2019年度

6月

2019年度

6月29日(土)

編集工学研究所で、「仄明書屋(そくみょうしょおく)」という和歌・俳諧をテーマにした催し物が開催された。これは、ISIS編集学校のなかの「風韻講座」の一部だ。文学からも俳諧連句からも遠ざかって久しい。様々なことが山積みではあるが、久々の創作の場に参加した。日常とは別世界にいるようだった。

6月27日(木)

財務省主計局次長・神田眞人氏が、法政大学の施設をご覧になりたいとのことで文部科学省のかたと一緒に見えられた。多摩キャンパスをご案内し、昼食懇談をおこなった。多摩キャンパスの今後の展開に深い関心を寄せておられた。

その後小金井キャンパスに移動し、学部長会議を開催した。

6月26日(水)

常務理事会と予算編成委員会を開催した。

6月25日(火)

日本経済団体連合会(経団連)主催の「Society5.0時代の大学教育と採用のあり方に関するシンポジウム」が経団連ホールで開催された。まず、経団連副会長・渡邉光一郎氏、埼玉大学学長で就職問題懇談会座長の山口宏樹氏それぞれから、トップメッセージが語られた。それに対して「思考力を育てる教育」とはどういう教育か、と会場の大学院生から質問があった。これに返した渡邉氏の「跳び箱授業の例」は興味深かった。かつての体育授業では、跳び箱を「飛べるか、飛べないか」で評価していた。今はチームを作り、「飛べない」理由を検証、実験しながら全員が飛べるようにする。これは課題発見と課題解決の事例である、と。

今年の4月、経済界と教育界が同じテーブルにつき就職・採用・これから必要な能力などについて議論し、「採用と大学教育の未来に関する産学協議会――中間とりまとめと共同提言」を発表した。双方の協議は画期的なことだった。この会議体には3つの分科会があった。本シンポジウムでは、分科会それぞれから報告があった。「Society5.0人材育成分科会」については経団連教育・大学改革推進委員会企画部会長の宮田一雄氏が、「産学共通認識図」によって、これから求められる能力についての方針を説明した。「今後の採用とインターンシップのあり方に関する分科会」については土屋恵一郎明治大学学長が、新卒一括採用と通年採用の併存のあり方と、インターンシップのあり方について説明。「地域活性化人材育成分科会」については鬼頭宏静岡県立大学長が、地域と大学のすれ違いを超えて接点を作りつつ、地域に新しい産業を興す人材育成の重要性を述べた。これらに加え、産学協議会委員でもある渡邉光一郎氏が、2018年6月に経団連が出した「今後のわが国の大学改革のあり方に関する提言」について説明、鎌田薫私大連会長が、企業と大学側が協議し相互理解を深めた意義について述べ、「教育再生実行会議」の提言について説明した。

私はパネルディスカッションに出席した。前半は日本私立大学連盟(私大連)のリカレント教育への考え方と産業界への要望、そして法政大学のリカレント教育事例をお話しした。後半では、就職採用の変化についての私大連の見解と産業界への要望をお話しした。このディスカッションには、永田恭介筑波大学長、蓼沼宏一一橋大学長、小川正樹中部経済連合会専務理事が参加し、迫田雷蔵日立アカデミー代表取締役がコーディネイトして下さった。経済界と教育界が議論と提言をおこなう時代に入った。それほどの危機ということでもあるが、議論を絶やさないことが重要だ。
これらの記録はしばらくすると、経団連のYouTubeで見ることができる。

午後は私大連の総会と懇親会が開催され、7月からの新しい私大連会長が、長谷山彰慶応大学塾長に決まった。

6月24日(月)

法政大学校友会定時総会で挨拶し、その後懇親会に出席した。総会は、全国の代表議員の方々が集まって重要事項を決定する会議である。

6月23日(日)

