2017年度

Vol.104 人びとの祈りを伝える、鳥の文学や玩具

2018年06月12日

2017年度

2017年11月中旬から2018年1月末にかけて市ケ谷キャンパス ボアソナード・タワー14階の博物館展示室で企画展「鳥・再発見」が開催されました。本学資格課程では毎年企画展を催しており、今回は2017年の干支にちなんだ鳥に関する資料がそろいました。

文学作品のコーナーには、古典文学『万葉集』や『鶴の恩返し』などの近世以降の昔話の絵本、漫画『火の鳥』などが並びました。その中の一つが、法政大学図書館所蔵の『The Tongue Cut Sparrow』(「舌切雀」の英語版)です。はがきサイズの小ぶりな本ながら、鮮やかな色彩で描かれた、楽しそうに踊る雀の挿絵が印象的です。これは、特殊な加工で和紙にしわを作り、織物のちりめんのような手触りにした「ちりめん本」で、日本文化を欧米へ紹介するために1885(明治18)年に刊行されたものです。

ドート・ロミエル訳述、鮮齋永濯画のちりめん本『The Tongue Cut Sparrow』

ドート・ロミエル訳述、鮮齋永濯画のちりめん本『The Tongue Cut Sparrow』

絵画においても、鳥は景色に溶け込み、季節を代表するモチーフとされます。『松渓花鳥畫譜(しょうけいかちょうがふ)』の「山櫻鴟鵂(みみずく)之図」には、春になると木の洞(うろ)で産卵と子育てをするみみずくと、山桜が描かれています。これは、花鳥山水図を得意とした日本画家の山田松渓が描いたものを、福井月斎(げっさい)が縮写してまとめたものです。

この図譜は、本学所有のルボン文庫の資料です。ミシェル・ルボンは、本学の前身、和仏法律学校の教頭ボアソナードの後任者として本学の発展に尽力した人物で、その所蔵コレクション1046点が1989年に本学に寄贈されました。

郷土玩具のコーナーには、博物館学芸員課程の履修者が収集または選定した資料が展示されました。カールした幾重もの羽根を特徴とするのが、「お鷹ぽっぽ」に代表される笹野一刀彫の玩具です。山形県米沢市の笹野地区に古くから伝わる工芸品で、江戸後期に米沢藩第九代藩主上杉鷹山が、農民の副業として奨励したといわれています。鶏、ふくろう、尾長鳥などのさまざまな鳥がモチーフに使われ、サルキリまたはチヂレという独特の刃物で削り上げられます。

『松渓花鳥畫譜』の「山櫻鴟鵂之図」

『松渓花鳥畫譜』の「山櫻鴟鵂之図」

信仰のコーナーの鳥居と酉の市についての展示は、実習生がフィールドワークで収集した写真や資料をもとに制作しました。
企画展のテーマは毎年変わりますが、普段は目にする機会のない本学所蔵資料にも触れられます。次回以降も学内外の多くの方に足を運んでいただければ何よりです。

  • 笹野一刀彫の玩具、左側2点の鷹が「お鷹ぽっぽ」

  • ポスターやキャプションの作成、展示の実務には、博物館学芸員課程の32人の実習生が携わった

取材協力:資格課程実習準備室

取材協力:資格課程実習準備室

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