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見知らぬ土地で、学び暮らしてみたら新しい自分に出会えた ~国内留学参加者による座談会~【後編】

  • 2022年02月14日
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法政大学では、コロナ禍により教育活動において様々な影響があるなか、学生の多様な学び体験の機会を創出するために、異なる地域や他の大学で学修できる環境を整備し、修得した単位を認定する国内留学制度を設け、他大学との交流を促進しています。これまでに沖縄大学、名桜大学(沖縄県)と北海学園大学(北海道。ただし、法学部のみの交流)とで学生派遣や受け入れを実施してきましたが、2021年度からは、新たに関西大学との間で国内留学プログラムが始動。その第1期生となる参加学生3人を囲んで、法政大学教職員との座談会を開催しました。

座談会参加者

上段左から、兒玉真太郎さん、阿波加(あわか)夏輝さん、吉村太我さん、下段左から、廣瀬克哉総長、小秋元段副学長、菊池克仁学務部長、鷹觜(たかのはし)夕子学務課長

生活してみて分かる関東と関西の感覚の違い

菊池部長 留学先では、どのような生活を送られていましたか。

吉村さん 最初はアルバイトをしていましたが、会計士を目指しているので、今は簿記の勉強に専念しています。ただ、せっかく東京で暮らしているので、気分転換も兼ねて、自転車で東京の街めぐりをしています。いま住んでいる神楽坂からは新宿・渋谷・上野・秋葉原と、どこへでもサイクリング気分で出掛けられます。

兒玉さん 留学中は、千里ニュータウンにある公団住宅(団地)の部屋を借りて過ごしていました。そもそも団地が好きで、この機会こそ住もうと思って探しました。日本で最初にできた大規模なニュータウンで、その後日本各地のニュータウン開発にも影響を与えた場所だと聞いていたので、実際に肌で感じてみたかったのです。私が住んでいた建物は、1970年に開催された日本万国博覧会のパビリオンで働く人の宿舎として建てられたそうで、単身で短期間暮らすようなスタイルに適しているコンパクトな間取りで、感慨深く過ごしました。

阿波加さん 私は学生寮に入りました。同年代の人たちと共同生活をしながら、自分の部屋でプライベートも確保されているという生活は、私の性格に合っていたようです。自炊もしたのですが、よくお世話になったのは関西大学内の食堂の「100円朝食」と「100円夕食」です。日替わりでメニューのバラエティも豊富だし、とても助かりました。

廣瀬総長 関西出身で、両方の地で暮らした経験から振り返ると、大阪と東京とではコミュニケーションの取り方や地域性がかなり違うと思っています。それは、ある種の異文化体験じゃないかと思うのですけど、皆さんは何か感じましたか。

吉村さん コミュニケーションの取り方は全く違うと感じましたね。会話を楽しもうと途中でボケてみても、思うような反応が返ってこなかったり、ツッコミのつもりで言った言葉が、相手を困らせてしまったり。関西弁もよくからかわれます(笑)。

兒玉さん 大阪の街は、人と人との距離感が近いように感じましたね。ビル街の中にある市ケ谷キャンパスと比べると、関西大学のキャンパスは敷地も広く、ゆったりとしていて。キャンパス内を近隣住人の方が普通に散歩しているなど、地域と大学が自然と溶け込んでいる様子が印象的でした。

吉村さん 僕は逆に、法政大学の市ケ谷キャンパスが面白いと思いました。関西大学は、学部ごとに建物が分かれていて、しかもそれぞれ離れているので、キャンパス内ですれ違うのは同じ学部の人ばかりです。キャンパス内に複数の学部が混在している市ケ谷キャンパスでは、歩いているだけでも他の学部の人の会話が耳に入ってくる。留学生やグローバル教養学部もあるから外国人の学生とも交流しやすい。そこが新鮮で魅力だと思いましたね。

小秋元副学長 吉村さんは、東京で暮らしてみて、何か感じたことはありますか。

吉村さん 実は、自分のペースを見失ってしまい、東京にいるのがしんどくなってしまったことがあります。ともかく一度離れようと仙台に一人旅をして、そこで落ち着いて考えることで、自分が生き急いでいたと振り返ることができました。

