学校法人法政大学における教育研究活動の基盤となる自律的かつ持続的な運営を図るための基本方針 (内部統制システム整備の方針・理事会運営の方針)

内部統制システム整備の方針・理事会運営の方針の共通要素

学校法人法政大学における教育研究活動の基盤となる自律的かつ持続的な運営を図るための基本方針 (内部統制システム整備の方針・理事会運営の方針)

Ⅰ 【総 則】

1 法政大学の原点と方向性

1880年、自由民権運動が高揚する時代、法政大学は権利の意識にめざめ法律の知識を求める多くの市井の人びとのために、私立法学校(東京法学社)として設立された。その後、人びとの権利を重んじ、多様性を認めあう「自由な学風」と、なにものにもとらわれることなく公正な社会の実現を目指す「進取の気象」とを、育んできた。戦後においても「独立自由な人格の形成」「学問を通じたヒューマニティの昂揚」「日本人の社会生活の向上に寄与する人材の育成」(元総長大内兵衛による「われらの願い」)という指針を定め、その学風を「自由と進歩」として今日に至っている。

昨今、18歳人口減少、高等教育のユニバーサル化、グローバル化など急激な社会環境変化が起こっているのは、周知の事項である。絶えざる変化と流動化の時代にあっても、法政大学は、その原点と方向性を見失わず、教育と研究の理想を創造的に追求し、社会的責任を果たして行くために、教職員、学生、卒業生らとの議論を経て、2016年4月、社会に向けた法政大学の約束を表す法政大学憲章「自由を生き抜く実践知」を制定している。

この困難な時代において、法政大学は、多様性と柔軟性を有し、創造的で革新的な場となる必要がある。そこで、これまで以上に積極的に環境整備を進め、より多様な学生・教職員を受け入れ、それぞれの個性的な成長と活躍の機会を保障できるよう、2016年6月に「法政大学ダイバーシティ宣言」を行い、人権の尊重、多様性の受容、機会の保障を基盤にして、さまざまな国籍と文化的背景を持つ学生、教職員を積極的に受け容れ、「自由を生き抜く実践知」を世界に拡げていくことができるよう、教育と研究を充実させていくことを宣言している。

2 寄附行為第3条に掲げる法政大学の目的

(1)「自由と進歩」の精神と公正な判断力をもって、主体的、自立的かつ創造的に、新しい時代を構築する市民を育てる。 
(2)学問の自由に基づき、真理の探究と「進取の気象」によって、学術の発展に寄与する。
(3)多様化する地球規模の課題を解決し、「持続可能な地球社会の構築」に貢献する。

3 本法人と構成員が共有する考え方

(1)全ての構成員が主体となって、活動を継続的に展開し続けることができる「しくみ」こそ、本法人が備えるべきガバナンスの本義である。
(2)近代高等教育制度の確立以前に設立された法政大学は、まずは学校の設置が先行し、そののち設置法人が整えられた歴史を持つ。その歴史を受けて本学は、学校の長が設置法人の長を務める態勢を初期から採用し、学校法人制度への転換以降は、大学の学長が学校法人の理事長を務める「総長制」により、設立の理念・目的を具現化している。
(3)よって、単に「学校の設置者と設置された学校」という関係ではなく、法人と学校が一体となって、建学以来の「自由な学風」と「進取の気象」の精神を受け継ぎ、地球社会の課題解決に貢献するという使命を果たしていく。

4 本法人のあるべき姿

本法人のあるべき姿は、理事会と大学・付属校、役員と教職員が一体となって、教育研究環境を整備し、社会的な信頼を得て、質の高い教育、多様な学びの機会や支援を提供し、それを通じて成長を実感し、「実践知」を身につけたうえで、社会の様々な課題を解決していける人材を育てていくことにある。そして、このあるべき姿を実現し続けていくために、理事会は、教職員との丁寧なコミュニケーションのもと、教育研究の持続的な展開・発展を支える理事会の運営を中心としたガバナンスの充実と本法人全体が効果的に運営される仕組み(フレームワーク)である内部統制システムの整備とその有効な運用を図っていかなければならない。この双方の仕組みを展開していくことにより、将来にわたって選ばれる大学となり続けていくことを目指す。

