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【ライサポ】ライサポが聞く!図書館インタビュー 第2回 現代福祉学部 佐藤 繭美教授(前編)

  • 2021年11月05日
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「本を通して何かが起きるかもしれない、という感覚を大学生に持ってもらいたい」
現代福祉学部 教授 佐藤 繭美(さとう まゆみ)

 「図書館をどう使ったらいいかよくわからない」と思ったことはありませんか?大学の先生はどんな風に図書館を使ってきたのか、図書館学生ボランティアのライブラリーサポーターがインタビューしてきました。第2回目は現代福祉学部の佐藤 繭美先生。ソーシャルワーク、死別ケア、自閉症児・者と家族、セルフヘルプ・グループを研究テーマにされており、「権利擁護と成年後見」等の授業を担当されています。ライブラリーサポーターの中から、佐藤ゼミに所属する現代福祉学部4年のEさんと社会学部2年のSさんが、学生時代の図書館の使い方、佐藤先生の本との付き合い方などに迫ったインタビュー前編です。

【前編】「本を通して何かが起きるかもしれない、という感覚を大学生に持ってもらいたい」
【後編】「今の2年生は大学に来ていなくって図書館にもやっぱり足を運んだことがないと知って、「え!?」ってなりました」

現代福祉学部棟にて 佐藤先生を囲んで

1.佐藤先生の学生時代の話

———E まず、最初の質問です。先生は大学生の時どういう風に図書館を使っていましたか。法政の図書館じゃなくてもいいですし、大学生の時に使われていたと思うので、何かエピソードとかどんな風に使っていたとかあれば、詳しく教えてください。

佐藤 はい。学生時代の図書館の利用というのは基本的に何かを読みふけるというよりも、どちらかというと「課題のために図書館に通う」というのが比較的多かったと思います。自分の趣味の本はブックオフや古本屋さんで買うということの方が、どちらかというと多かったです(笑)。好きな本は手元においておきたいタイプだったので、どちらかというとそういう方向にしていたと思います。
 やはり大学院生になって、私自身法政大学の大学院で過ごしてきたので、本当に図書館にお世話になりました。文献を取り寄せたりするのも、どこの大学から取り寄せたらいいのかなども、全部相談に乗ってもらいました。
 図書館の中に大学院生が過ごせるスペースが確かあったと思うのですが、私自身大学院の博士課程時代は非常勤の仕事しかしていなかったので、ほとんど大学に来て、なおかつ、図書館に一日中いたんじゃないかなと思います。もちろん研究論文を取り出したり、研究の書籍を見て眺めていることも多かったです。「眺める空間」として図書館が良かったんですね。窓の外を見ればここは緑があるので、それをぼーっと30分くらい見ていたようなときもあります。あとは、大学院生ってほとんど何をするにも論文のことを考えていたりするんです。なので、やっぱり図書館に来ると精神的に安定していたというのが、私自身の図書館に対する思い出としてあります。何か調べものとか、そういうことだけではなくって、図書館に行けば、自分がそこにいて安心をする材料を得ていたのかなという風に思います。博士課程時代、図書館に行かなかった日はないですね。それくらいずっといたかなと思います。特に地下書庫に(笑)。

———S あ、閉架の方にいらっしゃったんですか。

佐藤 そうそうそう、そうです。あの、オープンのところではなくって、地下の方にずっといました。面白いでしょ、あそこは奥にもいろいろな本があったり。全然研究の本じゃない本を読んだりとか、しまいには地図広げたりとかも…。わけわからないことをしていたので。

一同:(笑)。

———S ご自分の研究テーマではなく…。

佐藤 そう。地下の書庫って本当に色々な本があるので、なんかこう、ふらふらふらふらずっと歩いていたりだとか、そういうことをしていました。それぐらい、図書館は面白いところです。

———S 自分にとっての「癒しの場」という感じだったのでしょうか。

佐藤 癒しですね。そうです。私自身嫌なことがあると結構引きこもってしまうタイプで、人と関わらないというのが心を安定させる条件でした。外には出るけれども、あまり人と関わらないで自分のことだけを考えられる空間として、図書館が一番良かったんです。なおかつ閉架だと、より一層人が来ないので、逆に人がいてお互いに驚く、ということもあったりしましたね。

「大学生の時によく読んでいた本」について教えてください。

2.先生が学生時代に読んでいた本、そして先生にとっての「本」って…?

