りくゆえんぎ』は、後に八代将軍徳川吉宗に献上され、寺子屋の教科書として日本全国で活用されました。1718年には、琉球で最初の公的教育機関となる「明倫堂」を創設しました。

 『中山花木図』は、木村探元が描き近衛家に献上したものと、島津家のために描いたものがあり、島津家本には程順則の画賛が付いています。1714年に程順則が徳川将軍の就任を祝う慶賀使として江戸へ赴いた際に薩摩において、これらが加えられたとされています。

 近衛家と島津家は政治的・文化的に深い交流があり、探元は近衛家で半年ほど御用を務めていました。近衛家は、島津を通じて清国や琉球の最新の文化を受容していたとされ、それを示す象徴的な作品がこの『中山花木図』です。当時の公家社会では、異国の植物への関心が高かったことがうかがえます。

 探元が鮮やかな色彩で細微に描いた絵により、琉球から薩摩にもたらされた琉球の植物について知ることができます。

※2025年9月開催予定の特別展示にて、昨年度制作した『中山花木図』レプリカを初出展します。

1段目:『中山花木図』 題字/2段目(右から※以下同):①千年草(ドラセナ) ②名護蘭(ナゴラン) ③掛蘭(シンビディウムの一種)/3段目: ④茉莉花(ジャスミン)⑤三段花(サンダンカ) ⑥扶桑花(ハイビスカス)/4段目: ⑦玉簪花(ギボウシの一種)⑧青茎蘭(カンラン)⑨龍眼樹(リュウガン)/5段目: ⑩偕老根(リュウキュウエビネ)⑪榕樹(ガジュマル)⑫黒棕(クロツグ)

HOSEIミュージアム 2025年度企画展示
法政大学と戦後80年 ―戦争と向き合い、平和を求める―
【期間】2025年5月16日(金)~8月30日(土)
【会場】HOSEIミュージアム ミュージアム・コア(市ケ谷キャンパス 九段北校舎1階)

制作協力:法政大学 HOSEIミュージアム事務室

(初出:広報誌『HOSEI』2025年6・7月号)