お知らせ

終戦から75年

  • 2020年08月15日
お知らせ

本日、2020年8月15日は、75年目の終戦記念日です。

昨年の終戦記念日から今日までのあいだに、世界は大きな試練に向き合いました。全世界を巻き込んだ新型コロナウイルス感染症です。昨年のこの日には、まったく予想もしなかった出来事でした。ということは、来年の今頃、どんな社会に私たちは暮らしているか、わからないということです。

しかし、戦争が引き起こされる可能性については、私たちは察知することができます。自国がどのような方向に向かっているか、私たちは知ることができ、声を上げることもできるのです。国どうしの対立も、人々の考え方しだいで、なくしていくことができます。自らの内なる差別感に自覚的になり、乗り越えることも可能です。

新型コロナウイルスのもたらした状況のなかで、私たちは、できることとできないこと、すべきこととすべきでないことを、区別してきました。制御可能で回避できることはたくさんあることに、気づきました。今日終戦記念日を迎えたあの戦争は過ぎたことですが、戦争はいつもどこかで準備されています。その準備から利益を得る人々もいます。

人類がもたらした温暖化による気候変動、世界人口の爆発的増加、それらが一因となって今後も続くであろう新しいウイルスの出現に、国や人種や民族を超え、協力して立ち向かっていかねばなりません。解決をより困難にする分断や格差や不平等を、私たちはひとつひとつ乗り越えていかねばなりません。大きな戦争を起こすことがあれば、格差はさらに広がり、さらに多くの弱い立場の人々が犠牲になるのです。

「自由を生き抜く実践知」は、ひとりひとりが自由を獲得しながら生きていくための指標です。競争は、自由を奪うことがあります。対立は、自由とは正反対の状況です。この終戦記念日という機会に、自由とは何か、あらためて考えてみてください。

法政大学総長 田中優子