———E 「大学生の時によく読んでいた本」について教えてください。

佐藤 わかりました。どうしようかな…。
 もちろん大学の間に私自身が読んでいた本というのは、やはり社会問題に関する本の方が多かったです。社会問題といっても貧困の問題です。私が社会福祉の研究を始めた頃は、まだ虐待問題というのがそう大きく取り上げられている時代ではありませんでした。なので「本当に虐待かな?」っていうようなことが色々と取り沙汰されてきた時でした。でも世の中には生活保護というものを受けなければ生きられない人がいることを知ったりだとか、親から虐待をされて、今ではもう当たり前に問題として捉えられていますけれども、叩くことと躾の境目って何だろうとか、そういうのを本で知っていった、っていうのがあります。なので、そこから自分はこういうことに関わりたいんだろうなぁ、っていうのをやっぱり思い始めました。それがやっぱり人によって経済の問題に関心があったり、あるいは商品取引のことに関心があったりだとか、あとはスポーツのことに関心があったりだとか、本当に多岐にわたるので、自分が読みたい本を制限することなく「乱読」するというのは、とても大事かなという風に思っています。
その中で神谷美恵子先生という精神科の女性のお医者さんがいるんですけど、その先生はハンセン病の人たちと、ハンセン病の療養所に行って触れ合っていく、という方なんです。その方の本を読ませていただいて、「ハンセン病って何だろう」というところだとか、お医者さんがいわゆる差別のある病気の中に行かれるってすごいなっていう風に思いました。そういう思想ってどこから出てくるんだろう、その人に触れてはいなくてもその人の考え方だとか雰囲気とか空気感みたいなものって、やっぱり文字を通して知るということはありました。  自分の恩師となった久保紘章先生いう先生がいるんですけど、その先生に付くことになったのもやっぱり本を通してなんですね。その先生がすごく神谷美恵子先生に教えを受けて、ハンセン病の人たちと関わっていて。それで、その教えを受けた先生が、自閉症の人たちの親の支援をしていたので、「当事者支援ってこういうことなんだ」というのをそこから学んで、その先生の下で勉強したいと思って大学院に進んでいます。その神谷美恵子先生のことだとか、ハンセン病の課題だとか、結果的に私は本から「出会い」を得ていったのかな、という風に思うので、本は本だけではない「出会い」を作ってくれる一つのツールかな、と思います。なので、ぜひジャンルに捉われず、まずは図書館に行ってみようでもいいですし、雑誌からでもいいですし、そういうものを引き寄せてほしいです。本を手に取ることで何か出会いを引き寄せることってあると思うので、それがどういう風に繋がるかっていうのはわからないところもあるけれど、でも結果として本を通して何かが起きるかもしれない、という後ろ向きじゃない思考が生まれるような気がします。なので、そこを感覚的に大学生の方たちには持っていただきたいなという風に思っています。

 

