2016年度

3月

2016年度

3月29日(水)

現在の常務理事、理事、監事、統括本部長と、4月1日から就任する常務理事、理事、監事、統括本部長が一堂に会した。今まで何度か公式の引き継ぎをおこない、それぞれの担当の引き継ぎもおこなってきた。法政大学ほどの大きさになると、安定した組織の秩序と、一丸となって目的に向かう熱情を両立させるのは至難のわざである。達成目標が多岐にわたり、人それぞれ向かいたいものやその濃淡はどうしても生じてしまうが、だからこそ長期ビジョンを明確にする必要があった。今期3年にわたって、ともにスーパーグローバル大学創成支援の目標達成と、HOSEI2030およびそのアクションプラン策定に立ち向かい、本学史上最高の志願者を記録する大学を作ってくださった今期の常務理事、理事、監事、職員一同に、心から感謝する。

3月25日(土)

二中高の校舎竣工式と祝賀会があった。多くの来賓を迎えてみなさんにお礼を述べる機会であり、お披露目の機会でもある。地域の方々にも活用していただける建物となった。立派な校舎を皆が「うらやましい」と言う。大学教員から見てもうらやましい。アクティブラーニングや国際化に対応したこの校舎を、教育の高度化に使いこなせるかどうかが、これからの課題である。

3月24日(金)

学位授与式をおこなった。昨年は軽井沢のバス事故があり、事故にあいながらも参加してくれた卒業生たちがいた。亡くなった学生たちのことを考えるとたまらない気持ちだったが、同時に、参加してくれた学生たちに心打たれる学位授与式となった。一昨年は後藤健二さんの事件があり、その無念もみなさんと共有しつつ、同時に、2011年3月11日の大震災で入学式ができなかった学生たちの学位授与式だったので、入学式もおこなった。今日は総長になって3回目の学位授与式だ。様々な学位授与式が、法政大学の記憶を形作っていく。

「外国人留学生卒業を祝う会」で、留学生たちを祝った。少しずつ増えてくる留学生が、挫折しないで充実した学生生活を送ることができるようにするには、無限にやるべきことがある。完璧は不可能だが、少しずつでもなんとかしたい、と思うのは、こういう機会に卒業生たちの笑顔を見るからである。

3月22日(水)

ベトナムでおこなった日本語スピーチコンテストの入賞者3人を本学に招待した。「地球社会に、わたしが貢献したいこと」という共通テーマで開催したこのコンテストへの応募者は約100人、その中から3人が入賞した。ハノイ大学とベトナム国家大学外国語大学の3人だが、全員女性だ。江戸東京博物館を見学したり東京観光をするなどして数日を過ごす。本日は九段校舎を訪問して下さった。みなアオザイに身を包み、とても清楚だが、映像で拝見したプレゼンテーションは力強く、いきいきとしている。これからどういう道を歩むのか、楽しみだ。学位授与式も見学してくださるそうだ。

3月21日(火)

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の方が2名来訪。開閉会式演出の基本方針を決める式典委員会委員就任を依頼された。江戸・東京の観点からの提案が必要なのだ。法政大学では江戸東京研究プロジェクトが始まっているので、お引き受けした。

<参考>
公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(東京2020組織委員会)は、3月24日に第19回理事会を開催し、「式典委員会」改め「東京2020有識者懇談会」の発足を発表しました。

私大連の理事会と総会があった。学長の交代時期で、親しくなった上智大学の早下隆士学長とお別れになってしまうのが寂しい。津田塾大学の高橋裕子学長とはこの日、新聞に掲載された「女子大はLGBTにどう向き合うか」について語り合った。「女性の定義」が大学の存立基盤となる日がやってくるとは、想像もしなかった。本学は付属3校が2018年度をもって完全共学化するが、それはすべての学校が第3のトイレ問題を抱えるときでもある。 

この日、私大連総会に福島県立ふたば未来学園高等学校の校長がお見えになり、お話になった。2017年度末に初の卒業生を出すからである。震災前は双葉郡に5つの県立高校(双葉高校、浪江高校、 浪江高校津島校、富岡高校、双葉翔陽高校)があった。震災後、これらの高校は日本各地に作ったサテライト校で授業を続けたが、結局、元の校舎での授業再開のめどは立たなかった。2015年度、県は各地にちらばったサテライト校と連携しながら、新しい高校を開いた。それが「ふたば未来学園高等学校」である。現在はスーパーグローバル・ハイスクールで、アカデミックとアスリートとスペシャリストを育てるコースをもっている。福島の経験を足場にして、まさに実践知を蓄積する高校である。

3月20日(月)

NPO法人沖縄空手道剛柔流東魁塾の30周年記念大会に、ご挨拶に出かけた。空手は2020年のオリンピック種目に決まっている。その空手の東魁塾を創設した高津利明さんは校友で評議員もつとめて下さった会社経営者だ。本学空手部の学生や卒業生もお世話になってきた。菅義偉官房長官は大学で空手部に所属していたという。「先輩の高津師範には頭が上がらない。今日、官房長官として冷静に発言できるのは空手のおかげ」とご挨拶を下さった。

