研究概要 |
本研究は、現在進行するグローバル化の中で国民国家が移民に対してどのような政策を行っているのか、国民社会は移民をどのように包摂し、また排除しているのか、また移民の流入によって国民国家や国民社会はどのように変容するのかを、様々な国々の国際比較を通じて、理論と実証双方の観点から考察し、解明することを目的としている。
この研究は以下の4つのテーマを中心に進めていく。
- 移民の受け入れと選別
国民国家は経済的な理由から移民を労働者として受け入れてきた。またその際に移民を選別し、滞在資格と労働許可を付与する。そうした移民受け入れと選別の政策を国際的に比較し、その論理について考察する。また近年ヨーロッパで問題になっている難民受け入れ政策とその論理についても考察する。
- 移民の統合
国民国家は労働者ないし難民として受け入れた外国人にどのように対応しているのか。どのような地位や権利を付与しているのか。また国民社会は彼らをどのように包摂または排除しているのか。これらの諸問題を国際的に比較し、国民国家がどのような論理で移民の統合を行い、また移民の統合政策はどのような効果を上げているのかを考察する。
- シティズンシップと国籍
国民国家は移民として受け入れた外国人に対し一定の条件で国籍とそれに付随する諸権利(シティズンシップ)を付与し、彼らを「国民」の一員として統合していく。しかし国籍付与の仕方は国によって様々である。そのように多様な国籍政策を比較し、その論理について考察する。
- 排外主義
国民社会は、国家が受け入れた外国人を友好的な態度で受け入れるわけではない。移民と国民との間には、経済的地位や文化的属性によって違いがあり、それが格差や対立を生む。さらに国民の側から移民に対する排外主義も発生する。現在西欧諸国では、排外主義的な右翼政党が台頭し、国内の対立が顕在化している。そのような状況を国際比較し、排外主義が発生するメカニズムについて考察する。
- 国民国家の変容
移民の流れが加速し、社会のグローバルな繋がりが広がるなかで、国民国家の役割はどう変化するのか。また国民の出自が多様化するなかで、国民の多様性と連帯とはどのようにバランスされるのか。文化や宗教の違いはそこでどれほど重要な役割を果たすのか。これらの問題について国際比較の視点から考察する。
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