公共政策の研究に取り組んでいる土山・廣瀬ゼミ。2020年度までは廣瀬克哉教授がゼミを運営。2021年4月の総長就任後は新任の土山希美枝教授に引き継ぎ、校務のない時にサポートとして加わっています。「共同運営のゼミならではの強みを感じてほしい」という両教授の願い通り、「二つの視点から知見が得られるので、より広い視野で政策課題をとらえ、考えるようになりました」と語るのは藤田(涼)さん。「ハイフレックス型授業※1が始まり、土山先生の提案で学生の意見を書き込んで共有するオンラインツールを利用し始め、個々の考えが一元化されて見え分かりやすくなりました」と、新たな体制でオンラインならではの学びが強化されたことを喜びます。
学生は2年次から3年次にゼミに所属。年間を通じて参考文献を講読して基礎力を磨き、年度末ごとに1本ずつ論文を書き上げています。初めての論文執筆に取り組む藤田(大)さんは「映像作品を用いた、シティプロモーションをテーマに考えています。将来は、芸術が盛んな地元の地域活性化に貢献していきたいと思っているので、その礎となる研究にできるように検討を重ねています」と、自身の未来にも思いをはせます。
ゼミ活動の主軸は、日本公共政策学会が開催する学生政策コンペへの参加です。2021年度は新潟県加茂市が対象地域となりました。「プロの声楽家を招いて『第九』を合唱する音楽イベントを催し、地域活性化を図る政策を提案。準優勝にあたる加茂市長賞を受賞しました」と語るのは鈴木さん。「本格的なオーケストラピット※2を備えた貴重な文化施設である加茂文化会館を生かし、コロナ禍で失われがちな地域の娯楽に焦点を当てたことを評価していただきました」と成果を誇ります。
調査段階での印象的なエピソードを語るのは山下さん。「文化、特産物、教育・高齢者の3テーマに分かれ、電話やオンラインでの聞き取り調査を進めました。加茂市音楽協会の方は特に協力的で、文化班の検討会議にオンラインで参加し、実態に基づく助言をくださいました」と、感慨深く振り返ります。
「昨年度は政策コンペが中止になってしまったので、今回評価をいただけたことは大きな励みになりました」と語るのは、ゼミ長を務める須山さん。「芸術や文化の振興は地域にどのような影響を与えるのか。それを調査し、深めていく過程はやりがいのあるものです。将来、自分自身が地域貢献を考える上での糧にしていきたいです」と決意を新たにします。
※1 ハイフレックス型授業:対面授業とオンライン授業を併用し、どちらでも受講できるしくみ
※2 オーケストラピット:オーケストラが演奏する劇場内で、ステージと客席の間に設けられた大きなくぼみのような空間
(初出:広報誌『法政』2022年3月号)