3.先生とインタビュアー二人の本の向き合い方

佐藤 そして全然別の話なんですけど、私自身学生時代を振り返ると、まずは課題をとにかくクリアするために本を読む、っていうところから、どんどんどんどん社会問題の方に入っていった、というのがあります。でも、そもそも私自身本が好きだったんですよね。
 最近自分が親になって、「自分の本との向き合い方」を考える時期にきています。もともと私はどういう形で本を手に取っていた人間なのかなというのはよく考えます。自分の子供にどういう風に本を好きになってもらうかっていうのを考えるために振り返っているんですけど、私自身は、親から本の読み聞かせをしてもらった、という記憶は実はないんです。本の読み聞かせは、今もう当たり前のように「してください」って親になったら言われるんですけど、実は自分はそういう経験はあまりなくて、ただあまりにも絵本を読むスピードが早くて、「もっともっと」って言われるから、親がもうたくさん買えないからとにかく図書館に連れて行って、絵本のスペースの前に置いといたと言っていました。それで、幼稚園の時から借りてくるのが習慣化していったのがもともとだったんだなぁというのはかすかに覚えています。でも私は、家にたくさん本があったっていう家庭でもなくて、家にあったのって「家庭の医学」とか、ああいう辞典みたいなもので、でもそれを読みふけっていたのはすごく覚えています。病気の画像がいっぱい載っているので、カラフルで、それに字もいっぱいあるし、内容に何が書いてあるかは多分わかっていないんですよね。でもそれをずーっと読んでいたんですって。なんか親は気味悪がっていたみたいですけど(笑)。

———S 子供のころ、ですもんね(笑)。

佐藤 そう。この子は何に興味を持って見ているのかよくわからなかったって言ってましたけどね。でもそれが結局「乱読」の大元だったのかなという風に思っています。なんかこうジャンルに捉われないで色々と見るみたいな、図鑑だとか絵本だとか、料理の本だとか、色々家にあるものを手あたり次第読んでいたような感覚っていうのが思い出されてきています。こうやって「本を見る」ということはやっぱり作られていくんだなと思ったところですね。小学生になってくると、みんなでいるからみんなで本を借りるということをし始めて、小学校4年生くらいだったかな、多分学校内で一番たくさん本を読んだ人になったんですよ。それって結構大学生の中で、特にライブラリーサポーターなんかされてたりすると、図書館が好きだからそういう経験されている人もいるかな、と思うんですけど。多分、それがすごく自分にとっての自信になっていて、「読む」ということから離れなくなったのかな、という感じはしますね。本を読むということをやめることなく続けてきたというのは、やっぱりあるんだろうなって思っています。ただ、ここ5年くらいはちゃんとまともに本を読めていないので(笑)本当に、研究論文を斜め読みするくらいですけど。でも本はとにかく私の精神安定剤です。推理小説をお風呂に入って1時間読むっていうのが私の趣味なんです。だから、最初にEさんに話したもんね。推理小説の話とかね、「誰読んでいるの?」とかね。そういうのをずーっと読んで、またお風呂から出たら切り替えるっていう生活を送るっていう(笑)。

———S なんか、わかります。推理小説とかそういうので、研究とかレポート書かなきゃー、っていう気持ちから、その物語の中のトリックにどうにか…。

佐藤 そうそうそう。ね、楽しんだりとか、その空間に入っていく感じをね。自分でこう…。

———S 言い方悪いですけど、「逃げてる」…。

佐藤 そうそうそうそう!その通り。現実逃避をね、その中ではしているんですけど。でもそう、小学校高学年くらいからは、『ズッコケ三人組』とかって知ってる?

———S・E あ~、懐かしい(笑)。

佐藤 そうそう、それが、小学生の探偵3人組みたいな本なんだけど、そこら辺から私の推理小説好きは始まっていったんだな、と。その後に赤川次郎とかを読み始めて、あとはもうどんどん難しい色々な人に入っていくんだけども、その頃の王道を行ってたのかなっていう気はします。これぐらい、人生半ばくらいに差し掛かってくると、なんか自分の本の歴史みたいな、本とどう触れ合ってきたかみたいなことはすごく最近よく考えているな、という風には思っています。やっぱり小さいときに図書館に行くだとか、本屋さんに行くとかでもいいと思うんですよね。本屋さんでずっとうろうろしているというのも楽しいし、なんかそういう感覚って皆さん結構持っておられるんじゃないかなと思っています。…こんな感じでどうでしょう(笑)。お二人はどうでしたか。Eさんはどんな感じですか。小さいころから本を読む子だったんですか?

