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株式会社radiko 代表取締役社長 青木 貴博さん

  • 2021年04月27日
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プロフィール

青木 貴博(Aoki Takahiro)さん

1970年10月東京都生まれ。法政大学第二高等学校を経て、1989年に法学部法律学科に入学。1993年に卒業後、株式会社電通に入社。ラジオ領域の業務に従事し、2011年1月、株式会社radikoの設立と同時に出向。業務推進室長を経て、2017年6月より代表取締役社長を務める。

「まだ見ぬ景色」を見るために仲間と一緒に前進を続けていく

インターネットでラジオ放送を同時配信するサービス「radiko(ラジコ)」に立ち上げ時から関わってきた青木貴博さん。会社組織は団体競技のようなもの。目的地を明確にし、そこへ行きたいという思いを共有することでシナジーが生まれると言います。

ラジオ業界の危機感がラジコを世に送り出した

2020年12月に「radiko(ラジコ)」が10周年を迎えました。電波の受信障害やインターネットの普及もあってラジオ放送を聴く人が激減し、このままではラジオ業界に未来はないという危機感から生まれたプロジェクトでした。

インターネット経由で放送を同時配信し、スマートフォンやパソコンで放送を聴けるようにする。そのこと自体には大きな将来性を感じましたが、法律上は「放送」に該当しないため、出演者、作詞作曲家、スポーツやニュースなど、全ての著作権保有者に許諾を得る必要があり、実現できるかどうかには未知数の部分もありました。

約2年かけてその大きな壁を乗り越えられたのは、ラジオには、知られていないだけで、面白い番組が山のようにあり、聴きやすい環境を提供すればリスナー(聴取者)は確実に増える、そうなれば広告価値が上がり、ラジオ局の経営も改善するという明確なストーリーが見えていたからです。交渉相手の権利保持者にはラジオで育った世代の人が多く、そのラジオを守ろうという思いが強かったことも追い風になりました。局間の競争は、業界に活気があってこそ成り立つという共通認識をベースに、新たなプラットフォームとしてラジコがスタートしたのです。

青木さんは、通勤の電車の中で毎朝、ニュース番組を聴いているという。

青木さんは、通勤の電車の中で毎朝、ニュース番組を聴いているという。

卒業後もつながりのあるゼミの先生、仲間

法政二高から法学部へ進学し、4年間の学生生活で一番思い出に残っているのが、3・4年次に所属した徳永哲男教授の商法をテーマにしたゼミです。卒業後も先生やゼミ仲間とたまに集まっていて、自分のその時点での仕事について先生の意見をうかがうこともありました(徳永教授は2018年に逝去)。

就職活動をする頃には、広告制作や販促活動などを通じ、黒子として企業をサポートする広告業界の仕事に魅力を感じていました。高校時代からバンド活動をしていたので、エンターテインメントに近い所で仕事をしたかったのかもしれません。

電通に入社後、3年間静岡支社で営業を経験し、東京に戻ってからはラジオの部署で放送局サイド、広告主サイドと両方のラジオ業務に携わりました。2020年6月までは在籍出向で、電通ではラジコも含めて足掛け24年間ラジオ業務に携わったことになります。

徳永ゼミのゼミ合宿にて。前列右から2人目が青木さん。

徳永ゼミのゼミ合宿にて。前列右から2人目が青木さん。

内外の変化のおかげで見えたたくさんの新しい景色

ラジコの参加局は、10年間で13局から民放の全99局に、利用ユーザーは1000万人近くに増えました。機能面では、現在地点と無関係に全国のラジオ局の放送を聴ける有料サービス「エリアフリー」、放送後1週間以内の放送を後から聴けるサービス「タイムフリー」が加わり、ユーザーが好きなときに好きな番組を聴ける環境が実現されています。また、東日本大震災でラジオが災害時の重要なインフラとして見直され、コロナ禍のステイホームや在宅ワークでラジオ放送を聴く人が増えた、という社会の変化もありました。

私が仕事でモチベーションにしているのは「まだ見ぬ景色を見る」ことで、ラジコの歩みを通じて予想以上にたくさんの新しい景色を目にすることができました。会社という組織は団体競技のようなもので、全体で一人ひとりの実力以上のシナジーを生むことが大切だと考えています。1人のスーパースターだけが活躍しても、その人が抜けたら何も残りませんから。

組織のリーダーとしては、目指す目的地をきちんと伝え、「みんなでそこに行こう」と思いを共有し、各自の仕事がそれに直結している意識を持てるように密にコミュニケーションを図ることを意識しています。明るく振る舞うことも大切ですね。笑顔は運を呼びますし、エネルギーを生むような気もしています。

音声メディアを包括するインターフェースを目指して

今、目指しているのは、ラジコをさらに進化させ、ラジオ番組だけでなく、音楽、オーディオブックなど音声コンテンツなら何でも聴ける「オーディオコンテンツロジスティクス」を構築することです。利用履歴から興味あるコンテンツが自動的にお知らせされ、おすすめコンテンツをSNSで拡散するインフルエンサーが登場するとなれば、理想的ですね。「まだ見ぬ景色」を一つでも多く見られるように、引き続き仲間とともにラジコを成長させていきたいと思います。

20代前半がよく聴くのは、好きなアーティストやタレントの出演する番組のようですが、世の中を知り、知識欲を高められる番組もたくさんあります。音声メディアは、朝の身支度などのすき間時間に聴け、映像がない分、想像力が豊かになり、脳の活性化につながることが証明されています。ぜひ皆さんも、自分に合う番組や聴き方を見つけてみてください。

 

(初出:広報誌『法政』2021年3月号)