お知らせ

(市ケ谷キャンパス)2022年度秋学期職員向け防災訓練を実施しました

  • 2022年12月19日
  • イベント・行事
お知らせ

2022年11月25日、市ケ谷キャンパスでは入職5年目までの職員を対象に防災訓練を実施しました。

市ケ谷キャンパスは千代田区との協定により、大規模災害時において帰宅困難となった千代田区民・在勤者等を一時的に受け入れることとなっています。そこで今回の訓練では、万が一避難施設の運営に携わることになった場合に備え、実際に本学での帰宅困難者受入施設である体育館を想定した「帰宅困難者支援施設運営ゲーム(KUG)」(※)として知られる図上訓練を体験し、事前の心構えや咄嗟の対応、運営上の課題点を発見することを目的として実施しました。

なお、本訓練実施にあたり、2022年度秋学期にILAC科目「課題解決型フィールドワーク for SDGs」(法学部:伊藤マモル教授)を受講した学生、伊藤教授、学生センターにも多大なご協力をいただきました。中でも、8名の学生スタッフがファシリテイタ―として司会進行から、KUGの説明、グループワークでの進行役として大活躍いただきました。授業で学んだことを職員に教える「実践知教育」に繋がるとともに、学生目線と職員目線の違いといった、新たな「気づき」も発見できた貴重な経験ができたのではないかと思います。

また、本学職員だけではなく、富士見二丁目町会の方や、千代田区コンソーシアムとの連携から近隣大学の皆様にも多数ご参加いただきました。実際に大規模災害が起きた時にはお互いの協力関係が不可欠ですので、今回問題意識を共有できたことは大変有意義でありました。

※:大規模地震発生後における事業所内滞留対応を短時間かつ少人数で体験できる図上訓練ツールとして、東京大学廣井研究室とSOMPOリスケアマネジメントの共同で開発されたもの。

 日   時

2022年11月25日(金)12:40~17:20

 場   所 ボアソナード・タワー26階スカイホール
 参 加 者 入職1~5年目職員43名・他大学7名・富士見2丁目町会1名・学生スタッフ(SA)8名

内 容

  1. ガイダンス
    (1)基調講演:宮崎賢哉氏(災害支援・防災教育コーディネイター)
    (2)KUG体験から得た危機対策意識の共有(人間環境学部2年 楮原さん)
    本イベントの目的として、「危機対策意識を身に付けてもらうことである」としたうえで、「危機対策意識とは疑問を持つことだと思う。今回のKUG体験後に残るモヤモヤ感(疑問)を大切にしてください」との発表がありました。
  2. 施設見学(防災倉庫・総合体育館)
  3. KUG事前学習
  4. KUG実践
    8つのグループに分かれ、それぞれにSAも加わりKUGを進めていきました。途中、学生センターの小林課長から矢継ぎ早にスピード感を持った状況付与がなされ、参加者は困惑しながらも緊迫感をもってチームで話し合いながら状況に対応していました。
  5. 振り返り・意見交換
    それぞれのグループから、①イベントカードへの対応結果、②受入基本方針の改善案について発表がありました。また、参加者の中から、保健師や管理栄養士といった専門家からの示唆もありました。これらを通して、受入施設の運営側の難しさや本学の抱える課題点が共有できました。
    加えて、2名のSA(人間環境学部2年海老澤さん・人間環境学部1年米山さん)より、「授業でのKUG体験からの学び」として、「受入担当者がなすべき十か条」についての発表がありました。また、法政大学が今すぐなすべき事として、①物資の見直し、②防災力を高める講義の提供について提言がなされました。
  6. 総長からの総評

    熊本地震を経験した熊本大学の教職員の体験談として2つのお話をいただきました。
    ①大きな地震の後は余震が続く。熊本地震のように後の方が大きな地震になることも経験した。 地震後しばらくの間は建物の中に居ることに恐怖心をもつ人も多く、熊本大学では地震後車で避難してきて大学に駐車し、夜は自分の車の中で過ごす人が多かったそうだ。東京では地震後大規模な渋滞が起こるので、車で都心に来て帰宅困難になる人も多数出ることが想定される。空間の限られた市ケ谷キャンパスで何ができるのか、事前のシミュレーションが必要なのではないか。
    ②帰宅困難者受入施設というのは、我々がサービスを提供し、お客様に快適に過ごしてもらうというリゾートホテルのような場所ではない。学生教職員も、受け入れた方々も、同じ災害を経験し、ともにそれを乗り切る「運命共同体」だ。大学にできる事とできない事を受け入れ時からはっきりと伝え、限られた空間・備蓄品・最長3日間という期間を提供する中で、お互いサポートしあいながら一緒に運営していくという意識が大切である。
    本日の訓練を通じ、「何かこのままでは不安だな」ということが確認できた場になったのであれば、その気づきが次のステップに繋がるものと思う。

