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デジタル社会のマーケティングの基礎理論(経営学部市場経営学科 西川 英彦 教授)

  • 2020年10月19日
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2019年度に受賞・表彰を受けた教員の研究や受賞内容を紹介します。

西川英彦教授は、「日本マーケティング本大賞2019 大賞」(日本マーケティング学会)を受賞しました。

  • 共編著書『1からのデジタル・マーケティング』(澁谷 覚〔編著〕、碩学舎、2019年)

受賞書籍

受賞した書籍は、デジタル・マーケティングをはじめて学ぶ方、あるいは1から学び直したい方のための共編著のテキストです。デジタル・マーケティングを学ぶための書籍は、世の中にたくさん存在しています。しかし、これらの多くは、技術的ノウハウやツールの使い方などを解説する実践書であったり、専門用語が多くて難しかったり、あるいは内容に偏りがあったりと、デジタル・マーケティングの基礎知識となる「理論」や「概念」を体系的にわかりやすく学べる標準的なテキストとはいえません。このことの背景には、デジタル・マーケティングを取り巻く市場の変化が速いことや、関連する理論や概念の変化が速いこと、そして、そのために標準的なテキストを作成することが難しいことなどの書き手側の事情もあります。このような事情にもかかわらず、本書はあえてデジタル・マーケティングの標準的なテキストを作成することを目指して執筆と編集を行いました。

そのため本書では、いくつかの工夫をしています。まず第1に、従来からの伝統的マーケティングの枠組みを使って、伝統的マーケティングを説明しつつ、デジタル・マーケティングの理論や概念を解説しています。そのことで、デジタル・マーケティングの理論や概念を体系的に理解しやすくなるというだけでなく、伝統的マーケティングとの違いが理解できます。このような方法を用いた理由は、今日のデジタル社会においても伝統的マーケティングとデジタル・マーケティングは両方とも必要だからであり、そして、そのために両方を体系的に関連付けて理解することがきわめて重要だからでもあります。

第2に、理論や概念の変化が激しい中でも、変わらずに重要であり続けている、マーケティングの基礎として学ぶべき理論や概念を説明しています。そのために、多くのデジタル・マーケティング関連のテキストや研究を参考にしつつ、マーケティングの各分野の優秀な研究者を執筆陣に招き、何回もの議論を重ねて、基礎となる理論や概念を選別しました。

第3に、Amazonや食べログ、メルカリ、無印良品など身近な企業のケースを通して、デジタル・マーケティングの概念や理論を説明しています。執筆陣と重ねた議論の中で、それぞれの概念や理論を理解する上で代表となる事例を選別し、メインケースとして詳しく取り上げ関連づけることで、皆さんの理解を手助けしています。

最後に、理論や概念をできるだけわかりやすい言葉で、そして事例を使いながら具体的に説明しています。専門用語を使う際にも、はじめて学ぶ方が理解できるように、その意味の説明を行うようにしています。

共編著書『1からのデジタル・マーケティング』

受賞内容

日本マーケティング本大賞とは、日本マーケティング学会がマーケティング理論や実践の普及のため、1年間に日本で出版されたマーケティングに関する書籍の中から、同学会員の投票により、お勧めできる書籍を選出し表彰するものです。本書は、2019年度の「日本マーケティング本大賞2019大賞」を受賞いたしました。その推薦理由として、学会サイトに、以下の説明が掲載されています。

「『デジタル・マーケティングの基礎を学べる有益な1冊』

理論と事例をセットにしたわかりやすい構成によって変化の速いデジタル・マーケティングのマネジメントを網羅的に提示した、実務的な示唆を多分に含む良書である。

新しい事例が豊富に扱われているとともに用語の解説が的確であり、流行りものとしてではなく基礎的なアプローチから読み解かれている。デジタル・マーケティングを体系的なテキストの形でまとめるという困難に初めて向き合っただけではなく、従来のマーケティングとの接続にも目配りされており、伝統的なマーケティングの理解が深まる点も評価できる。デジタル・マーケティング初学者にとって良質の入門書であるだけではなく、マーケティングに関わる者にとって必携の1冊といえる。」

受賞の感想と今後の展望

多くの優れたマーケティング関連の書籍が発行される中で、研究書ではなく、テキストが、学会の大賞を受賞したということは画期的かと思います。デジタル社会が進展するにも関わらず標準テキストが不在という空白地帯の問題がある中で、デジタル・マーケティングの理論や概念の体系化を挑戦し出版できたことが高く評価されたものかと思います。本書を投票により推薦してくださった日本マーケティング学会の学会員の皆さま、そして、本書の出版にご尽力いただいた学習院大学の澁谷覚教授をはじめとした共著者の皆さま、碩学舎ならびに中央経済社の皆さまにも、改めて感謝いたします。

今後の展望としては、本書により社会への貢献ができれば幸いです。本書を読まれた学生や企業の皆さんが、デジタル・マーケティングの基礎知識を身につけ、身近な現象と結びつけつつ深く理解することを通じて、ますます進展するデジタル社会で皆さんが活躍されることを期待しています。さらに、研究や教育においても、本書を契機に、デジタル・マーケティングの基礎理論がより精緻化されていくことを切に望みます。

  • 表彰式の様子。写真左より、栗木契氏(碩学舎)、澁谷覚氏(共編著者)、西川英彦教授、古川一郎氏(日本マーケティング学会会長)。場所は法政大学薩埵ホール。

法政大学経営学部市場経営学科

西川 英彦 教授(Nishikawa Hidehiko)

1985年株式会社ワールド入社、2001年ムジ・ネット株式会社取締役、2004年神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程修了(博士(商学))、2005年立命館大学経営学部准(助)教授、2008年同教授を経て、2010年4月より法政大学経営学部兼大学院経営学研究科教授(現職)。専攻は、マーケティング論、ユーザー・イノベーション論。詳細 https://nlab.ws.hosei.ac.jp/

  • 所属・役職は、記事掲載時点の情報です。