Ⅱ 【本法人の各機関の使命】

1 法政大学総長、理事会及び評議員会の使命

寄附行為前文に掲げる本法人の在り方を踏まえ、各機関の使命を次のとおりとする。

(1)法政大学総長(以下「総長」という。)の使命は、本法人の運営全般の包括的責任者、法政大学及び付属校の教学全般の包括的責任者として、構成員とともに大学の目的を実現する、法政大学が社会の信頼にこたえながら、将来にわたって持続的に発展していくための法政大学のあるべき姿を踏まえたビジョンを実現する、構成員と丁寧なコミュニケーションを図り、そのビジョンの実現に向けて行動することである。
(2)理事会の使命は、設置する学校の教育研究が、持続的かつ発展的に、将来にわたって円滑に遂行されるための所与の経営条件や教育研究条件を整備することである。
(3)評議員会の使命は、設置する学校の教育研究が、持続的かつ発展的に、将来にわたって円滑に遂行されるため所与の経営条件や教育研究条件を整備することに対して、議決や意見を述べることにより、適切な牽制機能を果たすことである。

Ⅲ 【理事会の役割と理事の責務】

1 理事会の役割

(1)理事会の職務は、本法人の業務を決し、理事の職務の執行を監督することである。
(2)理事会の役割は次のとおりである。
 a 法政大学と付属校の教育研究が、持続的かつ発展的に、将来にわたって円滑に遂行されるための経営方針、計画、戦略などの方策を策定(=意思決定)する。
 b 理事会が策定した経営方針、計画、戦略などの進捗状況や総長、代表業務執行理事、業務執行理事の職務執行について監督する。
(3)法令及び寄附行為に基づく理事会の運営等については、「寄附行為施行細則」において定める。

2 理事会直轄委員会等

理事会のもとに直轄委員会として、ガバナンス委員会、コンプライアンス・リスク管理委員会を置く。

(1)ガバナンス委員会は、総長、法人本部担当理事、卒業生理事、監事及び外部の有識者・専門家等で構成し、本法人におけるガバナンス体制の在り方、ガバナンス・コードへの取り組み状況の点検、理事会や業務執行理事会、理事会直轄委員会等の実効性評価の実施、理事会運営の基本方針の運用の点検や改善について審議し、理事会に提言又は報告する。
(2)コンプライアンス・リスク管理委員会は、総長、コンプライアンス・リスク管理担当理事、法人本部担当理事、総長室付関連会社統括事務室担当理事、学術支援本部担当理事、卒業生理事1名、総務部長、監査室長、外部の有識者・専門家で構成し、本法人の内部統制システムの運用状況とその有効性を検証、個々の制度の情報集約も含めて法人全体の包括的な対応、リスクマネジメントの運用・点検、コンプライアンス違反事案の調査を処理、その再発防止策の検討を行い、理事会に提言又は報告する。

3 理事の責務

(1)理事は、理事会を構成し、法令及び寄附行為で定めるところにより、職務を執行する。
(2)理事は、寄附行為第17条第2項に掲げる次の責務を果たす。
 a 理事会構成員として、理事会の使命を果たすこと
 b 法政大学総長が掲げるビジョンを実現すること
 c 他の理事の業務執行を監督すること
(3)理事は、法令及び寄附行為を遵守し、本法人のために忠実にその職務を行わなければならない。
(4)理事は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。理事の職を退いた後も同様とする。
 

4 経営倫理綱領

「法政大学倫理綱領」を定め、役員、評議員及び教職員が、寄附行為第3条に掲げる目的(法政大学の目的)の実現を目指すとともに、教育研究機関としての社会的・公共的使命を踏まえ、時代の要請に応え得る公正かつ活力ある大学運営を行っていく。

Ⅳ 【適切かつ迅速な業務執行】

1 業務執行権の委任

(1)理事会は、法令及び寄附行為の規定により理事会において決定しなければならない事項その他本法人の業務に関する重要事項以外の決定であって、理事会があらかじめ定めた事項については、総長に委任する。
(2)総長は、理事会から委任された事項の業務の決定について、代表業務執行理事、業務執行理事又は職員へ委任することができる。

