お知らせ

【Message】時代の被害者と「分かりづらさ」

  • 2022年12月15日
お知らせ

社会学部社会学科3年
本橋 侑英 さん(Motohashi Yukihide)


Messageでは、「自由を生き抜く実践知」を体現している学生の声を届けます。
本橋さんは、2022年5月に公益財団法人日本財団ボランティアセンター主催のウクライナ避難民支援日本人学生ボランティア派遣に参加しました。

戦争の歴史や創作に触れる中で、戦争は時代や時流によって起きていると考えるようになりました。ロシアによるウクライナ侵攻では、アフガニスタンやシリアと同じように、戦線近くで暮らす人々や偶然その時従軍していたロシア兵などが時代の被害者になっていると思い、悲しい気持ちになりました。その中で日本財団がボランティアを募っていると聞き、少しでも役に立ちたいと思って応募しました。

ウクライナとの国境に近い、ポーランドのプシェミシルにある避難所で、掃除やゴミ出し、物資の整理・配給などの手伝いをしました。

避難所では、民間人の戦争災害を目の当たりにしました。いつ祖国に戻れるのかも分からない中、ストレスの溜まる集団生活。「普通」の人たちの日常と未来が、どれほど破壊されたかを知りました。

活動の中で、特に印象に残っているのは、子どもたちのことです。いろいろなウクライナ語を教えてくれる良い子ばかりでしたが、接する中で「私はこの子たちに何もできない」という無力感も覚えました。

今回のボランティアは、なぜ学生を対象にしているのか、ずっと考えていました。今では、現地で感じたあの無力感をばねに、将来より多くの問題に取り組むことを期待されているのだと思うようになりました。

現地ではさまざまなことを感じましたが、特筆したいのは困っている人の「分かりづらさ」です。避難所にいた人々は誰もが大きな苦悩を抱えているはずですが、一見しただけでは分かりません。「戦争の避難所」として想起されるのは悲劇的な場かもしれませんが、現場は淡々としています。しかし、そこに悲しみがないわけではありません。深い悲しみも苦労も、見れば分かるような単純なものではないのです。
「分かりづらい」苦しみに気付き、分かりづらい価値や意味を発見できる者として、今回の経験を社会に還元していきたいと思います。

ポーランドのプシェミシル避難所前にて