———E 読んでいましたね。うちは絵本が割といっぱいあったので、母に読み聞かせしてもらったりというのもありましたし、確かに幼稚園の頃から本屋さんで動かなかった、みたいなことを後から言われたことがあります。その後自分も先生と同じで、本屋さんというよりは図書館に途中でシフトしていきました。なぜかはわからないんですけど、図書館に行ってたりとか、小学校の帰りとかも図書館で母の帰りを待って一緒に帰るとかはしていましたね。

佐藤 へ~。Sさんも同じですか?

———S 私は逆に、家に本があまりなくて…。まず母が本をほとんど読まない人で、家族の中で突出して父だけが本を読む家庭でした。しかも読み聞かせとかもしないタイプで、私はただ父が黙々と本を読んでいるところを見ていた、っていう感じだったんです。それで、父が図書館に連れて行ってくれるのに、ちょこちょこっとついて行って、気づいたら父が図書館で読んでいるところで一緒に絵本を読んでいたりとか、子供向けの本を読んでいたりとか。『ズッコケ三人組』とかも読んでいたんですよ(笑)。

一同:(笑)

佐藤 今でもあるもんね。

———S そうなんです。だから今先生の話を聞いて「懐かしい!」って思いました。だからそういうのを父の隣でずっと読んでいた、という感じですね。読み聞かせというよりは、一緒に本を読んでいました。それから、図書館を使っていましたね。でも、Eさんに比べたらあんまり行けてなかったかもしれないですね…。小中学校になるとあんまり行くこともなくなってきちゃって。ようやく高校生とかで関わるようになって、それで大学でライブラリーサポーターに入って、もう一回図書館に行くようになったっていう感じですね。

佐藤 でもそうですよね。人生の中で図書館と濃く触れ合う時期とそうじゃない時期とかってありますよね。Eさんはコンスタントなのかもしれないですけど。

———S 中学で運動系の部活に入ったときに、そっちにシフトしちゃって、本を読む時間よりは運動する時間の方が増えました。

佐藤 そうだね。高校生くらいは確かに私もそうだったかもしれないです。運動ばっかりしてたね。でもやっぱり大学生って嫌でも本と触れる時期…。課題でもなんでも、出てきますよね。だから、そういう意味では大学生の時に再び図書館に行けるというのはとても大きなことなのかなとは思いますね。あとはやっぱり図書館の人たちが優しい。図書館ってどこに行っても親切な人が多くて、それっていつも私が思うことなんですけど、街中の図書館でも、もちろん大学の図書館でも、親切な人たちが多いなぁという風には思っています。質問したら必ず、わからなくても一緒に調べてくださったりとか、「私も本の題名すぐ忘れちゃうんで」みたいなことをよく言いながら一緒に調べたりとかしていました。それは今、子供を図書館に連れて行っても変わっていなくて、なんか図書館の方たちの調べものを「一緒に」してくださるという感覚っていうのって、ある意味社会福祉とすごく似ています。「困っている人をそこにおいておかない」みたいな感じがあって、それってやっぱりすごいなぁという風に思います。そういう意味で、先ほどの本との出会いじゃないですけど、図書館を通して「読み手が人に育てられる」というのはあるのかな、という風には思っていますね。大学院生の時は本当、「これは何なんだ」と思いながら色々と英語の文献なんかを探したこともありますし、私なんか英語苦手だったから図書館の人に助けられたこともありますね。図書館ってある意味、魅力のいっぱいあるところだと思います。図書館の方たちとお話ししたくて図書館に来られるという方も、そこまで丁寧だと多いのかなって思っています。

