お知らせ

生物に学ぶメカニズムデザイン(デザイン工学部システムデザイン学科 山田 泰之 准教授)

  • 2020年09月24日
お知らせ

2019年度に受賞・表彰を受けた教員の研究や受賞内容を紹介します。

山田泰之准教授は、「SI2019優秀講演賞(計測自動制御学会システムインテグレーション部門)」(計測自動制御学会)を受賞しました。

  • 講演「蠕動運動型捏和装置を用いた固体推進薬連続製造に向けた検討内容物粘性の検知」
  • 講演「蠕動運動型搬送装置のための直接加水方式による効率的な搬送 ー土砂垂直搬送と自動加水制御系の提案ー」

デザイン工学部システムデザイン学科の山田泰之です。私はモノとモノの動きの関係を物理的に構成するメカニズム(機構)のデザインに着目して、問題解決を行う方法を研究しています。昨今は、AIやビッグデータなどソフトウェアのテクノロジーが取り沙汰されることが多いですが、私はハードウェア、とりわけメカニズムを研究開発することでシステム全体の抜本的な問題解決を目指しています。研究対象はハイヒールから宇宙用ロケットまで様々です。

蠕動運動とロボット?

ちょっと変な話をしますが、前日暴飲暴食しても、翌日には消化されて出てきちゃいますよね? これは、当たり前のようで、とてもすごい生物の機能によるものです。人間をはじめとする生物の腸管は蠕動運動という波を送って物体を混合したり搬送する機能を備えています。一方で、一般的な工場では、様々な原料や製品の混合や搬送は、スクリューやピストンなどで行われています。これらの方法では、ハチミツや餡子、パンの生地やチーズなどの高粘度な物体を連続的に運ぶことは技術的に極めて難しいのが現状です。そこで、生物の腸管のすごい能力である蠕動運動を、空気で動く柔らかいロボットであるソフトロボットで再現して、工場などでも効率的に運ぶことができないか研究開発しています。これにより、ハチミツの数倍ネバネバした物体も連続的に運んだり混ぜたりできます。

受賞内容

今回受賞した研究は、この蠕動運動型装置を用いて宇宙ロケット用の燃料を捏ねて運んで製造する装置と、建築現場の土砂を運ぶ装置に適応できないか検討した研究成果です。ねばねばが混ぜられない、運べない問題は、産業界で様々にありますが、まずはロケットなどのよりハードルの高い課題にチャレンジしています。

研究室紹介:メカニズムデザイン研究室

様々な現代社会の課題を解決するには、高度な技術をただ適応する、乱用するのではなく、本当に必要な、環境や社会が持続可能な方法とは何かをデザインする視点が不可欠と考えています。当研究室ではメカニズムのデザインを重要視して、様々な問題解決の研究開発を進めています。人間活動の多くは感覚に占められており、人や環境とのインタラクションで成り立っています。このインタラクションを物理的に媒介するハードウェア、その動きを作り出すメカニズムに着目し、その効果を最大限に活用することを目指しています。そのために、あらゆるメカニズムの「形・構造・動き」の関係性の探求と、人間や周辺環境を含めたシステム全体の調和、多様性やロバスト性を生み出すメカニズムを研究開発しています。

メカニズムデザインとコロナ時代のオンライン教育

システムデザイン学科の特徴として、プロジェクトベース、演習授業が豊富な点があります。これにより、机上の空論ではなく、知識を実践して実際に使える、身に着けることができると考えているからです。しかし、コロナ感染症対策により、オンラインでの授業をメインに位置づけざるを得ない状況となりました。私が研究対象とするメカニズムは物理的なモノを扱うため、基礎科目にしろ、応用科目にせよ、全てオンライン化することが中々難しい点があります。やはりそのメカニズムに関する実物を見たこと触ったことがあるほうが、より理解度が高まると考えているからです。そこで、テクノロジとデザインを融合するメカニズムに関する資料動画を用いた教育にチャレンジしています(【リンク】YouTube MD Lab. at Hosei Univ.)。本来なら授業でデモンストレーションする内容を、動画として配信することで、学生の学習機会を増やそうとチャレンジしています。

メカニズム研究開発は必要と確信していますが、今後そのようなハードウェアの研究開発・教育をどれだけオンラインやテレワークで進められるかが、今後の当該分野の発展のキーとなると考えています。

  • 蠕動運動ポンプの写真と図。外側の黒い部分が空気圧人工筋肉で、ここに圧縮空気を制御して送り込むことで、腸管と同じ蠕動運動を発生させて、様々な材料の混合と搬送を実現します。

法政大学デザイン工学部システムデザイン学科

山田 泰之 准教授(Yamada Yasuyuki)

慶應義塾大学大学院理工学研究科博士後期課程修了、博士(工学)。日本学術振興会特別研究員、日産自動車、中央大学理工学部助教等を経て、現職。2018年インペリアルカレッジロンドン訪問助教。専門は、デザインエンジニアリング、スマートメカニズム、ソフトロボティクス。受賞歴・活動歴:日本機械学会ロボメカ部門 ROBOMECH表彰や、疲れにくいハイヒールYaCHAIKAのパリコレクションへの提供など。

  • 所属・役職は、記事掲載時点の情報です。