参加者の感想

  • 初めてKUGを用いた防災訓練を行いましたが、具体的にどのような問題が発生するのか、現在の課題点などよく知ることができました。災害が発生したときに備えて、普段から色々なことを想定して準備したいと思います。
  • 焦ると判断が鈍ることが体験でき良かったです。
  • チームごとにフィードバックがもらえればもっと振り返ることができる訓練になったと思いました。
  • 役割決めや詳細の説明からかなりスピード感があり、序盤は全く対応することができませんでした。実際に災害が起きた際にはもっと緊迫した状況下で即決対応に追われることを想像すると、予めの想定や学内の把握は絶対にしておくべきだと強く感じました。
  • 学生からの提言やチームごとの振り返りには、予算や備蓄スペースの制約といった法人の視点が抜け落ちていたと思います。学生や学生センター主導で進めるとしても、途中か前段で予算や場所のやりくりの重要性を説く時間があるとより現実的な提言が出て来るのではないかと感じました。

SAの感想

  • 今回は机上のシミュレーションのため、帰宅困難者を「コマ」として扱うことができましたが、現実で目の前で向き合うのは人です。ひとたび災害が起きると、一刻を争う状況になります。効率性を重視せざるを得ず、施設にたどり着いた一人ひとりを「裁く」ように振る舞わなければいけないところに、災害の過酷さがあると感じました(経営学部3年 阿部裕紀)。
  • 大学での災害において、最も動くことができるのは私たち学生です。その学生が防災訓練に参加することで、防災力はきっと高まるはずです。(人間環境学部2年 海老澤 紗里)。
  • 参加者は学生と教職員とで異なるものの、両者ともに災害時の緊急を要した状況で求められる判断の迅速さや、次々と引きおこるイベントへの対応に困惑しており、このような実践型のシミュレーションの回数を重ねる必要性を感じました。一方で、大学設備に対する前提理解の程度や、事態をどれほど重く受け止めるかの意識の違いなどから、受け入れ人数の進行度合いや対応には、学生と教職員の間で差があることも印象的でした。被害発生時の想定としては学生と教職員はともにスタッフとして動く立場であり、速やかな対応を行うためにも、意識統一や大学の提示する方針、設備に対する周知の機会を設けるべきだと感じました(デザイン工学部4年 鴨潤矢)。
  • 恐らく参加した職員の方々の多くは、頭で分かってはいても現在自分たちが置かれている状況を理解していなかったと思われます。そこに様々な問題を突き付けることで災害当日の状況を具体的にイメージすることができ、法政大学の災害対応マニュアルが抱える問題に気付いたと考えられます。今後もこのような「気付き」を与える機会を提供し続け、発災日に誰一人と命を落とす人がいないように、今から準備をすることが求められると感じました(人間環境学部2年 楮原俊輔)。
  • 職員のみなさんと防災訓練に参加したことで、自分が被災者と帰宅困難者受入施設の運営者の両方の立場になり得ることを改めて認識しました。どれだけ万全なマニュアルを作成しても、災害時にはその想定から漏れる事態は発生すると思います。その際に迫られる一人ひとりの判断を体験できたこの機会は貴重な経験だったように感じています(デザイン工学研究科修士1年 神賀悠輝)。
  • 体育館の動線は、車で来た避難者は、靴は、トイレは…など、マニュアルだけでは見えない「現場の対応」を考えることの難しさを感じ、通り一辺倒なマニュアル対応ではなく、具体的な「人」を受け入れるイメージを持っていただければ、とても嬉しく思います(法学部3年 河井悠希)。
  • 非常時に迅速に行動できるよう、電子マニュアルなど、個々に災害時の行動をいつでも確認できる冊子を早急に用意するべきだと考えました。また、「災害時は3日間大学に滞在する」という事実を知らない学生がまだまだ多いと思います。災害時の混乱を防ぐためにも、今回のようなKUGや防災訓練を通して、学生に非常時の正しい行動を知ってもらう必要があると考えます(人間環境学部1年 田宮帆華)。
  • 迅速な対応のためには、前提として設備や周辺の状況を知る、そしてそれを踏まえた上で適切な行動を判断する必要があります。しかし、正解がないことは分かっていても、自分なりに答えを出して動いていくことは非常に難しく、勇気のいることだと感じました。KUGを体験することで災害をもっと自分事として考えられるようになるので、ぜひたくさんの人に体験してもらいたいと感じました(人間環境学部1年 米山美咲)。
  • 運営に協力いただいた8名のSAの皆さん(左から経営学部3年阿部さん、人間環境学部2年海老澤さん、理工学部4年鴨さん、人間環境学部2年楮原さん、デザイン工学研究科修士1年神賀さん、法学部3年河合さん、人間環境学部1年田宮さん、人間環境学部1年米山さん)

  • 防災倉庫見学では配布される3日分の備蓄品について説明がありました。

  • 体育館見学では実際に想定されている1人当たりの広さ(1畳分)を感じてもらいました。

  • KUGの実践①

  • KUGの実践②

  • SAの2人から大学に対する提言がありました。

  • 最後に総長から総評をいただきました。

  • 12月16日、実施報告を兼ねてファシリテイターの学生が廣瀬総長を表敬訪問しました。