———E 市内の図書館の職員さんとたまたま話す機会があって、そうしたらやっぱり市民の方へ、レファレンスみたいな感じでサービスを行う、というのも最近増えている、レファレンスというサービスが確立しているので、それで住民の方が色々質問をして、なおかつ自分の本の知識を話し合う、というのを楽しみに図書館に来ている、みたいな方もいらっしゃる、というのは聞きました。

佐藤 へ~。

———E だからサービスだけど、言葉のふれあいというか、そういうものも多いなぁという風には思います。

佐藤 目当てのものがなくても、目当てに近いところでの提案があったりというのはすごいですよね。「こんな感じのものです」って言ってもなんとなく出してくれる、っていうところがあるので。でも結局それで見てみると「面白いな」っていう本だったり、自分だったら手に取らないかもしれないっていうところを出してもらえてすごいんですよね。それも運命なのかな、っていう(笑)。

 

4.3人の読書スタイル

———E 先生は読んだ本の記録とか付けたりしていますか?読んだ本を振り返っている、という話だったんですけど…。

佐藤 中身を?

———E 中身とか、自分が読んだ本とかっていうのをちゃんと記録として残しておくのか、記憶の中に残しておくだけなのか。

佐藤 私、記憶力はすごくある方「だった」ので、今はちょっと自信ないんですけど(笑)。だから本に関してメモを取る、ということはしなかったかな。ただ一時、大学院生の時はやっぱり文献をまとめた方がいい、学術的な形でまとめる、というのはやったことがあります。でも趣味としているものって読めばなんとなく頭に入るので、メモはしてない、っていう感じです。Eさんはしてるの?

———E 読んだ本とかに関してはすべてメモしています。

佐藤 え~!

———S それはすごい(笑)。

———E 小学校の頃にちょっと始めて、で、それが一回途中で終わってしまって、でも中学生の頃に復活して、大学生の今まで一応続いています。作者と、著書名とかはメモしています。

佐藤 じゃあ今まで何冊読んだとか、自分の中で把握しているってことか。

———E 空白期間がありますが、一応数を数えれば。番号を振っているわけじゃないのであれですけど…。

佐藤 データがあるわけね。

———E そうですね。 

佐藤 すごいね。驚かされるね。

———S 私も記録付ける派だったんですけど、そこまで明確にじゃないですね。文献とかは要点をまとめただけのデータがパソコンにあるんですけど。私は小説を読むのが好きで、精神安定剤というのもそうなんですけど、救われる一言を探している節があって。読んでいて自分が思っているもやもやとかをスッキリさせてくれる一言とかが、小説とかってポロッと出てくるので、それを記録して心が疲れた時に「そういえばこの本にこんなこと書いてあったな」、くらいの感覚で、なんか殴り書きみたいになってますけど、保存しているノートなんかはあります。なので、そうやって作者とか全部記入しているノートとかはないので、ちょっとびっくりしています。

佐藤 でもお二人ともされているんですね。すごい。

———S でも何もつけない本とかももちろんあります。「出てきた!」って思ったときにぱって書いて、っていう感じですね。

佐藤 なるほどね。みんな色んな読み方のスタイルがあって面白いですね。私は本当に精神安定剤だから読んでおしまい、それ以上は…っていう感じです。引きずらないじゃないけど。なるほどね。面白い。やっぱり人によってですね。でも一冊にかける時間って結構短いんですか?

———E どうですかね…。速いと1時間かからないくらいで読むことはできるんですけど、課題の本とか学術系の本とかはやっぱり時間がかかります。あとは自分が他にやらないといけないことがあったりすると、途中でその本が置き去りになったり、っていうのはあります。スイッチが入れば速いんですけど、入らないと時間がかかります。