2 業務執行理事会

(1)業務執行理事会は、理事会から総長に業務執行が委任された事項のうち重要事項について、総長が決定するにあたり、業務執行の適切性を担保するための合議による審議機関として位置付ける。
(2)業務執行理事会の役割は次のとおりである。
 a 総長に業務執行が委任された事項のうち重要事項について、総長が決定するにあたり予め審議する。
 b 理事会が決定した経営方針、計画、戦略などの方策に基づき、その具体化の検討や進捗管理を行う。
 c 理事会、評議員会に上程する案件について予め審議する。
 d 業務執行状況、業務執行予定を逐次報告・共有し、経営課題について方向性の確認や意見交換を行う。
 e 理事会から報告を求められた事項について、協議し、理事会に報告する。
 f 大学運営に関する重要事項を検討する。
 g 日常的なリスク対応に関する事項について、総長、代表業務執行理事、業務執行理事等が決定するにあたり予め審議する。
 h その他、理事会、総長が必要であると判断する事項について検討する。
(3)業務執行理事会の運営等については、「寄附行為施行細則」において定める。

3 理事の業務執行の分担

(1)総長は、代表業務執行理事及び業務執行理事の業務執行の分担(担当組織及び業務、以下同じ)を決定する。
(2)理事会は、総長が決定した代表業務執行理事及び業務執行理事の担当組織及び業務について、これを理事会の決議により承認する。
(3)上記(1)及び(2)により、総長並びに各組織又は業務を所掌する代表業務執行理事及び業務執行理事(以下「担当理事」という。)が各組織又は業務を所掌する。

4 担当理事の職務

総長及び担当理事は、所掌する業務について必要な意思決定を行うとともに、統括本部長以下の所属員を指揮・監督する。

5 統括本部長

(1)担当理事を補佐するとともに、担当理事の命を受けて、所管する本部の事務を統括する統括本部長をおく。
(2)統括本部長は、部長の中から、理事会の決議により選任する。
(3)統括本部長は、理事会、総長及び担当理事の統括の下に職務の執行を行い、担当理事とともに経営の責任者の一翼を担うことを自覚し、他の規範となるよう常に研鑽を重ねて誠実かつ忠実に職務を行う。
(4)統括本部長は、所管本部の所属員に対し、理事会、総長及び担当理事の決定事項、方針、命令及び指示等を伝達する。
(5)統括本部長は、所管本部の方針等を策定し、理事会、総長、担当理事に対し、所管本部の業務の課題解決に向けて戦略的な提言や施策の立案を行う。
(6)統括本部長は、本法人の諸課題を整理・分析し、事務職員を代表する立場から、理事会、総長及び担当理事に積極的に意見具申を行うよう努める。

6 担当理事と統括本部長の関係

(1)理事会、総長及び担当理事は、統括本部長の職務の執行を監督し、その責任を負う。
(2)担当理事は、統括本部長の業務執行状況について、逐次報告を求めるものとする。
(3)理事会及び総長は、統括本部長の業務執行状況について、必要に応じて報告を求めるものとする。

Ⅴ 【補則】

1 内部統制システム整備の方針、理事会運営の方針、両方針の共通要素の改訂

(1)内部統制システム整備の方針については、コンプライアンス・リスク管理委員会において、内部統制システムの運用状況とその有効性を検証し、それを踏まえて、この方針に見直しの必要性が生じた場合は、理事会の決議により改める。
(2)理事会運営の方針については、ガバナンス委員会において、理事会や業務執行理事会、理事会直轄委員会等の実効性評価の実施、理事会運営の基本方針の運用を検証し、それを踏まえて、この方針に見直しの必要性が生じた場合は、理事会の決議により改める。
(3)両方針の共通要素については、コンプライアンス・リスク管理委員会及びガバナンス委員会において、内部統制システム整備の方針及び理事会運営の方針の運用状況とその有効性を検証し、それを踏まえて、この方針に見直しの必要性が生じた場合は、理事会の決議により改める。