3月18日(土)

FDシンポジウム「グローバル化とオンライン教育について考える」をおこなった。私は「法政大学におけるグローバル化とオンライン化教育についてーHOSEI2030の観点からー」という基調講演をした。J-MOOCの事務局長、福原美三氏がアジアにおけるJ-MOOCの展開をお話になり、文科省高等教育局の河本達毅氏が高等教育の国際動向を、そして本学の八名和夫副学長が、理工学系教育におけるグローバル化の現状をお話になった。オンライン、オンデマンド教育は多くの可能性をもっている。それは大規模授業の方法を変えるだけでなく、世界に向けて新しい教育展開の端緒となるだろう。前日のシンポジウムと相まって、通信教育の延長線上に、オンデマンド教育の世界拡大を考えた。

1月27日の「軍事研究・デュアルユース(軍民両用)研究等に関する本学の対応」声明から1ヶ月半、いよいよ公開企画「大学・学術の未来と軍事・デュアルユース研究」の日を迎えた。日本学術会議「安全保障と学術に関する検討委員会」委員長である法学部の杉田敦教授からは、学術会議の声明と、そこに至るまでの議論をお話しいただいた。本学の学術支援本部担当常務理事、増田正人教授からは、指針の制定の背景と理由をお話しいただいた。防衛装備庁の研究費への応募が学問の自由になぜ抵触するか、二人の論理的で冷静な説明が、多くの方に届いたと思う。また私は、本学の大学憲章との関係で、軍事研究が本学のありかたと存立基盤をゆるがす理由を、「自由とは何か」という観点で話した。会場からは、「大学当局の人間が、公開でこういうまっとうな話をしていることに感動した」という声があり、一方で、このことをどう学生と共有するのか、という問いもあった。今まで、なかなか大学のありかたについての考えを学外に話す機会はなかったが、この公開企画は実施してよかったと思う。本学教員の参加が少なかったのが残念だったが。

3月17日(金)

スーパーグローバル大学(SGU)創成支援のシンポジウム「持続可能な地球社会の構築に貢献する人材育成(Human Resource Development for a Sustainable Global Society)」をおこなった。私が「法政大学が目指すサステイナブル社会の実現」というテーマで基調講演し、本学のグローバル化は、持続可能社会の構築をめざしており、キャンパス環境もそれに基づき、すでにさまざまな教育と研究が展開していることを、実例を示して案内した。

ベトナム・カントー大学の副学長・Le Viet Dung氏が日越の大学間の連携を講演。グローバル企業である曙ブレーキ工業人事部長の前上亮子氏が、企業が求める人材について話して下さり、その上で、グローバル教養学部(GIS)のダイアナ・コー学部長、経営学部の奥西好夫学部長、人間環境学部の前学部長、國則守生教授、小金井キャンパス担当の八名和夫副学長、校友で国分グループの人事総務部長であられる小木曽泰治氏によるパネルディスカッションとなった。グローバル教養学部(GIS)は学部生全員が英語による講義で卒業する学部で、すでに9年目を迎えている。経営学部は英語学位プログラムGlobal Business Program(GBP)を開設し、人間環境学部はSustainability C0-creation Programme(SCOPE)を、情報科学研究科と理工学研究科はInstitute of Integrated Science and Technology(IIST)を開設した。

このシンポジウムでは、二つのことを実感した。ひとつは、すでに日本の企業がグローバル化しているということだ。曙ブレーキ工業は世界各国に会社をもち、社員の70%近くが、世界各国の外国人である。日本人もまた、日本の企業に就職したとしても、多くの国々で働くことになる。もうひとつは、日本の大学は国内の学生だけでなく、アジアを中心に世界中の学生に教育をおこなう責務を、いずれ持つことになるということだ。世界の大学と連携してゆく必要がある。そのためには、英語学位プログラムの本格的な展開は不可避である。

3月16日(木)

朝は全学広報戦略会議があった。法政大学の広報は一般広報と入試広報に分かれ、ブランディング推進チームも独自に動いている。それぞれをつなぐ必要がある。さらに、専門の職員も必要とされており、まだまだ課題が多い。

朝日新聞のオピニオン欄である「耕論」のインタビューがあった。テーマは「大学の自立」だ。軍事研究のことなど、法政大学の自立は注目されている。私はこの問題を、大学の自由はどう実現できるか、という観点から話した。

常務理事会は3年の任期を終え、交替する常務理事、理事たちがおられるので、慰労会をおこなった。多くの職員が慰労会を催されるので、退職なさる理事たちは慰労会のはしごをなさっている。申し訳ないが、やはり慰労したい。初めてのことがとても多く、目的に向かって走り抜けた3年間だった。ほんとうにお疲れ様でした。ご尽力、ありがとうございました。

3月15日(水)

