お知らせ

「建築トークイン上越」が日本建築学会教育賞(教育貢献)を受賞するまで(デザイン工学部建築学科 渡邉 眞理 教授)

  • 2020年09月17日
お知らせ

2019年度に受賞・表彰を受けた教員の研究や受賞内容を紹介します。

渡邉眞理教授は、「2019年日本建築学会教育賞(教育貢献)」(日本建築学会)を受賞しました。

  • 業績「大学連携による教育プログラム「建築トークイン上越」の企画および実践」

撮影:青木大

<大学連携による教育プログラム「建築トークイン上越」の企画および実践>が2019年建築学会教育賞(教育貢献)を受賞しました。「建築トークイン上越」は2009年から「建築トークイン上越実行委員会」、「岩室の会・岩室塾実行委員会」および「宿泊体験交流施設月影の郷」の3団体の連携により、これまで11年間にわたって継続的に運営されてきました。

建築トークイン上越の特徴

「建築トークイン上越」は新潟県上越市で毎年開催される大学生によるワークショップですが、このプログラムには「首都圏や地元新潟の複数の大学の共同企画であること」「特定の大学だけでなく、学生個人の参加も可能なオープンエンドなプログラムであること」「10年という長期にわたるプログラムであり、今後も継続が予定されていること」「学生中心の企画であり、ワークショップの企画準備まとめなどのプロセスからも学びを得ていること」といった特徴があります。

岩室の会と月影小学校が「トークイン」を生んだ

「建築トークイン上越」が開始された過程の冒頭には、建築家・大阪芸術大学名誉教授の故高橋靗一氏と、美術評論家で群馬県立近代美術館の館長を長く務めた故中山公男氏が主唱してスタートした「岩室の会」があります。「岩室の会」の上越市浦川原区における地域活動がきっかけとなり、浦川原地区の中心施設だった月影小学校が廃校になった折に、旧浦川原村から月影小学校の廃校後の利活用を検討する依頼が横浜国立大学北山研究室(当時)、日本女子大学篠原研究室、早稲田大学古谷研究室、法政大学渡邉研究室(研究室名五十音順)になされました。

「建築トークイン上越」の宿泊は「宿泊体験交流施設月影の郷」で行なわれています。この施設は廃校になった月影小学校を上記の4大学連携チームが地元住民とのワークショップを通じて企画立案した利活用計画に従って改修設計したものであり、改修後も大学連携チームが継続的に施設改修に関与しているため、宿泊場所自体が地域再生の可能性を体験出来る場となっています。「月影の郷」を拠点に、『学生たちが中心となって都市や文化を考え議論する場をもとう』という趣旨から複数の大学研究室が、これまでにない教育プログラムを意識しつつ、立ち上げた教育プログラムが「建築トークイン上越」です。

  • 「建築トークイン上越2009」フライヤー

  • 「建築トークイン上越2009」フライヤー

「トークイン」の会期はわずか2日間だが、準備は1年がかり、年度末にはプロジェクトブックも刊行

本プログラムは、多数の大学研究室が参加する二泊三日の短期集中型のワークショップを中心としたものですが、継続的な取り組みであるため、毎年、連携する大学間で研究室の上級生から下級生へ知識や経験が引き継がれていくこと、4月のキックオフ会議から準備ワークショップやまとめの報告書(プロジェクトブック)の企画編集発行などを通じて、約1年間にわたり、里山や地方都市の現状や課題などをより深く知り、思考するきっかけとなっています。

大学連携の場、建築トークイン上越実行委員会

このように「建築トークイン上越」は大学院生による自律的な運営が特徴ですが、それがこれまで長期に渡って維持管理できているのは「建築トークイン上越実行委員会」に所属する日本大学今村研究室(代表今村雅樹)、長岡造形大学川口研究室(代表川口とし子)、工学院大学木下研究室(代表木下庸子)、東京理科大学坂牛研究室(代表坂牛卓)、MTA(代表高橋真)、東北芸術工科大学西澤研究室(代表西澤高男)、早稲田大学古谷研究室(代表古谷誠章)、日本女子大学宮研究室(代表宮晶子)、東京大学安原研究室(代表安原幹)、芝浦工業大学山代研究室(代表山代悟)、上越教育大学吉田研究室(代表吉田昌幸)、法政大学渡邉研究室(代表渡邉眞理)(研究室名五十音順)の大学連携の賜物です。「建築トークイン上越」は大学連携の継続的な実践という点でもきわめて実験的かつ先進的な教育プログラムであると自負しておりますが、今後も地元の上越市との連携を強めながら、地域社会との連携を達成することを目標に努力していきたいと考えております。今年はコロナ禍という困難の中、トークインをオンラインで開催する準備が進行しています。

「建築トークイン上越実行委員会」集合写真

法政大学デザイン工学部建築学科

渡邉 眞理 教授(Watanabe Makoto)

群馬県前橋市に生まれる。1977年京都大学大学院修了。1979年ハーバード大学デザイン学部大学院修了。磯崎新アトリエを経て、設計組織ADHを設立。1996年法政大学工学部教授に就任。現在、法政大学デザイン工学部教授、設計組織ADH共同代表。

【主な作品】NT(1999年)、日本基督教団ユーカリが丘教会+光の子児童センター(2000年)、兵庫県西播磨総合庁舎(2002年)、白石市営鷹巣第2住宅シルバーハウジング(2003年)、アパートメンツ東雲 キャナルコート (workstationと協働、2005年)、真壁伝承館(2011年)、道の駅保田小学校(nasca, architecture WORKSHOP, Spatial Design studioと協働、2015年)ほか

【主な著作】『孤の集住体』(住まいの図書館出版局・木下庸子との共著・1998年)、『集合住宅をユニットから考える』(新建築社・木下庸子との共著・2006年)、『コラージュ・シティ』(鹿島出版会・翻訳1992年、改訳2009年)

【受賞歴】JIA新人賞(2000年)、建築学会作品選奨(2001年)、第17回日本建築士会連合会賞優秀賞(2002年)、JIA環境建築賞優秀賞(2005年)、グッドデザイン賞金賞(2005年)、第47回BCS賞特別賞(2006年)、日本建築学会賞(作品)(2012年)、日本建築家協会賞(2013年)ほか

  • 所属・役職は、記事掲載時点の情報です。