お知らせ

卒業生インタビュー:株式会社ビックカメラ 代表取締役社長  宮嶋 宏幸さん

  • 2020年06月16日
お知らせ

プロフィール

宮嶋宏幸(Miyajima Hiroyuki)さん

1959年長野県上田市生まれ。1984年文学部英文学科卒業後に株式会社ビックカメラに入社。1993年に渋谷東口店店長に。そ
の後、取締役兼池袋本店店長、取締役営業本部長などを経て、2005年11月に代表取締役社長に就任。

努力は自分を裏切らない。 販売員の気持ちを忘れず、変化に対応していきたい

ベンチャー時代のビックカメラに新卒で入社し、2005年からは社長を務めている宮嶋宏幸さん。小売業で大切なのは「変化への対応」と言い、積極的に異業種とのコラボレーションも展開しています。

異業種とのコラボレーションで世の中の変化に対応

ビックカメラに大卒1期生として入社し、はや35年がたちました。当時はまだ2店舗でしたが、創業者の新井隆司氏(現・会長)が「これからどんどん成長する」と言ったとおり、全国45店舗、グループ全体で222店舗の大所帯となりました(2020年2月末時点)。

世の中では「家電量販店」と言われることがありますが、私たち自身は、3年に一つしか売れない商品もそろえておく「専門店の集合体」と考えています。ここ数年は、お酒や日用品などの非家電製品の割合が増え、新しい店舗ではそうした製品を1階に置いて、「家電店には入りにくい」女性や若年層にアピールするようになりました。

小売業では、他に先んじて世の中の変化に対応していくことが肝心です。話題になったファッションと家電の融合店「ビックロ」は、新規顧客の開拓に加え、その後の異業種とのパートナーシップやコラボレーションの呼び水となりました。

外国人観光客をメインターゲットとした空港内の店舗「エア・ビックカメラ」や、オンラインとオフラインの垣根を越えた利便性の高いサービスを提供するECサイト「楽天ビック」、今年2月にオープンした日本橋三越もその一例で、他社との共同作業から新しいビジネスモデルや新たなノウハウが生まれています。

広告宣伝担当として1990年に訪れた米国ラスベガスのカメラ展示会 (左が宮嶋さん)

広告宣伝担当として1990年に訪れた米国ラスベガスのカメラ展示会 (左が宮嶋さん)

数々のアルバイトで将来の職業を模索

大学時代に打ち込んだのは、アルバイトでした。漠然と「学校の先生」を思い描いて文学部英文学科に入学したこともあり、まずは塾講師や家庭教師のアルバイトをやりました。

手先が器用でのこぎりなどの大工道具が一通り使えたので、宮大工さんの手伝いをしたこともあれば︑知り合いの紹介で国会議員の秘書をしたり︑大手スーパーマーケットの家電売り場で販売員をしたりもしました︒中学校での教育実習も楽しかったのですが、次第に自分には小売業の方が向いてではと思うようになって……。

そんなとき、求人情報誌の飛び込み営業のアルバイトで、仕事の段取りから進め方までを徹底的にたたき込まれ、自分の甘さを思い知らされたんです。今思えばごく当たり前のことばかりですが、社会人として働くことへの意識が大きく変わりました。ベンチャーに興味をもったのも、入社後の超多忙な日々を乗り越えられたのも、このアルバイトのおかげです。

55・58年館の屋上で学部の友人(写真やや上の3人横に並んでいる左端が宮嶋さん)

55・58年館の屋上で学部の友人(写真やや上の3人横に並んでいる左端が宮嶋さん)

こつこつと続ければ結果は必ず出る

また、アルバイトと並行して、他大学の学生と一緒に児童養護施設で学習やレクリエーションのボランティアもしていました。ビックカメラでは児童養護施設の運営だけでなく、卒園者の自立支援を「公益財団法人ビックカメラ奨学金財団」にて手掛けていて、あらゆる場面で大学時代の経験が役立っています。

大工仕事の経験があったので、店舗の什器作りや配線も難なくこなせましたし、どんな経験も思わぬときに人生につながってくると感じています。ですから、勉強にせよ、アルバイトにせよ、無駄になることは一つもないと考えて、学生の皆さんには在学中にいろいろなことに挑んでほしいと思います。

かつてお世話になった方が、「力耕(りきこう)、吾(われ)を欺かず」という、中国の詩人・陶淵明の言葉を贈ってくださいました。大好きなこの言葉を、卒業して社会に出ていく皆さんに贈ります。この仕事をやると決めたなら、まず3年間は続けてみてください。それも真剣にこつこつと。結果はいつか必ず出てくるはずです。

社長になった今も気持ちは販売員のまま

たまたま社長となりましたが、私のベースはあくまでも家電の販売員。店長になっても、経営層になっても、生活を豊かにする商品をお客さまにご案内できるのがいちばんの喜び、やりがいであることに変わりはありません。

世の中では5年前後で交代というパターンが多い中、社長となって15年目を迎え、いつまでも私でいいのかという思いもあります。一方で、実を結ぶまでに時間がかかるものもあり、今しかできないことに、こつこつ励んでいるところです。

商品も売り方も、データで裏付けされたものが本部から各店舗へ提供されるようになり、かつてに比べて、個人の腕の見せ所は少なくなりました。とはいえ、お客さまに店舗へ足を運んでもらうためには、やはり現場の若手社員の感覚やアイデアが欠かせません。これからも、「お客さまのアドバイザーになる」というビックカメラのポリシーを、彼らと一緒に追求し、新しいことにチャレンジしていきたいと思います。

(初出:広報誌『法政』2020年3月号)