大学においても、教育、研究、事務など各種業務のDX(Digital Transformation)が進む中にあって、ICT(Information and Communication Technology)事業の重要性は高まっています。これからも本学では、教育の高度化や研究支援、業務の効率化をICTを用いて強力に推進していきます。
その一方で、ICTは、進化するスピードが極めて速い特性を持っています。この進化に対応していくことは不可欠ですが近年では、新型コロナ禍、ウクライナ危機による不安定な国際情勢がもたらす経済への影響、インフレによる物価上昇、さらにはICT業界の人件費高騰などを主な原因として、開発・運用コストの増大や納期の長期化が顕著になってきています。加えて、ICT事業は全キャンパス(付属校を含む)に関わる事業であることから、全学的な戦略が必要であり、単にシステムを導入するだけではなく、外的要因や財政状況を考慮したコストマネジメント、業務効率化及び人材育成といった広範囲な視野が必要となります。
本学はこの急激な変化に柔軟に対応し、ICTの活用を滞ることなくさらに加速しなければなりません。このような状況にあってICT基本戦略を制定し、内外に本学の基本方針を宣言することにより、経営層をはじめ全ての教職員がICT基本戦略を共有することは、非常に重要と考えます。
上記のような状況の変化を踏まえ、ICTを用いて学生の学習力や教職員の教育研究力の向上及び業務効率化を一層図ることを目的としています。それを実現するために、以下に示す6つの大項目(教育・学習・生活空間のDX推進、研究環境のDX推進、事務環境のDX推進、DXを支える基盤(ネットワークインフラ等)の整備、ICT戦略を推進する体制と人材育成、持続可能なICT戦略を実現するための投資とマネジメント)の視点から、事業計画を策定していきます。また、付属校を含む本学全体を最適化する共通戦略として位置づけることにより、ICT基本戦略として今後の方針を宣言します。
2024年度から実施し、一期の期間を5年間とします。ただし、第一期については2024年7月から2029年3月末までとします。以降は一期ごとに見直しを図ります。なお、運用途中での見直しも可能とします。
本学全体として最適なICT環境を実現することは、本ICT基本戦略の大きな目標の一つです。そのためには、教育、研究、事務の各領域や部局が連携した変革が必要となります。この目標を本学の全てのステークホルダーが共有し一丸となり、全体として最適なICT環境が構築・運用されている姿を目指します。
このために、教育、研究、事務の各領域のDXの推進とそれを支える基盤環境の整備、ICT基本戦略を推進する組織体制の整備、人材育成、さらに持続可能なICT基本戦略としていくための投資とマネジメントを大項目として、以下の6項目を設定しました。
また、それに基づく具体的な施策は、ICT基本戦略のもとに今後適切な組織や会議体で具体的に検討していきます。
学生本位の学習と教員の教育改善にデジタル技術を積極的に活用し、絶え間ない学びの質の向上を目指す。
(1)学生・教職員の視点に立ったICTによる安全で快適な教育・学習・生活空間の提供
a ICT環境を利用した新しい集いの場としてのキャンパスの実現
b 時間と場所の制約を受けない多様な教育学習を可能とするICT活用空間の提供
c 学生が自ら持ち込むPC(BYOD)及び貸与PC環境に適した教育・学習・生活空間の整備
(2)個別の学習・教育の質を向上させる環境の提供
a 学生個別に最適化された学習環境の提供
b 教員個別に最適化された教育環境の提供
c 学習と教育及び学修の支援を目的とした教学デジタルデータのシステム間連携の実現
(3)学修の質を向上させるシステムの提供
a 学生個別に最適化した学修成果の可視化推進
b カリキュラムレベルのPDCAを支援する教育成果の可視化推進
研究者が十分な実力を発揮し、より付加価値の高い研究成果を創出するために、研究マネジメントに必要な情報のデータベース化やDXによる研究活動の支援を目指す。
(1)研究を支える情報基盤リソースの提供
a オンプレミス、大学共同利用設備、クラウド等の利用の最適化
b 多様な実行環境における適切なソフトウェアのライセンス管理
(2)研究を支えるデータ利用基盤の提供
a 目的に応じた研究データの保存環境の多様化への対応
b 情報基盤の生成するデータの研究・運用への活用
(3)学内外でのシームレスな研究室環境の提供
a 学内外での柔軟な研究室・実験室間ネットワークの実現
(4)コンプライアンス遵守の支援
a 不正防止のためのICT環境整備
b 研究費の効率的かつ適切な管理の実現
教職員が快適に働けるよう、また働き方改革、就業場所の多様化に柔軟に対応していくために、各種システムが連携することにより業務の効率化、利用者の利便性の向上を実現する環境の構築を目指す。
(1)教学組織との連携
a 各学部・研究科の多様なカリキュラムへの対応
(2)学内外のステークホルダーへのサービスの充実
a 各種手続き業務のデジタル化による、業務効率化とセルフサービス化
b 学外とのステークホルダーとも連携した学生サポートに繋がるサービスの連携強化
(3)システム間の安全で効率的な相互接続、データ連携の推進
a システムごとに類似したデータ登録をしない、データ連携と管理の効率化
b システム間の相互接続による、情報セキュリティインシデントの抑止
(4)ICTによる多様な働き方の実現
a 場所に制約されない働き方を可能とするICT利用環境の提供
b クラウドを活用した業務改善の推進
様々なサービスを安定的かつ安全に提供するためのネットワークインフラ環境を目指す。また、HOSEI-CSIRTを中心に、情報セキュリティインシデントへの対応強化を目指す。
(1)安全かつ快適に利用できるネットワークインフラの提供
a 教育研究用ネットワーク及び事務用ネットワーク環境の一元管理を目指した再構築
b 利用者にとって分かりやすい安全で快適な基盤インフラの提供
(2)システム間の安全で効率的な相互接続、データ連携の推進
a システム間の冗長データの削減とデータ連携の効率化
b 学内におけるデータの統一による安全性の向上
c システム間での機能重複や提供するサービスの代替手段の見直し
(3)リスクを考慮したセキュリティ対策の継続的強化
a 情報セキュリティインシデント対応の強化
b 学生ならびに教職員の情報リテラシー向上
(4)体系的な利用者及び権限管理の整備
a 利用権限及び利用可能なICTサービスの明確化
ICT基本戦略を実効あるものにし、継続的に実施できる組織体制と人材育成体制の実現を目指す。
(1)ICT基本戦略策定と推進体制の整備
a ICTを統括する責任者としてCIO(Chief Information Officer)の設置
b ICT基本戦略を推進する組織体制の構築
(2)専門知識を持つICT人材の育成・登用
a ICT基本戦略を推進する人事制度の整備
今後のDXに支障がないよう効果とコストとのバランスを図り、実態に応じた最適なICT投資を目指す。
(1)ICT投資全体の最適化
(2)外的要因による環境変化にも対処できるような柔軟な予算の構築
(3)システム構成を考慮した運用期間の最適化