
大賞
受刑者の社会復帰を子どもと考える共生教育
キャリアデザイン学部遠藤ゼミ有志8名
2025年9月、山口県美祢市立豊田前小学校、大嶺中学校にて、「社会復帰した受刑者と共生できるか」というワークショップを、遠藤ゼミ有志8名が行った。法務省や山口大学との共同プロジェクトで、学区内にある刑務所に収容されている受刑者との、フラワーアレンジメントの贈呈という交流の意味を考えるものであった。これに向けて3月から半年間、大学生は各地の刑務所や関係機関を取材し、受刑者にもインタビューを行った。22本の調査をもとに、小学生、中学生向けのプログラムを策定した。犯罪者の社会復帰を妨げるものに社会の偏見があり、いかに彼らを受け入れるかは重要な社会課題である。と同時に、悪いことをしてはいけないという道徳と相反しかねないテーマでもあり、学校教育にてこれを取り扱われたことはなかった。今回も、教育委員会や学校関係者の戸惑いもあったが、くり返し協議を重ねながら相互理解を深めた。プログラムでは子どもたちは真剣に難しい問いに向き合い、最後は子どもたちが受刑者に書いたメッセージを大学生が届けるという形でプロジェクトは閉幕。法務省によれば、刑務所と学校が受刑者を軸につながった、全国初の画期的な試みだった。
プロジェクトが立ち上がったとき、大学生の参加は任意としたが、思いがけず多くの立候補者がいた。異文化圏交流、障碍者支援、LGBTQ当事者の生活障害の除去、共生には様々な側面があるが、「犯罪を犯した人たちのその後の支援」は、参加する大学生にとっても、身の安全に対する心配もあれば、テーマの重さもあり、取り組みにくいプロジェクトであった。自分の偏見と向き合いたい、自分の生きづらさを考え直したい、身近に当事者がいる、など様々な動機で参加したが、単位も評価も出ないにもかかわらず、真剣に取り組んだ。価値観のぶつかるテーマであり、様々な関係者と意見がぶつかり、否定されることも多く経験し、悔し涙を流しながらも最後まで挑み続ける様子に、成長を感じた。大学生たちは、多くの大人たちの価値観の多様さ、無自覚だった自身の偏見、ゼロからものごとをつくりだす苦しさと面白さなど、多くの学びを得た活動であった。当初はゼミ独自の取り組みであったが、途中から法務省の関心も呼び、次年度以降継続の方針になったことは、参加学生にとって大きな誇りとなった。
「法務省によれば、刑務所と学校が受刑者を軸につながった全国初の画期的な試みだった」とのことで、この取り組みは非常に挑戦的であり、またとても難しい社会問題について、小学生・中学生・大学生が真剣に考え、社会を理解し、さらに偏見や価値観といった自分の深層に向き合い見つめ直す貴重な機会を与えるものだと深く感心しました。
プロジェクト全体は「自由を生き抜く実践知」を体現していると思います。あらゆる立場の人びとへの共感を通じて、真に自由な思考と行動を貫くことのできる自立した市民を育てることにつながる取り組みだと感じました。
将来、他の難しい問題にも対応できるようになる経験だと思いますので、まさに「世界のどこでも生き抜く力を備えた」人間へと成長していくのではないでしょうか。また、このような考え方や姿勢によって、より多くの人々にとってより生きやすい社会をつくることへの貢献も期待しています。
このような名誉ある賞をいただき、大変嬉しく思います。ありがとうございます。この取り組みは、様々な関係者があってこそ実現したプロジェクトだと考えております。そのうえで、様々なステークホルダーや価値観をまとめていくプロジェクトの過程では、大変な思いもたくさんしてきました。しかしこのような名誉ある賞をいただいたことで、その大変だという思いや自分の価値観といった点を評価いただいたことが誇りになっています。改めまして、ありがとうございます。
その他の受賞団体の記事や各ノミネート団体の実践事例概要等については、以下よりご覧いただけます。