2023年度第19回デジタルコンテンツ・コンテスト

静止画部門・準優秀賞 机上

2023年度第19回デジタルコンテンツ・コンテスト
氏名  研究科・学部  専攻・学科  学年 
佐野 平 デザイン工学部 建築学科 3
  • 使用ソフト
    Adobe Illustrator、Adobe Photoshop
  • 開発・制作・動作環境等
    Mac OS

作品要旨

混沌と化した現代社会に存在する机の上に、3つのキャンパスが交差する空想上の法政大学を再現した。複雑で曖昧な世界でも、一つの専門領域に捉われずに学部横断的に学びを深めることで豊かな未来を手に入れられることを表現している。

作品解説

現代社会が抱える問題に「表現」という形で対峙する。それが本コンテストの目指す場所だと考えている。
その問題を考える上で私は大学の専門特化に注目した。世界は凄まじい速度で進化している。それに伴い求められる知識や経験は多岐に渡り、私たちが対処すべき課題は極めて曖昧で複雑なものになった。
そのため、ただ単に専門特化するだけではなく、様々な専門領域を行き来しながら幅広い知識を身につけ、それらを統合しながら課題に対処していかなければならない。
しかし、日本の大学教育はどうだろうか。大学は学部という専門分野に分けられ、加えてキャンパスも複数に分けられる。よって隣接する学部との交流は制限され、自身の専門領域を超えた知識の獲得は困難になる。この状況から抜け出すためには大学と学生の両方が幅広い知識を身につけることへの重要性を理解し、実際にその機会を積極的に創出していく必要がある。
以上の重要性を伝えるためにこのイラストを制作した。先が見えずに混沌とした世界を黒い背景で表し、そんな世界の中でも学部横断的に様々な知識を身につけることで豊かな未来が訪れることを色鮮やかな色彩で描かれた三つのキャンパスで表現している。

デジタル技術の使用箇所・方法

イラストは全てIllustrator上で制作した。同ソフトには「押し出しとベベル」という簡易的な3D制作の機能が備えられている。その機能を用いてそれぞれの建物や物体の大まかな輪郭を描き、それからガイド機能を用いて細かく要素を描き加え、不要な部分を削った。立体を描画するにあたって、アイソメトリック図法を採用した。前出の機能「押し出しとベベル」では、自身が描いた断面をアイソメトリック図法の角度に合わせて立体へ変換させることができる。しかし、この機能で制作できるのはあくまでも大まかな輪郭だけであるため、細部はガイドを用いながら自身の手(ペンツールや図形ツール)で制作する必要があった。それにはアイソメトリック図法に関する正しい理解や経験が必要であったため、事前にその概念や自然に見せるための角度、表現方法を研究した。
制作には膨大な作業工程の数と複雑なレイヤー構造という二つの課題に対処する必要があった。まず限られた時間内で密度のあるイラストを制作するために、できる限り窓などの繰り返される物体はモジュール化し、複製によって繰り返し他の部分でも使用できるようにした。キャラクターや物体に関しては複製して大量に配置しても違和感がないようにリフレクトツールで角度を変えながら配置した。複雑なレイヤー構造への対処として、要素ごとにグループ化を行なって細分化させた。イラストの描画後にPhotoshopを用いてキャンバス風のテクスチャを与えて今回の作品は完成とした。

講評

大学での学びの多様さを、机上という狭い空間内で敢えて表現することによって、物理的には狭い空間にある机上に、無限の可能性を感じさせる作品となっている。デジタル技術を用いつつもシンプルな描写及び色使いによって、背景とのコントラストが際立ち、また法政大学の建物を描く事によって法政大学の学生には親近感を抱かせつつ、温かみや知性を感じさせる優れた作品に仕上がっていると評価した。