今年も薩埵(さった)ホールで、本学の付属校三校(法政大学中学高等学校、法政大学第二中学高等学校、法政大学国際高等学校)の合同説明会を開催した。今回の「自由を生き抜く実践知」講演では、昨今の社会の変化について、いつもとは異なる話をした。社会の変化にはとりわけ保護者の方々の認識が大事だと思われる。その後、三付属校それぞれを卒業して法政大学に学ぶ3人の学生から、今年も、中高そして大学在学中の活躍と、それぞれの充実した時間を語ってもらった。

長い間の友人であり、「発達臨床ならびに感性心理学的視点から見る日本の育児文化」(1999年~2001年 のちに『共視論』として刊行)という科学研究費補助金による研究をともにおこなっていた九州大学名誉教授の北山修さんが、「日本心理臨床学会第29回学会賞」を受賞なさり、その祝賀会がおこなわれた。
受賞講演では、「人のなかにある肯定と否定、消化と排泄、吸うと吐くなど2つの矛盾する事柄が統一されることなく併存する構造と意味をあきらかにしたい」という話をなさった。「分けて束ねる」「話し=放しながら考える」「だらしないは、しどけないとも言う」という言葉の一つ一つも、非常に興味深い。『新版 心の消化と排出』に詳しいが、日本語の比喩と病理の関係を長く研究なさっている。

6月20日(木)

HOSEI2030推進本部会議を開催した。HOSEI2030は全学体制で進めている。アクション・プランを実現するために作業部会が稼働し、中期経営計画も進めているが、さらに重点課題を進めるためのタスク・フォースをスタートさせる。

6月19日(水)

常務理事会を開催した。その後、2種のテーマの常務理事会懇談会を開いた。

6月18日(火)

お台場のサントリーワールドヘッドクォーターズでおこわなれたサントリーセミナーで講演した。「文明としての江戸」というタイトルで、江戸時代はどのような意味で「文明」と考えられるのか、いかなる一貫性とまとまりがあるのか、をお話しした。本学の卒業生である渡辺京二さんが、「ある特定のありかたが自然や生き物との関係にも及ぶような、そして食器から装身具・玩具にいたる特有の器具類に反映されるような、そういう生活総体を文明と呼ぶならば」(『逝きし世の面影』平凡社)と、「江戸文明」を問題提起したことで、文化と文明について考えさせられたことがある。「文化は生き残るが、文明は死ぬ」と述べ、現代日本に残る江戸文化を「新たな図柄の一部として組み替えられた古い断片の残存」と喝破した渡辺さんの言葉は、現代社会の中で日本文化を取り扱うことの意味を問うている。この日の話は、断片ばかり見るのではなく総体を解きましょうよ、という話で、「治める」「生み出す」という2つのテーマに従って話した。終了後は、各自のスマホで打ち込んだ質問が次々に画面上に現れる、という仕組みで質問が殺到し、まさに「次々に」答える、というスリリングな質問タイムとなった。複数の社屋を遠隔で結んだ講演であるためにこの方法を採用しているのだが、質疑のスピード感がとても面白い。

講演終了後、7月にIBMの天城ホームステッドでおこなわれる「天城学長会議」の打ち合わせ会議に駆け付けた。今年も面白くなりそうだ。

6月17日(月)

大阪のサントリーアネックスで、サントリー地域文化賞の最終選考会があった。歌舞伎舞台、神楽、浄瑠璃人形などの伝統芸能は、まだまだ地域で盛んにおこなわれている。後継者問題も無い、という場所すらある。毎年、審査員は一次選考で選ばれた場所に行くことができるのだが、今年も私はスケジュールが合わず、どこにも行かれなかったのが残念。

6月15日(土)