廣瀬総長 関西にいた頃に比べると、仙台も身近に感じられたのではないですか。

吉村さん はい。東京から新幹線で2時間ほど、大阪より近いのだと驚きました。留学前は大阪も日本第2の都市だし、特に違うこともないだろうと考えていたのですが、実際に生活してみると、生活のリズムも人の感覚も何もかも、想像をはるかに越えていましたね。

言葉の壁のない国内だからこその安心感

鷹觜課長 国内留学に参加して、この制度は学生の皆さんにとって、どのような価値があったと感じていますか。

阿波加さん 自分は何が好きで、何が苦手なのか、改めて自分自身を知る、いい機会になりました。さらに、一生仲良くしていきたいと思える友人と出会えたことが一番の財産です。東京に戻る時には「今後何か始めたいと思った時も、お互いに声を掛け合おうね」と約束しました。これから自分が何をやろうとも、頼りにできる存在がいることがとても心強いです。

吉村さん 留学というと海外をイメージすると思うのですが、英語にあまり自信がない僕のように、言葉の壁を感じている人には挑戦しづらい。国内なら、少なくとも言葉で苦労することはないので、学びたいことや自分のやりたいことに集中して時間を割ける。それこそが国内留学の良さだと感じました。

兒玉さん 間違いなく、今後の生き方に影響する出来事でした。就職や将来のことで漠然と思い描いていた願望がありながらも、何をすべきか分からずにいましたが、留学先の先生が客観的な立場で、それでいて、もっと自分の好奇心を活かした方向に、とアドバイスをくれました。それが後押しになって、色々な決断をした機会になりました。春になったら、九州大学の大学院に進学しますが、その決断ができたのも、国内留学があったからこそだと思っています。

菊池部長 国内留学に参加するにあたって、皆さんのご家族はどのような反応でしたか。皆さん初めての一人暮らしだったそうですが、家族に対する見方が変わったようなことはありますか。

兒玉さん 地元から離れて暮らしてみたいという思いは理解してくれて、留学する時も「良い機会だろうから行ってこい」と送り出してくれました。その頃から、親との話し方や関わり方はそれまでよりフラットになったように思います。適度な距離感で話をしてくれるようになった。その分頑張らねばという気持ちがあります。

阿波加さん 私は一人っ子なので、親は少し心配だったようです。でも、行く先が国内で、行こうと思えば行き来できるので、両親にとっては安心できる距離だったようです。

吉村さん 僕も一人っ子ですが、親からは早く独り立ちするようと言われていたので、今回の留学も応援してくれました。ただ、実際に一人暮らしをしてみたら、家族と一緒に暮らすありがたみ、親への感謝を改めて感じました。

国内留学生の輪を今後も大きく広げていきたい

鷹觜課長 最後に、大学側から一言ずつお願いします。

菊池部長 今日皆さんのお話を聞いて。あらためて大学として国内留学を推進する意義を感じました。国内の留学でも多くの新しい発見があり、貴重な経験ができる。自分のやりたいことを実現するための良い機会となると思いました。

小秋元副学長 皆さんが、きちんと目的意識を持って大学生活を過ごしていることに、感銘を受けました。いくつもの目標を掲げながら、それぞれを実現していることは素晴らしいと思います。よい話を今日は伺いました。ありがとうございます。

廣瀬総長 私立大学の傾向として、関西から首都圏に進学する学生、首都圏から関西に進学する学生が少なくなっていると聞きます。そんな「距離の遠さ」を解消する意味で、関西大学と法政大学で学生が交流して学ぶことに、大きな価値があると、改めて確信しました。これから2期3期と参加者が広がっていくように、大学としても支援していきたいと思います。

鷹觜課長 法政大学では、これまで沖縄大学、名桜大学、また北海学園大学との学生交流を実現してきました。その動きと並行して、2017年9月に関西大学とは「教育や研究・学生交流などで、結びつきを強化する連携協力協定」を締結し、相互に学生を派遣し合えるような制度化を働き掛けてきました。コロナ禍だけに慎重な姿勢で進めていましたが、ようやく関西大学との国内留学プログラムが動き出して喜んでいます。皆さんの意見を踏まえ、これからさらに国内留学の内容を充実させられるように努めていきたいと思います。本日は、ありがとうございました。

一同 ありがとうございました。

市ケ谷キャンパス ボアソナード・タワー26階にて