2023年度第19回デジタルコンテンツ・コンテスト

静止画部門・入選 非合理性が導く可能性

2023年度第19回デジタルコンテンツ・コンテスト
氏名  研究科・学部  専攻・学科  学年 
佐野 平 デザイン工学部 建築学科 3
  • 使用ソフト
    Adobe Illustrator、Adobe Photoshop、ibisPaint
  • 開発・制作・動作環境等
    Mac OS、iPadOS 16.6.1

作品要旨

写真から得られる情報は局所的なものに過ぎず、現地に赴くと思いも寄らない豊かな世界が広がっているかもしれない。物事の過程を省いて結果のみを求め続ける合理化された現代では、非合理性が生活を豊かにする。

作品解説

固定概念から抜け出し、新しい価値観をグラフィックで提案することを目指した。私が提案する新しい価値観は「合理化された世界に非合理性を加えることによって私たちの生活は少しだけ豊かになる」ということである。世界は合理化の一途を辿り続けている。本や文献などを参照することなく、液晶を数回叩けば即座に答えを得られるようになった。美しい景色があると聞いた時、わざわざ現地に足を運ばずとも一度スクリーンを覗けばその景色を目の当たりにすることができるようになった。合理化させるということは途中の過程を省くということである。しかし、その過程にこそ生活を豊かにするためのヒントが隠れていると思う。本や文献を使って調べれば周辺の知識の結びつきを知ることができるかもしれない。現地に足を運べば写真からは汲み取ることができなかった空気感や思いがけない出会いなどがあるかもしれない。行き過ぎた合理化はこれらの恩恵を放棄するということである。非合理的な行為を排除し続ける現代の人々に向けて、「過程を省くことなく非合理を歓迎する態度こそが生活に思いがけない豊かさをもたらす」ということを本作では表現した。

デジタル技術の使用箇所・方法

本作は「合理性と非合理性」という極めて複雑で曖昧な概念を取り扱った。自分でも『人はどこまで合理的か 上』(スティーブン・ピンカー著)、『YOUR TIME』(鈴木祐 著)といった、合理化と私生活の関係を論ずる書籍で知見を深めたが、私の頭の知識だけでこのテーマを紐解くのは困難だと考えた。そこで私はChat GPTとテーマ研究を行うことに決めた。情報のソースに注意しながら「合理・非合理の様々な事例」「合理化と世の中の相互関係」「現代人の思考パターン」といった様々な知見をAIから提供してもらい、それらを用いながら自身の主張を支える理論を構築した。AIによる客観的な視点を加えることによって私の主張はより強固で説得力のあるものになったと思う。
キャラクターや植栽などのディテールはibisPaintで描画した。実写のマンションは自身で撮影した写真をPhotoshopで切り抜いて使用したものである。レイアウトも含めてその他全ての要素はIllustrator上で作成した。制作は撮影してきた写真を切り抜く作業から始まった。まずは自動選択ツールを用いて大まかに写真の背景を抜き、そこからは鉛筆ツールと消しゴムツールを用いてピクセル単位で境界の調整を行なった。その後写真のパースに合わせてIllustrator上でガイドを引き、長方形ツールを用いて周りのビルを描画した。最後に画面に立体感を持たせるために、レンズフレアを追加して完成とした。