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【2024年入学式 来賓祝辞】QRコードの生みの親 株式会社デンソーウェーブ 原昌宏氏

  • 2024年04月08日
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2024年4月3日(水)に開催した2024年入学式において、QRコードの開発者である株式会社デンソーウェーブ主席技師、愛知県幸田町ものづくり研究センター技術顧問の原昌宏氏(工学部電気工学科卒)に、新入生に向けて祝辞をいただきました。当日の祝辞の内容は、こちらにも掲載いたします。ぜひご覧ください。

皆様、お早うございます。ただいまご紹介に賜りましたデンソーウェーブの原です。新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。このよき日に晴れて入学式を迎えられた新入生の皆様はもとより、ご家族、ご親族の皆様、そして法政大学教職員の皆様におかれましても、心からお祝い申し上げます。法政大学はさまざまな分野でご活躍されています人達を沢山輩出し、多様な価値観を持った人々と交流して自由に学べる大学です。ですから、皆さんは勉学だけでなく色々な事にチャレンジして自分自身を成長させて世界に羽ばたく人になってもらいたいと思います。

私は1994年にQRコードを開発しました。今では世界中の人が使い、社会のインフラになるまでに成長させることができました。ここまで普及できた要因としましては工業社会から情報社会に変わることをいち早く捉え、情報化時代に使う人に新しい価値や便利で快適な社会をQRコードで創り出したからです。私がQRコードを開発して便利で快適な社会を作りたいと思ったのも法政大学で学んだからです。法政大学は建学以来培ってきた「自由と進歩」や「進取の気象」の精神があります。この精神はこれまでの慣習にとらわれることなく、積極的に新しい物事に取り組んで社会的な価値を実現する精神です。私はこの精神を学び、その精神を実践してご活躍されている先輩達から力を貰うことでQRコードを開発し、ここまで成長させる事ができました。ですから、本当に法政大学で学んでよかったと思います。

皆さんは私の子供の頃に比べると色々な物があり便利で楽しい時代を過ごして羨やましく思います。しかし、これからは更なる技術革新やAIが進化し、そして人の価値観がさらに多様化して社会は激しく変わり、これから先は予想できない時代となります。この時代で私達は生きていかなければなりません。皆さんが社会の中心的存在でご活躍されています20年後、30年後はどうなっているでしょうか。想像できますでしょうか?

逆に私がQRコードを開発した30年前はどうだったでしょうか?その当時はインターネットもなく、もちろんスマートフォンもありませんでした。パソコンはありましたが、価格は50万円ぐらいしましたが性能が低く、文章を作成するワープロ機能か簡単なゲームをするぐらいしか使えませんでした。しかし、この30年でコンピュータの性能は劇的に進化しました。計算能力、記憶容量、通信速度がそれぞれ約100万倍になったと言われています。これにより、AI技術も発展し実用化できるようになりました。皆さんは100万倍と言ってもピンとこないかもしれませんね。例えば、言葉で話しかけると、音楽を再生したり、欲しい情報を音声で瞬時に教えてくれたりするAI機能を搭載したスマートスピーカがあります。皆さんの中には使ったことのある人もいらっしゃると思いますが、このスマートスピーカを30年前のコンピュータの性能で作成したら、話しかけて、音声で答が返ってくるまでおよそ20日掛かると言われています。

これからは、技術革新のスピードは更に速くなり、特にAIは20年後ぐらいには人間の知能を超えるかもしれないと言われています。そうなると、これまでの常識が通用しなくなり、未来を予測する事は不可能になってきます。そこで、これからは未来を予測するのでなく、未来を自分達の手で作り、自分の価値観で社会を変えていく事が充実した人生を送る上で必要不可欠となります。

これから皆さんは大学生活が始まりますが、大学生活はまた社会に出る準備期間でもあります。この期間に社会人として、自分に合った価値観を見極めて人生のビジョンを考えてみて下さい。これからは厳しい時代となりますが、変化が激しい時代だからこそ、チャンスもたくさん訪れます。このチャンスを掴むかどうかは未来に向かう皆さんの人生のビジョン次第です。そこで、これからの時代にチャンスを掴む上で重要となるキーワードを社会人の先輩として3つお伝えしたいと思います。

