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卒業生インタビュー:えづらファーム 代表 江面 暁人さん

  • 2021年08月24日
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プロフィール

江面 暁人(Ezura Akito)さん

1979年和歌山県生まれ、北海道育ち。1999年、1期生として国際文化学部に入学。2003年に卒業後、人材紹介会社に入社し、企画営業を担当。2009年に北海道へ移住し、農業研修を経て、2012年4月、紋別郡遠軽町白滝地区に「えづらファーム」をオープン。2017年、第12回HAL農業賞「チャレンジ賞」を受賞。

農業の面白さや可能性を発信し、農場とこの地域を次世代へつなげたい

29歳で脱サラをして北海道へ渡り、42ヘクタールもの広大な農地で畑作をしながら、農家民宿なども運営している江面暁人さん。会社員の仕事も農家の仕事も、トライ&エラーの繰り返しで、考え方や進め方はまったく同じだと言います。

農業のイメージを変えるため毎年新しいことにチャレンジ

東京ドーム9個分の広さの農場で、畑作3品と呼ばれる小麦、じゃがいも、てん菜(ビート)などを作っています。植え付けも収穫も作業の大半はトラクターで行うので、一般に考えられているほどの「力仕事」ではありません。それでも、5月の植え付けや9〜10月の収穫は時間との戦いで、毎年、その時期は同時に5人ほどの住み込みボランティアの手を借りて乗り切っています。

自然が相手ですから、台風でスイートコーンが全部倒されたり、豪雨でじゃがいもが畑ごと流されたりすることもあります。だからこそ、リスクマネジメントとして畑作以外にも柱となる事業を持ち、複合的に経営していくことが大事だと考えています。現在は、農家民宿に加えて企業研修も展開するようになり、特に民宿は12〜2月の農閑期の収入源となっています。

新規就農者として、既存の概念に縛られずに新しい風を吹き込みたい。就農して知った面白さややりがいを広く発信して、農業のイメージをよりプラスの方向に変えていきたい。そのためにも、毎年必ず新しいことに挑戦すると決め、それを実行し続けています。

海外から農業体験やボランティアでえづらファームを訪れる人は、年間200人を数える。左端が江面さん。

海外から農業体験やボランティアでえづらファームを訪れる人は、年間200人を数える。左端が江面さん。

法政の4年間で大きく広がった視野

高校生の時に1年間カナダ留学を経験し、より多くの人と交流できる環境で自分を磨きたいと考えていたので、「スタディ・アブロード(SA)」を必修とする新設の国際文化学部に入学しました。

山根恵子教授のゼミでは、卒業制作として、異文化交流をテーマに日本の文化を紹介する映像を全員でまとめました。SAの留学地ドイツでいろいろな国の学生と交流したこと、ゼミでの映像制作の経験は今、海外からのボランティアの受け入れや農場のウェブサイト制作などにつながっています。

法政には全国各地からバックボーンや考え方の異なる学生が集まってくるので、視野を広げ、互いに切磋琢磨するには格好の場でした。同期の仲間はさまざまな分野に飛び立っていて、活躍している様子を見聞きするたびに刺激をもらっています。

大学4年次に訪れたイタリアのベネチア

大学4年次に訪れたイタリアのベネチア

ワークライフバランスを求めて北海道へのUターンを決意

就職活動を進める中で人材系の仕事に興味を持ち、就職氷河期ではありましたが、スピード上場を果たした勢いのある会社に入社することができました。3年目にはチームのマネジメントを任され、毎日朝7時前に家を出て夜中に帰宅するという日々が続くうちに、将来について漠然とした不安を覚えるようになったんです。仕事は面白いし、やりがいもあるけれど、この環境では自分の目指すワークライフバランスを実現できないのではないかと。

頭に浮かんだのは、高校生まで暮らしていた北海道の広大な自然と、そこで体を動かす楽しさでした。それまでは、北海道に戻るなら定年前後と考えていましたが、農業に将来性やビジネスチャンスを感じるようになり、Uターンでの新規就農を決意しました。

北見市で1年間農業研修を受け、自分で農場を経営したいという思いが強くなりました。運良く、第三者への経営譲渡を考えていた方に巡り会え、その農場で2年間の研修を受けて、農地と機械、施設、住宅を譲り受けました。先代の経営者からは、農業指導はもちろん、天候の変化の前兆や近所付き合いのコツまで伝授いただけ、幸先の良いスタートを切ることができました。

全力で取り組めば必ず何かにつながる

トライ&エラーを繰り返しながら、いかにしてモチベーションを保ち、効率よく最短距離でゴールに到達するか。そういう考え方や動き方は、会社員でも農家でもまったく同じです。だからこそ、日々の仕事が単なる「作業」に終わらないよう、それが何につながるのかを常に意識しています。

ボランティアや農業体験、農家民宿、企業研修などで、えづらファームを訪れる人は年間のべ600人(白滝地区の人口に相当)に上ります。これは、地元の人いわく「何もない」この地域や農業に人を引き付ける魅力がある証しといえます。また、国内外の多様な人と交わり、新しい知識や発想に触れられることは、私のモチベーションを高める原動力にもなっています。

やりたいことがないのをコンプレックスに感じている学生も少なくないでしょう。実は私もそうでした。どういう会社や仕事であれ、自分にできることを最大限実行していけば、それは必ず何かにつながる。会社員から農家に転身した今、ボランティアの面接や企業研修をはじめ、あらゆる場面でそれを実感しています。

2021年の新しい挑戦は、アフターコロナを見据えた、一組限定の体験型ファームレストラン。このえづらファームを、次世代の人に受け継いでもらえる存在に育て上げ、農業のイメージアップや少子高齢化に直面しているこの地域の活性化に多少なりとも貢献できれば何よりです。

えづらファームの詳細:https://www.ezurafarm.com/

 

(初出:広報誌『法政』2021年6・7月号)