氏名 | 研究科・学部 | 専攻・学科 | 学年 |
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杉山 菜々 関口 祐未 |
デザイン工学部 | システムデザイン学科 | 2 |
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人の記憶は長くない。どんなに大切な相手でも最初に声を、次に顔を忘れていく。気付いたときには姿さえも思い出せない。記憶の中で、ぼやけた姿で、生きている。ただ、あなたの香りだけがずっと残っている。
主人公は、亡くなった幼馴染・橙花(とうか)との思い出の日々を夢に見た。
日付を確認すると橙花の命日である。
主人公は、橙花が亡くなってから毎年命日に、花を持って挨拶に行っている。
今年も行こうと橙花の母に連絡した。
彼女のまぶしい笑顔が脳裏に焼き付いている。
主人公はもう一度橙花に会いたいと、思い出に浸るためにヘッドホンを手に取る。
記憶の中で二人は、昔よく遊んでいた公園で楽しそうに話していた。
しかし、だんだん橙花の声が聞こえなくなっていく。
「橙花って、どんな声だったっけ。」
思い出そうとすればするほど思い出せなくなっていく。
橙花はそれに気づき、自分の目の前で顔や姿も忘れられてしまう前に走り出した。
主人公も橙花を必死に追いかけた。
橙花の声も容姿も思い出せなくなっていることに気づいた主人公は、部屋で一人苦しんでいた。
目の前にあるのは橙花との思い出の花である金木犀だった。
その時、聞こえるはずのない橙花の「もう少し覚えていて」という声が聞こえたような気がした。
主人公は恐る恐る手に取って匂いを嗅ぐと、数々の思い出が蘇ってきた。
声や姿を思い出すことが難しくなっても、香りが他の記憶をつないでいる。