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卒業生インタビュー:デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 戦略コンサルティング部門 執行役員 棚橋 智さん

  • 2021年06月08日
  • 卒業生
  • 広報誌「法政」
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プロフィール

棚橋 智(Tanahashi Satoru)さん

1984年茨城県つくば市生まれ。2003年経営学部経営戦略学科に入学。在学中の2005年に起業、中国子会社の代表を経験。2012年、デロイト トーマツ コンサルティング入社。2020年6月、戦略コンサルティング部門の執行役員に就任。

戦略と起業家精神で同志と共に日本の未来を変えたい

世界有数規模の経営コンサルティング会社の執行役員に30代で就任した棚橋 智さん。大学時代に起業し、東京と上海でベンチャー経営に挑んできた経験を糧に、大企業でイノベーションを起こすという難題に挑んでいます。

インタビューは、リモートワーク中の棚橋氏の自宅にて実施しました。

企業、産業、社会をより良い方向に変えていく裏方

自動車、電機、IT分野などの大企業に対して、新規事業戦略や長期ビジョンの策定などの支援をしています。
デロイト トーマツ グループ(デロイト)は、世界に30万人以上の従業員を抱え、経営コンサルティングや監査サービスを通じて、世界経済の発展に寄り添ってきました。

私のチームが世界的な自動車メーカーから依頼をいただき、今話題のSDGsやサスティナビリティ社会の到来を見越して、6年前に発表した2050年のビジョンが、メディアから今なお「なぜこれほど先進的なものを当時に出せたのか」と評価をいただくことがあります。それを参考に自社のビジョンを刷新する会社が出てくるなど、未来の産業や社会をより良い方向に変えていく礎として関われることが、この仕事のやりがいです。

また、この変化の激しい時代、経営コンサルティング会社も変革できなければ未来がありません。従業員数が数十万人の規模になると、都市のような規模ですから、変革は並大抵のことではありません。しかし、デロイトが変革し続けられれば、変わることが難しい大企業にも、「私たちは変われる」というエールを送れる。そういう期待を持ち仕事に取り組んでいます。

青木さんは、通勤の電車の中で毎朝、ニュース番組を聴いているという。

海外企業との提携交渉で海外に赴くことも。サンフランシスコの現地オフィスの前で。

起業を志し、実現させた大学時代

高校時代、理系での進学に疑問を感じていたときに、大学発ベンチャーの新聞記事を読んで起業に興味が湧き、法政の経営学部に入学しました。経営の基礎知識を身に付けるために中小企業診断士試験の勉強をし、2年次に1次試験に合格。その後、ビジネスプランコンテストに精を出し、同じく起業を志す他大学の学生と知り合い、寝食を忘れて起業のアイデアを語り合いました。

3年次に仲間4人と会社を設立して「タダコピ※1」事業をスタート。深夜バスで全国を飛び回り営業活動をする合間に就職活動もしたのですが、当時憧れていた企業の最終面接に落ちてしまいました。まだ軌道に乗っていなかったベンチャーを卒業後も継続したのは、能力や自信があったからではなく、内定がなかったからなんです。

上海に設立した子会社の社長時代、メンバーとの夕食会(左から3人目が棚橋さん)。

上海に設立した子会社の社長時代、メンバーとの夕食会(左から3人目が棚橋さん)。

ベンチャー経営の経験がグローバル企業で花開く

卒業後2年でタダコピは全国展開を成し遂げて、米国・中国に進出し、私は中国子会社の社長を務めました(赴任中は、第2外国語で学んだ中国語が多少なりとも役に立ちました)。しかし、思い描いていたような成長を遂げることができず、自分の経営力不足を思い知らされました。そこで、一回り大きな経営者を目指そうと決心し、デロイト トーマツ コンサルティングに転職したのです。

コピー取りなどから仕事を覚え、トリリンガルも珍しくない優秀な同僚に劣等感を感じながらも、誰よりも仕事に没頭してきました。ベンチャー経営の経験を生かして難易度が高いプロジェクトで成功を重ね、管理職を経て2020年に経営職に登用されました。

本業に加えて、経営論の執筆、経営大学院での講義、スタートアップの支援などを通じ、同志創りをしていますが、経営学部・小川孔輔教授のゼミ仲間や他大学の「戦友」とは、本音で駄目出しや言い合いができ、大学時代のつながりが私の財産となっています。

多様性のある法政大学生はダイヤの原石

日本はこの30年間でIMD世界競争力ランキングでは1位から30位に低下し、一人当たりGDPはOECDで最下位グループ。「もはや先進国ではない」という言葉を耳にします。しかし再興の可能性は十分あると思います。その鍵は、戦略と起業家精神の融合です。

起業家精神とは、志を持ち、うまくいかない環境そのものを楽しみ、同志を集め、しつこくトライし続ける精神です。戦略とは、戦いを略はぶくことです。
周りの当たり前に流されずに、目的を達成するための具体的な作戦です。派閥に属さずに総理大臣となった菅義偉首相、コロナ対策と経済政策の両立に果敢に挑む鈴木直道北海道知事など、法政の卒業生には戦略の名手が少なくありません。勉強に遊びにスポーツに熱中してきた多様性のある人材が集う法政大学という環境は、起業家精神と戦略を身に付ける有数の「ダイヤ工場」だと思っています。

海外大生が選ぶ就職人気企業ランキングでは1位※2を獲得するなど、当社や経営コンサルティング業界の人気は高まっていますが、法政の出身者は多くはありません。合格率で見ると、国内外の諸大学と良い勝負なのですが、受験者数が1桁少ないのです。採用面接官をやると、母校の受験者数の少なさに悔しくなります。

就職活動では自信を失うことも少なくないと思います。「戦略と起業家精神」のことを思い出し、周りに流されずにしつこく行こう!!と、次のトライに立ち向かっていきましょう。

※1 タダコピ:コピー用紙の裏面に学生向けの広告を掲載し、学生が無料でコピーを利用できるサービス。現在も一緒に起業したメンバーが事業を展開中。
※2 株式会社ディスコ 2019年4月発表

 

(初出:広報誌『法政』2021年4月号)