関西大学・法政大学・明治大学の三大学連携協力協定締結記念特別展示「ボソナードとその教え子たち」および、記念シンポジウム「働くことと学ぶこと〜商都大阪と関西法律学校」が、関西大学で開催され、私も参加した。巡回展とそれぞれのシンポジウムは、昨年6月に明治大学で開催され、今年2月に法政大学で開催し、今回は関西大学で最後の巡回であった。展覧会は展示品がほぼ重なっているものの、展示空間や展示方法によって、それぞれの個性が出ている。
シンポジウムは、まず市原靖久関西大学法学部教授による「大阪の法学校〜ボアソナードの教え子たちと関西法律学校〜」、次に藪田貫関西大学名誉教授による「大阪に文科大学を〜関西大学と泊園書院〜」の講演があり、その後は吾妻重二関西大学文学部教授、村上一博明治大学法学部長が加わってパネルディスカッションとなった。たいへん興味深い面白いディスカッションだった。大阪の学校は、江戸時代から商人や産業界と強いつながりがある。江戸時代の大坂では、商人が作って商人が学んでいた「懐徳堂」が代表的だ。武家の都市であった江戸と、商人の都市である大坂では私塾のありようが異なり、それが私大の設立経緯の違いにも現れている。関西大学の源流のひとつが、泊園書院という漢学私塾であったが、戦後まで残っていたという。
これでシンポジウムは一巡したが、さらに共有する特徴を軸にして議論を続けていきたい。この日は次のシンポジウム案として「都市と大学」というテーマが挙がった。私立大学とはどうあるべきか、熟考する機会になりそうだ。

6月14日(金)

学校長会議を開催した。
今年も朝日教育会議に参加する。朝日新聞の担当者の方々と、打ち合わせをおこなった。本学の薩埵(さった)ホールを舞台に、本学卒業生の為末大さん、この3月まで本学教員であった湯浅誠さんと私の3人で、「グローバリゼーション for ダイバーシティ」というテーマで講演と座談をおこなう。昨年は「江戸から未来へ アバター for ダイバーシティ」というテーマであった。その続きであるとともに、本学のグローバル化が、グローバル企業や米国との一体化を目的にしたものではなく、ダイバーシティな大学と社会を創ることを目的にしていることを、明確に打ち出すつもりである。
その後、JA全中(全国農業協同組合中央会)の雑誌の取材を受けた。少子高齢化、後継者不足、外国人材受け入れ、工場生産管理方式の登場など、農家にはいま最も日本の課題が集中している。学生たちも農家の現状を学ぶことで、日本のこれからが見えてくることを知ってほしい。

6月13日(木)

本学卒業生で、岩手県陸前高田市議の畠山恵美子氏が来室。地方議会における女性議員が、人々の無意識のバイアスによって、まだまだ厳しい立場に置かれていることがわかった。だからこそ、もっと増やさなければならないだろう。

来週開催するHOSEI2030推進本部会議の打ち合わせをおこなった。学部長会議を開催した。

6月12日(水)

定例の常務理事会、理事会を開催した。

6月11日(火)

日本私立大学連盟の公財政改革委員会に出席。文科省から、高等教育の無償化についての具体的説明があった。

法政大学全国市長会を開催した。卒業生の市長、もと市長などを中心に、地域を担う方々に集まっていただく会である。毎年おめにかかる鈴木直道夕張市長は北海道知事になり、「市長会」ではもうおめにかかれなくなったが、これも嬉しいことだ。この会の醍醐味は全員に話していただく「市の自慢話」である。魅力的なお話ばかりで、全てに行きたくなる。

6月10日(月)

福岡で「九州市民大学」のための講演をおこなった。昼夜2回である。テーマは「江戸から考える変革の時代」とした。このテーマの講演はほとんどの場合、江戸時代がなぜ「ものづくり」に転換し、それに成功していったかを話すのだが、この日はそれに加えて、これからやってくる新しいデジタルとビッグデータを基本にした社会や、そこで求められる能力や、多様性の価値などについて最初にお話しした。江戸時代の人々の対応方法は過去の話ではないことを、感じていただきたかった。

6月9日(日)

TBSのサンデーモーニングに出演した。この日は「5080問題」と呼ばれる中高年の「ひきこもり」問題や、天安門事件後の中国についてが主なテーマであった。

6月8日(土)

