設置終了した研究所

日ロ関係研究所

設置終了した研究所

研究員等の職は、設立当時のもの

研究代表者 法学部教授 下斗米 伸夫
主たる研究分野 日ロ関係
研究概要 ソ連崩壊後、ロシアは国民国家形成と市場移行をめぐる試行錯誤を重ねながら、とりわけプーチン政権のもとで安定化、制度形成をつみかさねている。エネルギー価格の高騰もあって外貨準備高は中日に次いで世界第三位を記録する中、国際社会でも国連安保理での役割はいうまでもなく、G8メンバーとしてその地位も向上しつつある。プーチンⅡ大統領期には、東シベリアや極東での経済発展の展望とも相まって、アジアへの傾斜を著しくしており、日ロ関係の改善の大きな期待を高めたのが、2013年4月末の安倍首相訪ロとプーチン大統領の共同声明であった。なかでも東アジアでのマルチな国際関係での統合に向け、上海協力機構や六者協議などの仕組みが本格化してきた。2012年に開かれたAPEC・ウラジオストック会議が転機となっている。このことは冷戦終結後も平和条約締結などの問題を積みのこしてきた日ロ関係にとっては、大きな課題と挑戦となっている。日本とロシアとは、お互いにとって相手が何者であり、いかなる相互関係をこれから築くべきか、真剣な模索と対話、そして研究の必要が増している。経済的にはすでに日本からの輸出は、この8年間で20倍を記録するにいたっているが、東日本大震災後のエネルギー事業も相まって、これからはさらに天然ガスなどエネルギー輸入が本格化することで規模を増加させよう。このことは平和条約交渉にも刺激となっている。
従来から法政大学では、ロシア東洋学研究所との関係を基礎に、日ロ文化交流の一大拠点となってきた。実際、本学の教授アンドレイ・クラフツェヴィッチ氏をはじめ、客員研究員のサルキッソフ元客員教授などはロシアの東洋学研究所の研究者として従来も法政とロシアの学会、いな日ロの研究交流に大きな役割を担ってきた。そのような資産を生かしながら、これから飛躍が期待される日ロ関係を、そして日本でのロシア研究の拠点として、発信をふくめた日ロ関係研究センターとして、本研究所を位置づける。
具体的研究計画としては、三つの水準を研究の対象として区別しうる。第一に、ロシアの政治、経済、社会レベルの研究 第二に、バイラテラルな意味での日ロの政治経済社会研究、とくにエネルギーや極東開発第三として、東アジアを中心とした統合と紛争のプロセス、実際にはこれら三つの課題は相互に関連しているとしても、概念的には区別しうる。
第一には、ロシアの過去現在、そして未来のロシアを研究するテーマである。このうち政治研究については、下斗米が国際政治学会理事長として、ロシアの国際政治学会、特に理事長トルクノフ氏と研究仲間であり、また政治学会でも日ロ交流小委員会委員長として交流の実績がある。年六回刊行の『政治学研究』の国際編集評議員でもあるので交流は容易である。経済、社会面でのロシアへの関心を拡充したい。毎年秋の下斗米が座長のモスクワ会は両国間の民間交流の柱となっている。
第二の日ロ交流では、平和条約を含めた両国関係が課題となる。特に注目されるのは地域間交流であり、北海道や、ロシア極東などとの交流の回路がこれから重要となる。環日本海、オホーツク交流などといった関係も重要となろう。
第三には、第二と深く関連し始めているが、特に朝鮮半島をめぐる六者協議と日ロ関係、さらに、上海協力機構と日ロ関係といったマルチな枠組みの中での日ロ関係が研究テーマとなろう。朝鮮半島問題は当面の両国の課題として存在している。
このような研究のパートナーとして第一にあげられるのは、ロシアでの科学アカデミー東洋学研究所、さらにはモスクワ国際関係大学との研究交流であり、また高等経済院、将来は中央アジアの大学との交流もあげられる。さらに下斗米がアジア冷戦研究を通じて交流している韓国のソウル大学や高麗大、国民大学校などとの研究交流、中国の北京大学や上海の華東師範大学などとの交流もいっそう深められるべきであろう。
さらに将来構想として挙げられるのは、欧米の主張研究所、中でも英国のバーミンガム大学、オクスフォード大学、ロンドン大学、米国でもハーバード大学ロシア研究所、カリフォルニア大学サンタバーバラ校との交流をいっそう深めることで、いっそう立体的なロシア研究、日ロ関係研究が可能となるに違いない。
研究員 A・クラフツェヴィッチ 法学部教授
特任研究員

コンスタンチン・サルキソフ ロシア科学アカデミー東洋学研究所研究員
マフムドフ ウミド

設置期間 2013年6月6日~2018年3月31日
設置場所 法学部 下斗米 伸夫 研究室(80年館512号室)