「賛助員の集い」をおこなった。賛助員とは、高額寄付者のことである。とりわけ最近は、学生の給付型奨学金を作って下さる例が多く、学生たちはたいへん助かっている。寄付は私立大学の質を高めていく要であり、日本では私立学校に寄付することで税制上の優遇を受けられる。大学に寄付することで、出身大学の格が上がるのであれば、それは寄付者に戻ってくる。ぜひそのあたりのことを、多くの方にお考えいただきたい。

賛助員の方が亡くなり、代理で来て下さったご家族があった。息子さんは二部のご出身で、現在は父上の跡を継いで会社の経営者である。働きながら二部で学んだ息子が、そのときどれほど成長したか、御母上が熱く語って下さった。「二部の復活」という言葉が私の中に浮かぶ。いや、別組織として復活するのでなくとも、昼夜開講の学部を増やす方法はあるはずだ。「働きながら学ぶことは、良質のインターンシップを同時におこなっているのと同じだ」という息子さんの言葉が印象に残った。オンデマンドを導入すれば、可能かも知れない。

3月14日(火)

今日はHOSEI ONLINE対談の日。経営学部の学生、山本朋果(ともか)さんをお呼びした。学生と対談するのはめったにないことだ。山本さんは、NPO法人ReBitのなかで、LGBT成人式の実施代表者として活躍している。ReBitとは、LGBTの問題を通して、ありのままの自分で大人になれる社会をめざしている。山本さん自身は当事者ではないが、とても面白い話ばかり。ここで言う成人式とは、「成りたい人になる」ことを決意する日、という意味だ。年齢性別不問の式で、LGBTの方々だけでなく、だれでも参加できるらしい。あとの話はお楽しみに。

この日は職員の自己点検懇談会も開催された。グローバル教育センター、学生センターの学生相談・支援室、キャリアセンターの職員がプレゼンテーションをしてくれた。それぞれ、全学をけん引し、相互のつながりの中で目的を達成できる部署であり、充分にその力をもっている。2017年度は教職協働しながら、全学がグローバル化し、学生の困難を支え、就職支援をさらに強くする大学になっていきたい。
法政の付属校に長くお勤めになった飯田亮三校長の退職慰労会が開 催された。二中高から中高に移られ、多くの改革をなさってきた。38年間に及ぶ教員としてのお勤めのなかで、最後の7年間は多大なご苦労がおありになった。しかし飯田先生が身を挺して進めてくださった変革によって、付属校3校の個性とバランスは、とても良いものになった。ご苦労を無にしないよう、付属校の発展にも気持ちを注いでいきたい。

3月11日(土)

6年目の3.11がやってきた。ウェブサイト上にメッセージを掲載した(「東日本大震災から6年目を迎えて」)。この日に開かれたマスコミ・オレンジ会(マスコミで仕事をする卒業生たちの会)も、黙祷で始まった。忘れられない、忘れてはならない日だが、年々、問題のありどころも変化している。今は、避難者へのいじめと差別になんともやりきれない思いがある。

3月10日(金)

経済産業省の「日本再考委員会」が再開された。中心となっている松岡正剛氏の手術と療養のあいだ、中断されていたためである。この日も興味深い議論ができたが、大学のことで言えば、江戸時代の漢学から明治時代の洋学に変わって、追いつけ追い越せばかりやってきた。まだそれをやっている。日本の地で創造する学問と教育の方法は見えている。少しずつでも、中身を変えて行かねばならない。むろん、教育勅語のことを言っているのではない。

3月7日(火)

退職者慰労会が開かれた。毎年このように、退職する教職員たちと語れるのは、とても素敵な時間だ。皆さんだけでなく私も、35年以上におよぶ大学での仕事生活を思い起こし、出会いと別れに思いを馳せる。厳しかった1970年代、80年代の話に笑いも起こる。学校は、多くの人々の記憶が堆積する場所なのである。

天城学長会議の世話人会があった。今年のテーマは2040年の大学を考えることである。そのとき、18歳人口は今の約120万人から80万人にまで減っている。大学は、大きく変わっていくだろう。

3月3日(金)

新年度の4月に、長期ビジョン「HOSEI2030」のウェブサイトがオープンする。その冒頭の動画撮影をおこなった。アクションプランを大学内外に報告し、その進捗を知らせていく。どうぞお楽しみに。
ミュージアム検討委員会がいよいよ今年度の最後を迎えた。新年度に半年間の準備をして、開設まで歩むための新しい組織を立ち上げる。2019年に開設予定だ。

3月2日(木)

学部の自己点検懇談会が開催された。学習成果をどう測定すべきかについて、量的評価と質的評価をどう組み合わせるか、学生に対する約束と社会に対する約束をどう果たすか、真剣な議論だった。現段階では、教員達が実際に実施しているのは、学生の意欲を喚起するための仕組みの工夫である。卒業研究、卒業発表、卒業論文についてさまざまに尽力している。しかしさらに、個々の学生の、そこに至るまでの1年から4年までの階梯を見る必要がある。また、優秀な卒業論文は発見できても、卒業論文を書かない学生や、卒業論文の質の分布を見ることで、全体を引き上げる仕組みが必要だ。まだまだやることがある。