戦前から学術界や社会に大きな影響を与えてきた本学の江戸文化研究は、2000年代に入ってから文系と理系の二つの研究機関が推進してきました。2018年1月には、文部科学省私立大学研究ブランディング事業の一環として両者の連携拠点となる「江戸東京研究センター(EToS)」を設置。近世以前の江戸と近代以降の東京の文化的、空間的な接続に着目し、持続可能な地球社会を構築する方法や理論を導き出す研究活動を展開し、大きな成果を挙げています。
今回、その5年間の取り組みの集大成として、「〈人・場所・物語〉〝Intangible〞なもので継承する江戸東京のアイデンティティ」をテーマにEToS特別展を開催します。この特別展は、HOSEIミュージアム初となる4カ所同時展示で、文理融合を掲げるEToSらしく、文系に多い資料を中心とした展示と、理系(特に建築系)に多い模型などの立体物展示を織り交ぜた構成となっています。
Intangibleとは、「無形」を意味する言葉です。大火、天災、戦争、開発によって建造物などの「有形物」は失われても、江戸東京のアイデンティティは、地形や人の営み、つながりといった「無形物」に残され、今に引き継がれています。この特別展では、いくつもの時代の層が積み重なった上に今が、そして未来があることを意識してもらえるよう、そうした「無形物」の記録や再現に焦点を当てています。
第1会場の九段北校舎1階ミュージアム・コアでは、数年しか存在しなかった水辺の能舞台と江戸初期の芝居町の復元CGや模型など、江戸東京の「水都」の側面にフォーカス。第2会場のボアソナード・タワー14 階博物館展示室には、近世〜近代の人の営みや暮らしを知ることのできる、名所や年中行事を描いた絵画が展示されます。
HOSEIミュージアムの市ケ谷サテライトである第3会場のボアソナード・タワー26階ホワイエには、近代から現代の江戸東京のアイデンティティを物語る長屋、旅館、銭湯の図面や模型などが並び、同じく市ケ谷サテライトの第4会場の外濠校舎6階展示スペースには、人のつながりを残す/生む住宅地や商店街の再生・再開発プランが展示されます。
市ケ谷キャンパス界隈を歩きながら4会場を回れば、昔も今も、そして将来も、都市の主役は「人」であると感じることでしょう。
江戸東京研究センター特別展示
<人・場所・物語>-“Intangible”なもので継承する 江戸東京のアイデンティティ
場所:市ケ谷キャンパス九段北校舎1階ほか
期間:9月7日~ 10月3日(予定)一部会場は9月30日まで
詳細:HOSEIミュージアムウェブサイト
新型コロナウイルス感染症の影響等により、日程や内容は変更になる可能性があります。
詳しくは上記ウェブサイトをご確認ください。
取材協力:江戸東京研究センター(EToS)、HOSEIミュージアム事務室
(初出:広報誌『法政』2021年8・9月号)
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