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卒業生インタビュー:合同会社Asante Sana代表社員 河野 理恵さん

  • 2023年03月28日
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プロフィール

河野 理恵(Kawano Rie)さん

1987年神奈川県生まれ。法政大学女子高等学校からキャリアデザイン学部に進学。2010年3月に卒業後、介護職、アルバイトなどを経て、大手不動産会社に勤務。2018年2月に夫の起業先であるケニアへ移住し、12月にアパレルブランド「RAHA KENYA(ラハ・ケニア)」を立ち上げる。2022年に『踏み出す一歩は小さくていい』を出版。

自分をさらけ出し、小さい成長を重ねていく それが私らしい生き方

就職活動で「60連敗」という人生初の挫折を味わい、自分を見失ってしまった河野理恵さん。中途半端なプライドを捨て、思い切って一歩を踏み出してアパレルブランドを立ち上げた経験から、「誰でも自分の人生を変えることができる」と言います。

カラフルで個性的な服を一歩踏み出すきっかけに

ケニアで、アフリカ布のアパレルブランド「RAHA KENYA(ラハ・ケニア)」の代表を務めています。アパレル経験も経営知識もゼロでしたが、以前の自分なら絶対に選ばない、個性の強いアフリカ布で仕立てた服を着た時、変わりたいという私のスイッチが入ったのです。

ブランド名の「ラハ」はスワヒリ語の「Be happy」。アフリカのエネルギーが詰まったカラフルな服や小物を、一歩踏み出すきっかけにしてほしいという思いを込めています。

日本とケニアでは「普通」の基準が必ずしも一致しないため、最初のうちはテーラーさんに何度もやり直しをお願いしました。日本の普通を強制したくはないけれど、アフリカ製は品質が低いと思われたくない。そういう気持ちをきちんと言葉にして伝えたことで、テーラーさんとの信頼関係が深まり、お互いに成長できたと感じています。

一歩踏み出すきっかけをより多くの方に提供したいと思い、安心してケニア滞在を楽しんでいただけるゲストハウスを昨年末にオープンし、好評の現地プログラムも種類を増やしました。
アパレル事業には時間と費用という課題が付き物ですが、事業の柱を増やすことで、妥協のないラハ・ケニアらしい商品を提供していきたいと思います。

個性的な色・柄のアフリカ布。膨大な数の中から、河野さんが「一歩踏み出すきっかけ」にふさわしいものを選んでいる

個性的な色・柄のアフリカ布。膨大な数の中から、河野さんが「一歩踏み出すきっかけ」にふさわしいものを選んでいる

就職活動の挫折からキャリア迷子に

大学にキャリアデザイン学部が開設されたのは、私が高校1年生の時でした。未知の学部とあって同級生が敬遠する中、経営・文化・教育について幅広く学べるところに魅力を感じ、迷わずその学部に進学。自由な校風が私にはとても合い、会社のトップの話を聞ける授業や企業インターンシップなどもあって、キャリアデザイン学部を選んで本当によかったと思いました。

学生時代に力を入れたのは、アルバイトです。ものづくりに興味があって、1日単位の工場アルバイトにもよく行きました。パチンコ台の組み立てを経験したことも。作業を覚えるコツが身に付いた一方で、仕事=人から与えられた作業をこなせばいいという勘違いをしてしまったのも事実です。

漠然と大企業のキャリアウーマンになりたいというイメージだけで臨んだ就職活動は、リーマンショックの影響による求人数減少もあって60社連続で選考落ち。すっかり自信をなくし、最終的に就いた介護職も1年で辞めてしまうなど、「キャリア迷子」の状態に陥ってしまいました。

卒業4年目に派遣社員からの正規採用で念願の「丸の内のOL」になれましたが、喜べたのは1年目だけ。そこでようやく、世間体ばかり気にしている、空っぽな自分に気付いたのです。

現地プログラムの一つ、学生・社会人向けの1週間のインターンシップでは、製作から販売までを体験できる(次回は8月開催予定)

現地プログラムの一つ、学生・社会人向けの1週間のインターンシップでは、製作から販売までを体験できる(次回は8月開催予定)

今できることを探し、自分を飾らずにさらけ出す

夫が海外で起業したためケニアに移住し、会社や世間から切り離されて、初めて自分の存在意義を意識するようになりました。自信を持てず、仕事も続かなかった私が大きく変われたのは、考え方と周囲への接し方を180度切り替えたからです。

まず、「でも」「だって」とできない(やらない)理由を口にするのをやめ、今できることを探すようにしました。どんなに小さいことでも、うまくいくと成長を感じられるもの。今も、日々小さな成長をかみしめることが、私の原動力となっています。

そして、変なプライドで自分を強く見せるのをやめ、弱い自分をさらけ出すようにしました。その方が、周囲が教えてくれる、協力してくれると分かったからです。経営者に向いているとは思いませんが、周囲を巻き込んで思いを形にしていける立場も悪くない、そう考えられるようになりました。

自分の人生を変えられるのは自分だけ

「就活落ちこぼれ」の一人として、これから社会へ出る後輩の皆さんに伝えたいことがあります。日本では、無意識のうちに人のために、あるいは周囲がどう思うかを考えがちですが、ぜひ自分と向き合って、自分の気持ちに素直に行動してください。歩んでいるのは自分の人生であり、自分の人生を変えられるのは自分だけです。

自分のやりたいことが分からないという人は、「何をやりたいのか」「何ができるのか」と自分に問いかけ続けることから始めてみてはどうでしょう。そういう意識を持ち続けていれば、同じ行動をしても、感じること、考えることが変わってくるはずです。

また、失敗が恐くて一歩を踏み出せないという声もよく聞きますが、踏み出した先にあるのは、失敗ではなく進歩だと考えてください。「あの方法ではうまくいかない」と分かることだって収穫です。踏み出すたびに、経験も情報量も増えていきます。

世の中も人も変化していくもの。私も自分に問いかけ続け、常に考えをアップデートし、不安なときは原点に立ち返って、これからも自分らしく生きていきたいと思います。

 

(初出:広報誌『法政』2023年3月号)