「居合は、心身を鍛えるための武道です。敵に斬り掛かられたという想定で、刀を瞬時に抜いて相手を制する技の『型』を習得します」と、居合について説明するのは前代表の松﨑さん。「さまざまな流派がありますが、私たちは古流居合である無双直伝英信流の先生に師事しています。稽古は学内だけでなく、同門の仲間である他大学の学生や社会人の方々と合同でも行っています」。
現在14人いる部員の多くは、大学から居合を始めた初心者ながら、剣道や弓道などの武道経験者で、新たな武道に触れたいと集まってきたといいます。その一人である西田さんは、「居合と剣道は表裏一体の関係だといわれ、その両方を経験するのがいいと推奨されています。剣道は二人で打ち合う対人競技ですが、居合は仮想敵を相手に一人で行います。厳粛な空気の中で自分自身と向き合いながら、技の習得に専念できます」と居合の魅力を語ります。
弓道から居合に転向した茅根さんは「演武で『 血振り※』を見てから、自分でもやってみたいと憧れていました。ようやく教えてもらったときに、居合ならではの味わいを感じました」と語り、「まだまだ稽古が必要ですが、初段に昇格するのが目標です」と意欲に燃えます。
居合の試合では、全日本剣道連盟(全剣連)が定めた全流派共通の技と各流派の教えに基づく技を組み合わせて披露し、3人の審判員が総合的に判定して勝敗を決します。全国各地で数多くの大会が開かれていて、関東近郊で行われる学生大会のほか、希望者は地方大会にも参加して修行の成果を試しています。2019年6月には、居合発祥の地とされる山形県で開催された「第14回全国各流居合道さくらんぼ大会」に出場した阪井さんが初段の部で優勝を飾りました。「剣道の大会では入賞経験がなかったので、勝てたことは感無量でした」と喜びを語る阪井さん。「ただ、勝ち負けよりも自分の目標を目指すことが大切だと教えられているので、その意識は忘れないようにしたいと思っています」と、おごらないように自分を律します。
松﨑さんからバトンを受け継ぎ、新たな代表となった梶原さんは、「居合道部はまだ設立5年目ですが、これまでの道筋を作ってきてくれた先輩方がいて、学外にも共に修練する仲間がいます。お互いを支え合いながら、基本に忠実に、自分を高めるという目標に向かって、進み続けたいと思っています」と意気込みを語り、これから部を率いていく責任感に身を引き締めます。
※血振り:鞘(さや)に刀を収める前に、血を払い落とすようにする所作のこと
(初出:広報誌『法政』2020年3月号)