まず1つ目は主体性を持って学んで下さい。これからは不確実性で何が起こるかが分からず、先が見通せないVUCA時代と言われています。VUCAとは、Volatility変動性、Uncertainty不確実性、Complexity複雑性、Ambiguity曖昧性の頭文字をとった言葉です。VUCA時代は、過去の経験ややり方が役に立たないので、目標を自ら設定して、実現のために色々な知識や情報を獲得し、この中から考え抜いて最善の実現方法を見つける主体性の学びが必須となります。皆さんのこれまでの学びは教科書に沿った授業で先生の教えから学び、与えられた問題の解き方を教わる受動的な学びが殆どだったと思います。しかし、大学は研究機関ですので、専門知識を習得して、それをベースに自ら問題を提起し、そのことに関して徹底的に調査や議論をして、より良い解決策を考える主体性の学びが求められます。そして、これからの先の見通せない時代では、皆さん一人一人が人生のビジョンを決め自ら目標を設定し、それを実現するためにどんな専門知識やスキルが必要か考えて学ぶ主体的の学びが重要になります。

2つ目は創造的思考能力を伸ばして下さい。AIや技術の発達により、今まで人間がやっていた仕事の約50%がAIやロボットに変わる時代になると言われています。また、最近はエネルギー問題、地球温暖化による気候変動、食料問題など世界レベルの大きな社会問題を幾つも抱えています。そこで、これからは人間がAIの不得意な領域である創造的思考能力を発揮してAIと力を合わせてこれらの社会問題を解決していかなければならなくなります。創造的思考能力とはこれまでの枠組みにとらわれず、自由で独創的な発想で思考し、新しい物を生み出す能力です。これまでの学校の知識を頭に詰め込み、その知識で与えられた問題に答を出す思考パターンとは違います。創造的思考能力を伸ばすには、正解が1つでないと考え幅広い知識と多様な情報を融合させ、色々な視点で考えたり、多様な価値観で物事を捉えたりして、これまでの概念に捕らわれず柔軟に思考する事です。その為には、座学で知識や情報を得るだけではダメです。地域活動やサークルなどを体験し、そこで知り合った人々と交流して多様な価値観に触れることも必要となります。特に、世界レベルの社会問題を解決するには日本と違った価値観を持つ外国人との交流が重要となります。また価値観の違う友人を多く持つことで、幅広い視点で物事を考えられるようになり、これからの人生の糧にもなります。ですから、皆さんも大学生活では、色々な事を体験し、沢山の人達と交流して多様な価値観を養って創造的思考力を伸ばして下さい。

3つ目は高い志を持って下さい。皆さんの中には志とビジョンを同じように思っている人がいるかもしれませんが、志には2つの意味を持っています。1つは、人生の目標を実現する為の信念であり、2つ目は世のため、人のためという奉仕の精神です。自分のありたい姿のビジョンに対し、志は多くの人のありたい姿を実現する思いです。つまり志を持つ事は自分が社会に何らかの新しい価値を生み出す事です。これからの先を見通せない厳しい時代だからこそ幾つもの困難を乗り越える為にも志という信念を持つことが必要になります。志は出来るだけ高く持って下さい。例えば、低い山に登って見る風景よりも、高い山に登って眺める風景の方が回りもよく見えます。つまり、高い志を持って活動する事で今まで見えなかったものが見えてくるので幅広い視点で物事が考えられ、人生の可能性も広がります。ただ高い志を持つと実現も困難になりますが、実現に向けて努力を積重ねる事で人間的にも成長します。また、情熱を持って高い志に取り組んでいる人の所には共感する人が集まり、その人達が協力してくれます。志が高いほど多くの協力が得られ実現も可能となります。皆さんも志について考えて頂き、世界レベルの社会問題を解決し、人類の皆が幸福になるような高い志を持って下さい。

最後に私は昨年、QRコード開発とその成果で日本学士院の恩賜賞を頂き、天皇皇后両陛下の前で賞状を頂き、その後でQRコードについてご説明をする機会を貰いました。この賞は明治43年から続く歴史のある日本で一番権威がある学術賞です。これまでの前例が無く異例の一般企業のエンジニアである私が選ばれました。皆さんも是非高い志を持ち、進取の気象で不可能と思われるような大きい事にチャレンジして欲しいと思います。若い皆さんには活力があり、柔軟に発想できる創造力も持っています。ただ、困難な事にチャレンジすると失敗は付き物ですが、失敗は若い皆さんには成長の源となります。是非失敗を恐れず、チャレンジ精神で高い志の実現に向けて頑張って下さい。皆さんが法政大学で自分自身の未来を切り開き、実り多きものに成ることをお祈りまして私の挨拶とさせて頂きます。

本日は誠におめでとうございます。

(以上)

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