2016年度に制定した「法政大学憲章」では,「多様な視点と先見性」を重視することを明示し,「ダイバーシティ宣言」により,多様な学生・教職員を受け入れ,それぞれの個性的な成長と活躍の機会を保障するための取り組みを進めることを宣言しました。これらを受け,本学においてダイバーシティを推進する委員会を組織し,活動しています。
ダイバーシティ推進委員会では,2017年10月27日(金)に3キャンパスを遠隔会議システムで接続し,「人材の多様性に大学はどう対応すべきか」というテーマで教職員を対象としたシンポジウムを開催しました(参加者:3キャンパス合計約110名)。ダイバーシティ推進の第一歩として「働き方改革」,「LGBT/SOGIへの対応」をテーマに取り上げ,それぞれの課題に詳しい有識者をお招きし,教職員のダイバーシティに関する理解を深めることを目的とした講演でした。
田中総長の「まずは教職員の人権意識改革から始め,それを根付かせることで,教育の現場と働く現場の両輪がまわっていくようなダイバーシティを目指していきたい」という言葉を皮切りに,武石惠美子ダイバーシティ推進委員会委員長より,民間企業でのダイバーシティの取り組みと比較しながら,本学の現状について調査データを用いてご紹介いただきました。
続いて,テーマ別問題提起①として,NPO法人Fathering Japan代表理事 安藤哲也様より,「教職員の働き方改革~イクボスのすすめ~」というタイトルでご講演いただきました。「イクボス」というと,昨今よく耳にするようになった父親の育児参加を表す「イクメン」という言葉が頭に浮かび「育児」がイメージされがちですが,イクボスの「育」は,部下を育てる,企業組織を育てる,社会を育てることの表現であり,イクボスは職場で共に働く部下・スタッフの仕事と生活の両立を考え,その人のキャリアと人生を応援しながら,組織の業績も結果を出しつつ,自らも仕事と生活を楽しむことができる上司のことを指す,と定義されていました。組織の好循環を目指すことが,個人のモチベーションや家庭環境にも良い循環を与えるということを,多角的な視点からご説明いただきました。
最後に,テーマ別問題提起②として,筑波大学ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンター ダイバーシティ部門の河野禎之様より,「大学におけるダイバーシティ推進の取組事例:LGBT/SOGIへの対応」についてお話していただきました。筑波大学は,大学で初めて「LGBT等に関する筑波大学の基本理念と対応ガイドライン」を平成29年3月に策定し,公表しました。講演では,セクシュアル・マイノリティの用語や概念の紹介や,実際に,筑波大学の現場で行っている支援の取組紹介がありました。河野様が講演の最後に述べられていた『たとえ学生のニーズが見えなくても,大学側が対応を用意していることを発信することで,セクシュアル・マイノリティであることを口外していない学生は,救われるのです』という言葉に,筑波大学の問題として顕在化していなくてもできることを行い,それを明示するという取組姿勢が,表れていました。
今回,いずれの登壇者からも,従来からの固定概念を変える「意識改革」が必要であるということが,共通した投げかけでした。人の集合体である大学には,支援や相談の場を求めている学生・教職員が多くいる現状で,組織として活性化し好循環を目指していく中で何ができるのか―。引き続き,ダイバーシティ推進委員会をはじめ,全学で取り組むべき課題であることが多くの教職員の共通認識になったシンポジウムとなりました。
昨年「ダイバーシティ宣言」を行った田中優子総長より開会挨拶がありました。
武石惠美子キャリアデザイン学部長・ダイバーシティ推進委員会委員長より、法政大学の現状と課題をテーマにお話がありました
安藤哲也氏からは、「イクボス」があらゆる生活の好循環を生むという説明がありました
河野禎之助教からは、他大学に先駆けた取組事例の説明がありました
教職員からは積極的に質問が飛び交い、ダイバーシティに対する関心の高さが窺えます