佐藤 私は本を手に取るまでに時間がかかるので、買った本を自分が「大体座るかな」というところに積んでおくんですよ(笑)。そうすると必然的に時間があったりすると手に取るんですよね。それで、最初から見ないでバーッとこう面白そうな項目あるかなってパラパラパラっと中を見て、ここ面白そうなワードありそうだな、っていうのでちょっと読んでみるというのをしたりしています。まぁそれで自分は読書をしている感覚になっています。でもやっぱり本を見ていると色々なものが遮断されるので、まぁ都合よく私も聞いていない、というのもあるんですけど、家族の雑音からも離れられるし、なんか頭の思考を整理するのには本当に、10分20分でも読むのがいいなぁ、という風に思っています。それがだんだん自分で時間をとれるようになると30分、1時間という風に増えていきます。今、なかなか図書館に行ってゆっくり自分の本を探す、っていう時間が無くなってきていますが、なんとなく電子書籍ではなくまだ活字で読みたいな、という風には思うので、こんな感じで最近の読書スタイルにはなってきていますね。本当は、時間をじっくりかけて読みたいなっていうのはありますけど。

———E 大学院生の頃は社会問題とかっていうのに入っていって研究の本だったりとか、小さい頃はミステリーとか、いわゆる趣味みたいな本だと思うんですけど、その辺の読み方の違い、探し方の違いってありますか。分けていたりというか、違い、みたいなもので…

佐藤 そうですね。まぁ大学院生の時は比較的日中は学術論文を読むということに割いていました。午前中いっぱいかけて探して、午後にマーカーをつけながら読んでみて、それに疲れたら大学や大学院の帰りに古本屋さんによって安い推理小説を買って帰る、っていうのを結構日課にしていました。大学院生でお金もなかったし、100円とかで買えるような古本を買って、ずっとこう、一晩読みふけるっていう。睡眠時間あんまりなかったかもしれないですね。そういうルーティーンになっていました。それぐらい論文を書くことに追われていて、精神的に辛かったのかな、という風に思うんですけど。そういう使い分けはしていましたね。みんながご飯食べに行ったりお酒飲みに行ったりするようなことをあまりしないで、私は古本屋さんに行って本を買ってきて一人読みふける、っていうのをよくやっていました。そんな違いです。

 

5.読書スランプになったら   

———S 私は、個人的に気になったことがあるんですけど、いいですか。
 期末試験がなくなって全部レポートで成績を付けますよ、って今なってきていて、すごい量の色々な科目のレポート課題が出るんですね。それで色々な文献を見ていると何が何だか分からなくなってくる、ということがここ最近すごく多くて、「もう何の字も入ってこない」、という状態が起きています。私は図書館司書の資格の勉強をしているんですけど、それに関するレポートのために「図書館の自由」とかそういうのに関する文献を読んで、その次の日には企業とかの文献を読まないといけなくて、さらにその次には環境のこと、みたいな感じで本当に多種多様なものを読まないといけなくて、どんどんどんどん頭に入ってこなくなる、っていうのがあります。先生も大学院生の時とかに相当な量読まれていたかと思うんですけど、そういう時期ってやっぱりありましたか?
 

佐藤 ありました、ありました。だけど形は読んでいました(笑)。入ってこないけどなんか読んでると、1行でも「もういいかな」っていう感じにやっぱりなっちゃって、疲れてくるっていうのがもちろんありました。多分勉強している感覚…やっぱり研究って自分が好きだからやっているんだけど、なんとなくこう勉強の感覚に入ってしまっていると多分頭に入ってこない、という感じでしょうか。「いや、この本面白い」、じゃないけど「この論文面白い」ってなると多分相当入ってくるんですよ。だからそこが違うのかもね。それで私なんかも入ってこなくなるから、一回夜にミステリー小説でリセットして、次の日に向かう、ってことを繰り返していました。

———S それが先生なりのリセット方法だった、っていうことですよね。

佐藤 そうそう、そうなの。そういう意味では本当毎日のように古本屋さんに通って、一日一冊買って帰る、っていうのをやっていたと思いますね。

それぞれの読書スイッチが入る瞬間について盛り上がりました

(続く)