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【2020年度自由を生き抜く実践知大賞】大賞「コロナ禍で孤立する留学生のオンライン学習支援」紹介

  • 2021年03月15日
  • イベント・行事
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受賞名

大賞

受賞取組

コロナ禍で孤立する留学生のオンライン学習支援

実践主体

「多文化教育」科目の有志32名(学生の自主活動)

概要・成果

背景と概要

本実践は、コロナ禍の2020年の春学期に「多文化教育」科目を履修していた学生たちの中の有志32名が行った留学生支援のボランティア活動である(単位外の活動)。新型コロナウイルス感染拡大により、本学で学ぶ交換留学生、短期の私費留学生の多くは、外出自粛の中で通学ができず孤独と不安を抱えながら、慣れないオンライン授業に参加し懸命に日本語を学ぼうと努力していた。また彼らの多くが、日本語でのニュースや情報を理解することに苦労し、情報弱者として心理的にも物理的にも孤立していた。

私たちは多文化教育の授業の中で、そうした留学生の状況を知り、有志の学生32名が自主的に毎週一対一のオンライン(Zoom)による交流や日本語学習支援活動を行った。支援した留学生は、17か国から来た32名である(交換留学生、英語学位生、短期私費留学生など)。参加のほぼ全員(留学生・私たちどちらも)がZoom初心者で、また一度も会って話したことがなく、さらに留学生の日本語レベルもわからなかったため、お互いに不安や心配を抱えながらのスタートであった。しかし、支援には様々な成果があった。

成果

全くの初対面だったため、最初は適度な「心のソーシャルディスタンス」をとりながらの活動のスタートだった。しかし、回数を重ねる中で信頼関係が生まれ、留学生には大学・日本とつながっている実感・安心感をもってもらうことができた。また、支援には「やさしい日本語」の使用を意識し、「はっきり・最後まで・短く・分けて・整理して・大胆に」というポイントを心掛け、彼らの留学目的である日本語力の向上を目指し支援したことで、日本語による学習支援の質が高まり、相互理解が深まった。

また、翻訳機に頼らず、自分の言葉で伝えること、伝えようとする気持ちの意義や大切さ、母語として使っている日本語の再発見、コロナ禍の各国のリアルな様子や対応・文化の相違など、私たちにとっても多くの気付きや情報を得ることができた。さらに本活動により、テクノロジーを使った多文化交流・学習支援の可能性を体得し、様々な理由で来日できない海外の学生達との交流や学習支援に今後も生かしていきたいと考えている。

このコロナ禍において、私たちが行った留学生交流・学習支援ボランティア活動の根底にあったものは、国連で採択されたSDGsの「人や国の不平等をなくそう、パートナーシップで目標を達成しよう、質の高い教育をみんなに」という目標である。本学の「実践知」は、理想の社会の実現にむけて、学生ひとり一人が「今、ここで何ができるのか」を考え、主体的に行動することである。私たちがこの非常事態に行った行動は、ほんの小さな種まきである。しかし、今回まいた種が力強い「実践知」という大きな実となるように今後もつなげていきたいと考える。

総長からの選定理由コメント

「多文化教育」科目の履修生有志による、留学生支援である。17か国32名の留学生たちの日本語力向上を支援することで、支援した学生たち自身が多くのことに気づいた。学生たちも急なオンライン授業で困難を抱えていたと思うが、そのなかで、さらに多くの困難と孤立を抱えた留学生の日常に共感し支援を実施したことは、「地域から世界まで、あらゆる立場の人びとへの共感に基づく健全な批判精神をもち」という大学憲章の理念にふさわしい行動である。この実践はまさにコロナ禍においてこそ成し得たことで、その実践は多様な人々が協力して「地球社会の課題解決に貢献する」ことを示し、まさにその行動において新たな実践知を獲得したことと思う。実践知によって、孤立しがちな「コロナ禍」を「結びつく」機会にしたことこの取り組みは、大賞にふさわしい。

受賞の感想

この度は「コロナ禍における留学生のオンライン交流・学習支援」の活動を名誉ある「実践知大賞」に選出していただき誠にありがとうございます。
春学期「多文化教育」授業の中で、新型コロナウイルス感染拡大により通学できない本学留学生のことを知り、履修生有志が自主的に授業外で毎週一対一のZOOMでの交流・日本語支援活動を始め、秋学期からは履修者全員の活動(授業の一環)となりました。当初、本大賞へのエントリー目的が「コロナ禍での国際交流・学習支援の新たな実例を紹介したい」ということでしたので、大賞に選出いただいた瞬間、発表者3人で思わず「えっ!?」と顔を見合わせ、まさに僥倖としか言えませんでした。すぐに担当の先生からお祝いメッセージがメールで届き、発表準備に携わった留学生を含めたメンバーには受賞連絡をしました。また後日授業の折、交流者全員に受賞報告し喜び合うと共にパートナーの留学生にも受賞の報告を依頼しました。
私達の活動は、コロナ禍という非常事態でのほんの小さな「種まき」ですが、その「種」には多文化交流や学習支援の様々な可能性という生命力が宿っています。その「種」が芽を出し、葉をつけ力強い「実践知」という実となるよう今後もつなげていきたいと考えております。

多文化教育履修者代表
キャリアデザイン学部2年
前田 美幸