「夢ナビライブ」で講演した。「夢ナビライブ」とは株式会社フロムページ主催、文科省後援で、全国5箇所でおこなっている、大学案内の巨大イベントである。東京会場は東京ビックサイトで開催され、一日で318もの講義が展開された。ブースで区切られてはいるが、同時に多くの講師が同じ時間に話し始め、話し終わる。30分の短時間決戦だ。思わず力が入る。皆さん熱心に聞いて下さった。職員たちは夕方までずっと、椅子を並べて次々と志願者たちの質問に答えた。それにしても、すごい人数の高校生たちが行き交っていた。

6月7日(金)

HOSEI ONLINEの対談をおこなった。今回は理工学部創生科学科教授の松尾由賀利さんと対談した。松尾さんは、レーザーを研究する物理学者だ。日本物理学会や応用物理学会の理事も歴任なさっている。レーザーは原子核のまわりの電子の性質など、様々なものを調べることができ、加工技術にも応用されている。光の研究は光そのものを知るだけでなく、それを使って多くのことに貢献しているという。松尾さんとは、ジェンダー・サミットが日本で開催された時にお近づきになった。私立大学で研究をしている女性科学者はごく少なく、様々な委員会に呼ばれ、社会的貢献でも大変お忙しい。しかし、国際的にも極めて女性研究者が少ない日本で、少しでも理系の研究に関心を持ってほしいと、努力を惜しまない。本学でも、「理系ブランディング」という名称で、研究者たちを紹介する機会を増やしている。そもそも知性には、文系も理系もない。高校教育においても、「文系」「理系」という受験用の区別をしない方向が打ち出されている。大学では、個々の学生のなかで文理の知が結び合わさって、より広い理解力を獲得できる方法を模索している。松尾さんは子供のころ、歴史が好きだったそうだ。私は子供のころ、宇宙に夢中になっていた時期がある。ひとりの人間の知にも、「理系」「文系」の壁は無い。そして、研究には男女の能力差も、もちろん無い。これからは、それらの壁を壊していく方法を、一緒に模索したい。

いよいよ今年も本学の自校教育科目「法政学への招待」の講義の日がやってきた。今年から、講義の名称が「大学を知ろう <法政学>への招待」となった。私は例年、1960年代後半からの法政大学のトピックを、経験をまじえて話している。今年はそれに加えて、学生たちがこれから社会に出るとどのような能力を求められるのかを話した。どちらも、大学と社会のつながりを示す話題である。法政大学の歴史を通して、明治以降の日本の歴史を知り、これからの変化について考えることができる。本学の学生は ぜひ受講して欲しい。

6月6日(木)

キャンパス再構築特設部会に参加した。
午後は長時間にわたり、本学の自己点検・評価活動の一環として定期的に開催されている自己点検懇談会をおこなった。今回は学部の「アセスメント・ポリシー」を各学部長から発表していただき、議論した。教師が「何を教えたか」から、学生が「何を学んだか」を明確にし、数値や言葉でそれを表現する方向への転換が必要なのである。様々な方法が議論された。

6月5日(水)

常務理事会と、2種類の常務理事会懇談会を開催し、さらにその後HOSEI2030運営会議をおこなった。

6月4日(火)

HOSEIミュージアム開設準備委員会を開催した。具体的なコアスペースの姿が見えてきた。
日本私立大学連盟の常務理事会、理事会が開催された。

6月1日(土)

法政大学学生の保護者組織である「後援会」の、新旧役員懇親会がおこなわれた。会長、副会長など、役員は6月交代で、いつもこの時期に旧役員に感謝状をお渡しして感謝申し上げ、新役員と顔合わせをする。常務理事、15人の学部長たち、そして職員たちには、夏休みに全国各地に散って、後援会の地方支部で講演と懇親をしていただくので、その意味でも大事な顔合わせの機会だ。今年も皆さんと楽しく過ごした。遠くから来てくださる支部長、副支部長の皆様には、とりわけ感謝したい。